2013/04/14(日)13:37
教育~
≪卓上四季≫
「ええ、風評被害で困っています」。人ごとのようなことばに、温厚なこの人も怒りを
抑えられなかったという。教育評論家の尾木直樹さん。最近は「尾木ママ」としてテレビ
でおなじみだ。
大津市の中学校で起きた生徒のいじめ自殺事件の第3者調査委員会のメンバーでもあった。
先日、ある会合で裏話を聞かせてもらったが、あらためて思うのは教育現場の荒廃だ。
調査のため初めて学校を訪れた時のこと。校長をねぎらおうと「今どんなことで悩んで
いますか」と尋ねたところ、返って来たのが冒頭のせりふだ。同市の次期教育長を
うかがう実力者だと後で聞かされ、もう一度驚いた。
いじめと自殺との関係をを認めようとしない学校に対する生徒の不信感は、すぐに分かった。尾木さんが帰ろうとすると大勢の生徒が取り囲み「ママ、隠蔽されないで」
「学校にだまされちゃだめだよ」と口々に訴えてきた。
小泉政権以降の教育改革が事態をわるくしたと、尾木さんはみる。成果主義に基づく
学校評価制度の導入で、目の前でいじめが起きても学校は知らぬふりをする方向に
流れる。教員が多忙になり、生徒と向き合う時間が十分取れなくなってもいる。
苛め対策として道徳の教科化が検討されている。尾木さんは「ほとんど意味がない」
と批判的だ。教育は政治家のおもちゃではない。的外れの愚策では子供達が迷惑する。
2013.4.14. 道新より