一期一会(トルコ中部エルジンジャン編)
それは母と一緒に参加したツアーでの出来事でした。バスでトルコのエルズルムという街からシヴァスに向かう途中、ガイドブックには多分詳しくは載っていない、エルジンジャンという町(いや、村?)のホテルに泊まりました。周辺には3階建て以上の建物はなく、ホテルだけが妙に新しく、ゴージャスでした(プールもバーもあるけど泊まっているのは我々のツアーの参加者だけ…)。晩ご飯までだいぶ時間があったので、周辺を散策することにしました。別に名所があるわけでもなく、近くに見えたモスクを目指して母と2人でタラタラ歩いていくと、平屋の小さな家々が並んでいる通りにさしかかりました。明らかに異邦人の私たちを見つけ、周囲の家から何人か人が出てきました。多分、東洋人など近くで見たことがないのでしょう…微妙な距離を保ちながら「わー外人だ~」という感じで私たちは見られておりました。と、若い女性が自宅の庭のライラックの枝を折って、ちょっとモジモジしつつ私に寄って来ました。枝にはお花がびっしりついていて、いい香りがポワ~ッとします。枝を差し出され、思わずもらってしまいました。「いい匂いだねぇ~」と母と言っていると、その若い女性のご両親と思しき人たちが身振りで「一緒に写真撮ろう」というので、持っていたカメラで撮ると全員が笑顔になりました。「ありがとう~」「○△□~(トルコ語)」とりあえずニコニコしているから満足なのは分かります。すると今度は向かい側の家のご主人がジェスチャーで「うちにおいでよ」。彼の隣に立っていた奥さんがすぐに「嫌よアナタ、うちの中ひっくり返ってるのに」。「まぁいいじゃないか、お茶を出すくらい」…全部想像ですが、多分こんなやり取りだったと思います。母も私もこのご夫婦の様子を見て、これは大丈夫な人たちだなと直感しました。そこへ12歳くらいの少年が間に入ってきて、「僕、英語分かるよ。」おおー、救世主登場~かなり安心して玄関を入ろうとしたら「あっ、靴脱いでね」。なんと、日本みたいな習慣でびっくり。トルコ絨毯が敷かれた応接間に通され、キャンディーとトルココーヒーをふるまわれました。トルココーヒーはあちこちの喫茶店やホテルでも飲みましたが、ここのお宅で飲んだのが一番おいしかったです(やっぱりホテルの物より”おウチのもの”はおいしいなぁ)。家のご主人、奥さん、子供たち、なぜかお隣さんの女性とその子供たちがいて、入りきれなかった近所の子供たちが玄関付近に5・6人いました。通訳少年のおかげでこの家の家族構成とか、我々のツアーの話などをすることができ、最後には一緒に写真を撮って日本から送るよと約束し、『お宅訪問』を終えました。通訳少年の将来の夢はホテルのフロントで働くこと。「世界中の人たちを迎えて、いろんな国の話を聞きたいんだ。だから、頑張って英語を勉強しなきゃね。」日本じゃこんな生き生きした表情の子供、見ないなぁ…それで少年に、お礼に日本製のペンを渡そうとしたのですが「当たり前の事をしただけだから」と受け取ってくれず、名前も名乗らないまま彼は笑顔で手を振って走り去ってしまいました。せ、せめてお名前を~ …奥ゆかしいです。昔の日本人みたいです。胸がじんとしました。キミならきっと立派なホテルマンになれるよ、と思ってしまいましたね。写真は書いてもらった住所宛に送りましたが、返事はないままです。無事に着いているといいのですが…。郵便事情があまり良くない上に、度々強い地震が発生する地域なので心配です…。