『ラブストーリーズ「コナーの涙」「エリナーの愛情」』
「コナーの涙」を先に鑑賞。コナーがエリナーを“Rigby”と呼ぶ場面があって、ジョークかと思ったら、彼女の役名でした。ということで、原題は『The disappearance of Eleanor Rigby「HIM」「HER」』。 “ひと組のカップルの別れから再生までを男と女それぞれの視点から2作品で映し出す”という演出で製作された映画。 監督、ネッド・ベンソン。 2作品に共通するシーンは必ずしも多くはない。が、その共通のシーンは2作品で微妙に台詞や立ち位置などが違っており、同じ事象に対するコナーとエリナーふたりの感じ方、記憶の違いというものが表現されているようである。 コナー、エリナーそれぞれが個別に捉えられているシーンは、別に同一の映画で表現しても良いのでは?とも思ったが、それぞれの作品が、コナー、エリナーそれぞれに絞って表現されていることで、ふたりが別れている間に、それぞれの生活におけるパートナーの存在感の有り様が、その相違が表現されている、ということだろうか。 「HIM」において表現されているコナー、「HER」で映し出されているエリナー、そのそれぞれの有り様は、作品を分けなくても表現しうると思うのだが、「HIM」における不在者エリナー、「HER」における不在者コナーがそれぞれコナー、エリナーの生活に占める有り様が表現されている、という感じでしょうか。 手法的には、かつて観た「カンバセーションズ」の方が、インパクトがありましたけれど…。 物語としては、そもそもの“生後間もない子供の死”が示される前に、その後のふたりのすれ違いが唐突に展開されてゆくので、しばらく混乱してしまいました。どういう狙いなのだろうか。予告編でそのあたりも少し触れられているので、そういうことなのかなあ…、と中途半端に理解し始めてしまうわけなのだが…。 エリナー・リグビーを演じるジェシカ・チャステイン。髪をバッサリと切り、化粧も全く変えるので、すっかりイメージが変わりますね。母親役は、イザベル・ユペール。いつもワイングラスを片手にし、半ば意識がここにあらずのような不思議な存在を、当たり前っぽくさらりと演じています。父親役、この俳優さん誰だったかなぁと思いながら観てましたが、ウィリアム・ハートでした。ジャンクフードばかり食べている、友人のような不思議な立ち位置の教授にヴィオラ・デイヴィス。この3人が、とても印象的です。 ということで、後から観たせいか「エリナーの愛情」の方が強く印象に残っている…。 “All the lonely people,where do they all come from?”、そしてエリナーの部屋に貼られている「男と女」のポスターと言い、何か監督の思い入れなのでしょうか。