○三億円強奪事件に関する国会質問



そんなにいぢめないでよ!

「絶対に居眠りしてはいけない国会質問」

(※注・中高年の方は読むと急速に老眼が進行する恐れがありますのでご注意ください)

第075回国会 法務委員会 第14号 昭和50年6月24日(火)午前10時5分開会

(三億円強奪事件に関する件)



○委員長(多田省吾君) 速記を再開してください。

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○橋本敦君 警察庁の方にお伺いいたしますが、例の有名な三億円事件でございますね、
あれが時効がもうすぐだということで国民も大変関心を持っておりますが、時効はいつで
切れるということになっておりますか。



○説明員(森永正比古君) 本件三億円強奪事件は、事件発生から七年を経過致しました。
本年十二月十日午前零時をもって公訴時効が完成するということになっております。
したがいまして、残すところ約半年弱ということになっておるわけでございます。


○橋本敦君 この事件については警察庁としてもずいぶん捜査に尽力をされてきたと
思いますが、どういう体制で現在捜査を続けておられるのか、これが第一点です。

 それから犯人が現場もしくはその後の捜査によって判明をし遺留をした、犯人が犯行に使用した物件として、
どれとどれがいま確実に証拠資料として収集されているのか、この点についてお伺いしたいと思います。



○説明員(森永正比古君) 第一点の捜査体制でございますが、事件発生以来、府中警察署に特別捜査本部を
設置いたしました。最盛時で百九十七名の捜査本部員を編成いたし、昭和五十年六月二十三日現在で延べ
十六万百六十四名の捜査員を投入しておるわけでございます。現在は捜査員を縮小いたしまして、大体中核に
なる捜査員は三十名ということになっております。

 それから主な遺留品の捜査についてでございますが、現在遺留されておる主な物といたしまして、
第一に白バイ擬装のオートバイでございます。それから犯人が使用したであろうと考えられております
緑色のトヨタカローラ四十一年型でございます。それから犯行時に使用いたしました発煙筒、それから雑誌
「電波科学」七月号、それから犯行に使用しましたトラメガ、それからハンチング、レインコート、主なものとして
以上のようなものでございます。


○橋本敦君 例の困難な爆弾事件の捜査も大変だったわけですが、それに比べますと、具体的に犯人が遺留した
物証というのはかなり明確なものがあるわけです。したがって、いまおっしゃったオートバイ一つとってみても、それが
どこの製品で、どこで買い入れたものであるかというような捜査にしろ、あるいはカローラの登録所有者名あるいは
販売者名、そういったことは当然捜査として全力を挙げておやりになったと思うのですが、そういった捜査から
犯人の手がかりが何一つ得られないという現在の捜査の盲点、最大の盲点は一体どこにあるのでしょうか。



○説明員(森永正比古君) 物の捜査でまずネックになりましたのは、主な遺留物件がほとんど盗品であったという事です。

まず第一の白バイ擬装のオートバイにつきましては、昭和四十三年十一月九日に日野市の会社員宅で盗難に遭ったもの、
これを改造して使用したものでございます。そこで捜査が中断されたわけでございます。それからカローラ、発煙筒等に
ついてはさらに捜査を継続してやっております。しかしながら、これによって犯人にはまだ到達するに至ってないわけで
ございます。ちょっとつけ加えて申し上げますと、先ほどのトヨタカローラにつきましては、捜査の結果、昭和四十三年
十一月三十日、日野市内の車庫から盗まれたものでございまして、これについてもその段階で捜査が中断されて
おるわけでございます。それから第二番目に、捜査の対象となる容疑者、これがかなり広範多数に上っております。

それについて黒白の捜査を進めておるわけでございますが、現在までのところ、まだはっきりした容疑を出すには至って
おりません。

○橋本敦君 まず第一に、容疑者が多数かんだということですが、これは名誉がありますから一々名前は伺いませんが、
ほぼ何名ぐらいの容疑者を対象として現在まで捜査を遂げてきたのか、容疑者の人数だけで結構です。数とおっしゃった
その人数ですね、これが第一点。

 それから二つ目に、現場もしくはそれらの物件に遺留された指紋の有無は当然捜査をされたと思いますが、
そういう指紋関係の捜査の結果どうなっているか、これが第三点の問いです。まずこの二つ明確にしてください。


○説明員(森永正比古君) 捜査対象になった者は、これは容疑者ということではっきりしてない者まで含めておるわけ
でございますが、約十一万人ほどでございます。しかし一応容疑が濃厚になりまして、参考人として取り調べました者
が三十二名、強制捜査をいたした者が一名、こういうことでございます。

 それから遺留指紋につきましては、犯行当時発見された指紋多数ございましたけれども、これをさらにしぼっていきまして、
一応照合可能な指紋も数個残ったわけでございます。これを警察庁のみならず全国的にこれを照合いたしましたけれども、
現在までのところ容疑者が発見されておりません。まだ不鮮明な指紋が残っておりまして、さらにそれの照合を急いでおる
ところでございます。

○橋本敦君 いま参考人三十二名、強制捜査一名、これは問題になった強制捜査ですが、その三十二名の参考人の中に、
指紋照合との関係で容疑を考えられた者はありますか、ありませんか。


○説明員(森永正比古君) 現在までのところ、指紋によって取り調べをしたという報告は聞いておりません。

○橋本敦君 もう一つ伺いますが、捜査の基本方向として、この犯行は単独犯という認定のもとに捜査を遂げられておるのか、
それとも共犯者が何名かいるという、いわゆる共同犯行という関係で事実を見ておられるか、その点はいかがですか。


○説明員(森永正比古君) 私ども捜査関係者の中でもかなり意見が分かれております。単独犯行説、共犯説があるわけで
ございます。現在のところまだどちらにしぼるという段階まで至っておりませんので、両面で捜査をしておるというような状況で
ございます。

○橋本敦君 犯行の手段方法を考えますと、現場に指紋を遺留しないように手袋をはめるというようなことは当然やっている。
それから犯行の用に供した物件がいずれも盗品を使っているということ、そういう点と、それからさらに現場での手口が、まさに
警察官であることをまるまる信用させることに習熟している観があると見られる問題、こういった問題を考えますと、かなりこれは
計画的、巧妙な犯罪だというのは一致した意見ですね。

このように計画的巧妙な犯行ということになりますと、これは普通の者ではなかなかできない、着想からしても、準備からしても、
態様からしても。 という面から、どのような種類の人間がこういう犯行をする可能性があるかという面から、いまおっしゃった
十一万という膨大な容疑者の中から犯行の態様、手段を考えて、あるいは特定の職業に重点を置いて捜査をするとか、あるいは
特定の前歴のある人に重点を置いて捜査を進めるとか、こういった観点からの捜査も私は当然あり得たと思うのです。
そういった観点についてはどう考えておられますか。


○説明員(森永正比古君) これは現在まだ捜査中の事件でございますので、その点具体的な
説明については、説明を差し控えさせていただきたいと思います。御了承願いたいと思います。
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○橋本敦君 大体そういう検討はしていますか、私が言ったようなことは。

○説明員(森永正比古君) ただいま御指摘のような点についての検討は十分にいたしてやっております。

○橋本敦君 三億円という現金が強奪をされたわけですが、この現金がたとえば紙幣については
番号その他でどういう紙幣が強奪をされたかということは、これははっきりわかっておりますか。


○説明員(森永正比古君) 紙幣の中で五百円札だけは番号が控えてありますけれども、
それ以外については明確ではございません。

○橋本敦君 その五百円札は何枚ありますか、番号がわかっている五百円札。

○説明員(森永正比古君) ちょっと資料が手元にございませんので……。

○橋本敦君 いまわかりますね。

○説明員(森永正比古君) いまわかりません。

○橋本敦君 わからない――。その紙幣が使用されて出回っているかどうかということも、
これはもう当然慎重な捜査の対象でしょう。その観点で聞いているんですよ。その点の捜査、どうなんですか。


○説明員(森永正比古君) もちろん御指摘のように、一応特定されておる紙幣についての捜査、手配というものは
十分にやっておるわけでございます。

○橋本敦君 どういう手配を実際やっておられますか。私は、こういうことなんです。五百円札は番号がわかっている。そうすると、
これを公表する。この紙幣を見た人あるいは受け取った人はすぐ通報してほしいということをしなければ、五百円札が何枚あるかまだ
答えがないですけれども、モンタージュ写真なら出しますけれども、この紙幣でも公表して、この紙幣が出回っておるかどうかという
広域捜査をやらないと、三十人の捜査官が一生懸命やっています、こうあなたがおっしゃっても、国民の協力を得られないとこれはもう
物にならぬのじゃないでしょうか、あと半年で。そういう手段についてお考えになっておられませんか。いかがですか。


○説明員(森永正比古君) 現在五百円札についての手配につきましては、警察部内はもちろんでございますが、銀行関係、それから
マスコミに対しても一応その番号等については発表して協力を得ているわけでございます。さらに時効も間近でございますので、これを
広範にやるかどうか十分検討いたしまして、効果のある手配をいたしたいということでございます。

○橋本敦君 爆弾事件でも、使用されたと見られるかの絵をかいて街に張って、国民の協力を得ていますね。だから、いま私が言った
ように五百円札も、マスコミだとか銀行だとかいう範囲じゃなくして、広範に国民に協力を求めるということで、いまからでも遅くない、
おやりになるという方針を伺っていいですか。


○説明員(森永正比古君) もちろんこの三億円事件につきましては、爆弾事件に次いで国民の関心の強い事件でございます。私どもと
いたしましても警察の力を結集いたしまして何としても検挙しなければならない、こういうふうに考えておるわけでございまして、そのため
には先生御指摘のように国民の協力を十分得なければこの目的を達することができないというふうに考えておるわけでございます。

その点につきましては、先ほども申し上げましたように、もう一回現在のやり方でいいかどうか十分に検討して、たとえこれが検挙できな
かったという場合であっても、警察はやるべきことはすべてやったというところまで徹底した捜査をやってまいりたい。できれば検挙をいた
しまして、警察の責務を果たしまして、国民の期待にこたえたい、こういうふうに考えておるわけでございます。

○橋本敦君 きょうのあなたの御答弁を伺っていますと一生懸命おやりになっているという
ふうに私はこう聞いておるのですけれども、何かもう一つ歯切れがよくないんですよね。
発炎筒ほか三十人の捜査官を置かれまして、あと半年である。いまのあなたの話でも、たとえ検挙が
できなくてもという言葉も出るんですね、警察がやるべきことを尽くしたという状態にしたいと。

 これは不可能なこともありますよ。だけれども、やはり残された期間全力を挙げてやるという方針には変わりないわけですから、私がここでもう一つ提起をしたいのは、捜査の密行性ということがありますので、これは考えていただく範囲で結構ですが、現在までの捜査の基本方針<と中間総括、これをやって、これを公表し、かつ国民に、残された期間捜査に協力を得られる
問題については積極的に協力を得る、こういう姿勢で現在の時点における捜査の盲点と、それから現状と、それからいま私が言った協力を得られる問題と、こういう問題をきちっと総括をして、そうしてできるものを公表し、国民の協力を得るようにする、これを早くやらなければならぬのではないか、こういう観点できょう質問をしておるのです。そういう私のいま申し上げたような
方向で、総括を行い、国民に協力を得られる問題について積極的に協力を得ることを打ち出す、
近いうちにそれをやるというようなお考えはあるかどうか伺わせてください。


○説明員(森永正比古君) 私どもといたしましては、何としてもこの事件を解決したいというふうに考えておるわけでございますので、
そのためのあらゆる手段方法を講じなければならないというふうに考えておるわけでございます。したがいまして、その一環といたしまして、
十分にこれまでの捜査経過等について検討をいたしまして、まだやるべきことにつきましては十分にこれをやる。その中には、もちろん国民の
協力を得るためにまだやるべきことがあるかどうか、これも当然考えていかなければならないというふうに考えておるわけでございます。

○橋本敦君 私の質問は、それを考えて近く公式に発表される用意があるかどうかと聞いているのです、質問の最後はね。

○説明員(森永正比古君) これは検討の結果につきまして、必要があるということであれば当然やらなければならないと考えております。

○橋本敦君 私が言うのは、何もかも公表せいとは言っていませんよ、捜査ということを知っていますからね、お互いに。少なくともけじめを
つけて、あと半年ですから、総括を行い、国民に協力を得られるものについては協力を求める、こういうことを公式に警察庁として捜査会議の
結果、発表してやるというような気組みでおやりになるかどうか、こう聞いているんですよ。そういう意思はあるのですか、ないのですかという
ことです。


○説明員(森永正比古君) ただいまの問題につきましては、ここで私一存ではっきり回答することもできませんので、先生の御指摘の
趣旨は十分に上司にも報告をいたしまして、その方向で進められるように私も微力ながら尽力したい、このように考えております。

○橋本敦君 いまあなたがおっしゃったように、カローラにしろ、オートバイにしろ、五百円札のナンバーにしろ、そしてまた現在検討中の
指紋の問題にしろ、犯人に迫っていく手がかりというものは、客観的に見ればかなりあるというように国民は見るわけですよね。

それにもかかわらずどうなっているのかと、こういうことなんです。もうすぐ時効ではないか。いま私が言った観点で、一生懸命捜査を
遂げられる努力は多としますけれども、はっきりした形で国民の前に協力を得るものは得るという形で発表され、進められるということを
工夫されるということを希望して、きょうの質問はこの程度で終わっておきます。御苦労さんでした。


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