『私の知らないわたしの素顔』
クレール(ジュリエット・ピノシュ)自身の語る話もさることながら、彼女を看るカトリーヌ・ポーマン医師(ニコール・ガルシア)の反応が読み切れなくて、目が離せなかった。 クレールの話を受け止める、その、やや冷徹に感じる雰囲気から、カトリーヌは、アレックス(フランソワ・シビル)の関係者なのか?と思いながら観ていたのだけれど…。 何が、カトリーヌをしてリュド(ギヨーム・グイ)を訪れさせたのだろうか。医師としては、ちょっと一線を越えているようにも思えるのだが、それだけ深くクレールに寄り添うだけの、クレールに潜む心の渇きをカトリーヌも自らの裡に見出してしまったということなのだろうか。 SNSによって、全く別の自分も、全く新たなつながりも可能性が生まれている今日、ふとした躓きで深く深くそこに絡め取られてしまう、そんな深淵もまた、私たちの目の前にある。 新たな物語の可能性を求めて、再びクララの携帯で電話をかけるクレール。闇は深い。 邦題は、ちょっとピンと来なかったのだけれど、少しずつ滲みてくる気もしてきた。 原題は「Celle que vous croyez」