はじまり気がついたらソレはそこにいた。普段は息を潜めているくせに、何かの拍子に襲ってくる。 その正体不明の何かに、私は”ガタガタ”と言う呼び名をつけた。 ソレが襲ってくると、私の体は意味もなく震えはじめ、 うまくしゃべる事も出来なくなり、頭の中はまっしろで、 手のひらには嫌な汗をかき、勝手に涙がボロボロと出る。 喉には何か、正体不明の塊が居座って、息がつまるような錯覚に囚われる。 最初のうち、緊張やストレスの末に現れたガタガタ。 時間が経つにつれ、ソレは脈絡なく襲ってくるようになった。 私はガタガタに負けた。支配されつつあった。 車の運転も怖くなりはじめ、会社で突然泣きそうになったりし始め、 これはもう、自分だけで治せるものではないと自覚した。 私を襲うガタガタは、ネットで調べると、パニックディスオーダーの症状に似ていた。 色々調べた結果、自分にはプロの手が必要かもしれないと思うようになった。 悩んだ。パートナーに迷惑をかける。自分の子にも迷惑をかける。 もしも、パートナーの友人達に、私がこんなだとバレてしまったら? 悩んで、泣いて、その合間にもガタガタは当然やってきて、 自分の実家とトラブルになり、 唯一最後の味方であると思っていた母に裏切られ、罵られた時、私の何かが壊れた。 それでも、パートナーは私を見捨てなかった。 とある土曜日、私はパートナーにお願いして、メンタルクリニックへ連れていってもらった。 ひとりで門をくぐる度胸はなかった。 |