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人生は10段変速の自転車みたいなもの

2016/10/28
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カテゴリ:読書
お気に入りの話の一つです。文藝春秋に発表(1986年4月)されてから、もう30年も経ちます。「パン屋再襲撃」は1989年に文庫の短編集として発行され、タイトル名を含めた6編の短編が収められました。これらの短編は、その後の長編に繋がるものもあり、どれも面白い内容です。今回は代表作「パン屋再襲撃」の紹介です。

奇抜というか訳のわからない設定で進行する話ですが、読むたびに違った印象と発見のある不思議な作品です。


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いつも通りバレバレのあらすじから。

深夜、突如空腹感に襲われた主人公と新婚二カ月の妻。主人公は学生時代、空腹から相棒とパン屋を襲撃したことを思いだして話す。襲撃されたパン屋の主人は、最初は盗まれたら呪ってやるという。その後、へんてこな提案をする。一緒に音楽のLPを聴けば、パンをいくらでも持っていって良いという条件を出す。主人公と相棒はLPを聴きパンを手に入れた。しかし、これは襲撃=強奪にはあたらず、パン屋の提案を受け、本質的には襲撃を果たしていないということなのでしょう。

主人公は今でも突如襲われる空腹感は、自分にかけられた呪いが原因であると考えており、この特殊な飢餓を以下のように説明している。

(1)僕は小さなボートに乗って静かな洋上に浮かんでいる。
(2)下を見下ろすと、水の中に海底火山の頂上が見える。
(3)海面とその頂上のあいだにはそれほどの距離はないように見えるが、しかし正確なところはわからない。
(4)何故なら水が透明すぎて距離感がつかめないからだ。


何か透明感のある綺麗な光景が目に浮かびますが、たぶん海底火山はやり遂げていない襲撃のために、いつ爆発するか分からない飢餓状態を象徴しているのでしょう。

妻は呪いを払拭するためには、またパン屋を襲撃することが必要だと断言する。実際は、夜中に開いているパン屋などないので、深夜のマクドナルドを散弾銃を持ち、目出し帽をかぶって襲撃する。二人はビックマック30個を強奪して、まんまと逃走する。間違いなく妻主導の出来事ですが、なぜ妻が散弾銃や目出し帽を持っていたのかは、これまた奇抜な面白い設定である。

逃走した二人は適当なビルの駐車場で、心ゆくまでビックマックを食べる。主人公に「ほんとにこれが必要だったのか?」と聞かれて、妻は「もちろんよ」と答えた。そして、妻は主人公の肩にもたれて眠ってしまう。

主人公はボートから身を乗り出して、海の底をのぞきこんでみたが、そこにはもう海底火山の姿は見えなかった。

ここで話は終わるので、このあとマクドナルドが通報して二人が捕まってしまうのか、そのまま何事も無かったかのように、この晩の出来事が葬り去られるのかは分かりません。しかし、結果として襲撃を果たしたことで、呪いが失せて海底火山が見えなくなったのでしょうね。と単純な私は思いました。

この話の最初の方で「つまり世の中には正しい結果をもたらす正しくない選択もあるし、正しくない結果をもたらす正しい選択もあるということだ・・・」という台詞が出てくる。これは、正しい結果をもたらす正しくない選択だったのかも^^)

この話はこれで一件落着のように見えますが、また別な海底火山が出現することでしょう。人生なんて、パン屋を襲撃しないまでも、常に一つや二つの海底火山を抱えているような気がします。

(注)青字は原文からの抜粋


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Last updated  2016/10/28 07:42:17 PM
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