『山中静夫氏の尊厳死』
治療困難な肺がんの宣告を受けた入り婿の山中静夫氏が、最期はふるさとの山の見える病院で死にたいと、静岡から佐久の病院へとやって来る。 迎えたのは、長いこと人の死を見過ぎて精神的に疲弊している今井医師。患者には丁寧に接しながらも、家に帰れば脱力しきってしまう。 とはいえ、息子に対する姿勢は、妻には物足りなくても、息子にはちょうどいいような…。 最期にあたって、楽に死なせてもらいたいと希望する山中氏。苦しみは取り除いてもらいたいと。 そして、昼間は病院を抜け出し、実家の墓地に、自らの墓をつくる。名字を書かずに、「静夫の墓」とのみ書き入れて。 山中氏を見送った今井医師は、ついに鬱で仕事を休むこととなる。 妻に誘われて出かけた郷里への墓参。行き先を変更し、山中氏の墓を訪ねた今井は、どこに希望の光を見出したのだろうか。 にしても、津田寛治の痩せこけた頬は、確かに体調が心配になる頬である。