「海賊とよばれた男」(上・下) --- 百田尚樹著
出光興産の創業者、出光佐三さんをモデルとした百田尚樹さんの小説。というより伝記と呼んだ方がよいでしょう。小説の中では出光興産が国岡商店、出光佐三が国岡鐵造として話が展開される。とてつもなくスケールの大きなビジネスストーリーです。タイムカードも解雇も定年もない、社員と店主が一体となった家族のような会社。社員を信頼し、それにこたえて一人ひとりが一騎当千の働きをする会社。国岡鐵造の広い心と信念と並外れたカリスマ性がこんな会社を実現させました。数名の機械油を売る国岡商店が始まりでした。石油が日本の将来を担うと確信して昼夜を問わず働き続けます。しかし、前途には常に障害が待ち受けており、たたみ掛かる困難に挫折しては乗越えながら進む話に息つく暇もありませんでした。【送料無料】海賊とよばれた男(上) [ 百田尚樹 ]価格:1,680円(税込、送料込)【送料無料】海賊とよばれた男(下) [ 百田尚樹 ]価格:1,680円(税込、送料込)<ネタバレ感想>国内の小さな製油会社からはじまり、GHQ、融通のきかない政府組織と官僚、そして世界の石油メジャー「セブン・シスターズ(七人の魔女) 」を相手に一歩も引かず信念を貫き満身創痍で前進する姿からは勇気とは何かを教えられます。一方で官僚や地方銀行、大手銀行、大手保険会社、アメリカのメジャーバンクにも国岡鐵造を理解し、損得抜きで手を差し伸べてくれる大物がいたことにも感動。最大の山場は、国岡商店有する日章丸のイラン/アバダン到着。当時イランの石油国有化に猛反発するイギリスの国営会社アングロ・イラニアンの脅威に何処の国もイランの石油を買えない状況にあった。イランも石油収入がなくなり疲弊していた。そんな状況の中、国岡商店は一切秘密裏に当時世界最大級のタンカー日章丸でイランに向かい、イギリス艦隊をかわして日本に石油を持ち帰る。イラン国民の大歓迎。そしてこの快挙に世界中が狂喜したことは言うまでもありません。新田船長とそのクルーの肝の据わり方も最高です。そのほか、1957年に操業を開始した徳山製油所建設の話も圧巻でした。アメリカ大手のプラントメーカに2年の工期でも無理だと断言された製油所を10ヶ月で完成させた。このプラントメーカはもとより何十もの下請業者とも国岡商店が一体となり、しゃにむに建設を進めて10ヶ月で完成した。国岡商店の情熱が伝わり成し遂げた奇跡でした。米プラントメーカで指揮を取ったポッター技師長が完成を見て、人生で初めて体が震えるほどの感動を覚えたと言った。全てがこのような話しで埋め尽くされている素晴らしい一冊です。出光興産については皇居を一望する出光美術館をもつ、純国産の石油会社くらいの知識しか持ち合わせていませんでした。この本を通して戦後の歴史、石油業界の成り立ちを新たに認識することができました。このような企業は現代の世界標準とは相反する管理体制にあるものの、日本人の心のどこかに国岡鐵造の精神や国岡商店従業員の気概や団結心が残っているような気がします。 上のボタンをクリックしていただけると嬉しい