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人生は10段変速の自転車みたいなもの

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読書

2017/08/18
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カテゴリ:読書
何年ぶりかで死神の千葉くんの登場。前作の「死神の精度」は6人の人生に関わる6編の短編集。この作品は私の中では伊坂幸太郎のベスト3に入る作品です。

死神の千葉くんは前作と全く同じキャラクターで、今回は一つの話で完結する長編です。短編には短編の。長編には長編の面白さがあり、じっくりとした展開の中に伏線が。。。しかしながら最後まで結末が読めず、唖然とさせられるのは、いつものように伊坂幸太郎の独壇場です。


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ここからは<<ネタバレ>>です。

死神の千葉くんの仕事は、人間の世界へ調査員として派遣され、対象となる人物と接触して7日間の調査を行い、死ぬことを「可」とするか「見送り」とするかを報告するという役割。死神の調査員はいたる所にいて、人間が不慮の事故で死ぬのは全て死神の判断による。

他の死神が適当に「可」の判断をするのに対し、千葉くんは生真面目な性格で、対象者に思い入れをすることは全くないが、7日間付き添い可否を判断する。まあ。彼の場合も結果としては殆ど「可」となるのですが。

今回の対象者はサイコパスの本城という男に最愛の娘(小学生)を殺された小説家の山野辺。しかし、本城は裁判で証拠不十分のため無罪判決となる。

山野辺夫妻は周到に本城への復讐を計画する。しかし、冷静沈着で狡猾なサイコパスの本城は逆に彼らを陥れようと画策する。

この状況だけからは、どちらに転んでも救いのないドロドロした暗い話ですが、山野辺夫妻と行動を共にする死神の千葉くんのキャラクターのお陰でさほど暗くもならず、危機を脱しながら話は進みます。

死神は特異な身体能力を持ち、死ぬことも無いので千葉くんはもう何百年も調査員をやっている。その割には、人間の言葉や習性への理解は心もとないのです。

山野辺夫妻は、真顔で見てきたように参勤交代の話をする千葉くんに(実際見てきたことを話しているのだけれど)、呆れを通り越して失笑し、緊張感を和まされる。

そして、山野辺夫妻は何度も本城の手口にはまり、千葉くんに助けられる。ただし、千葉くん自身に助けようという意思があったわけではなく、たまたま死神の特異な能力が都合よく働いたということですが。。。

しかし、終盤で山道を車で逃走する本城を、ママチャリの後ろに山野辺を載せて、息も切らせず脚こぎで追いつき、さすがの悪人本城もあわてて崖から湖に転落してしまう。。。これまでの死神シリーズには無かった、千葉くんが派手に超能力を発揮した部分です。

一方、本城にも別な死神調査員が付いている。そして、この時期、死神本部からへんてこなキャンペーンが出ていた。20年保証の「可キャンペーン」。要するに、死ぬことを「可」とするも、20年の延命後に死ぬというもの。

実はこのキャンペーンが驚愕の意味を持つことになる。本城は怪我の痛みと窒息の苦しみを抱えたまま20年間、転落した湖底で身動きできないまま放置されることになる。

考えようによっては、本城は最悪の憎たらしいサイコパスではあるものの、何とも残酷な結末で。。。ちょっとやり過ぎか。という感じでした。

やはり前作の「死神の精度」が、短編ながら傑作で面白かったかな(^^)


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Last updated  2017/08/18 08:14:43 PM
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2016/11/05
カテゴリ:読書
短編集「パン屋再襲撃」にも収められている一編です。有名な短編なのでご存知の方も多いと思いますが、私の好きな短編「象の消滅」の紹介です。

ミステリアスな不思議な話といえばそうなのですが、話は地味に淡々と進みます。そして、村上春樹作品によくある、ミステリーの謎は解けないまま終わります。

何だ。山場もなければ結末もない!などと文句を言う人もいそうですが、読了後に何かほのぼのとした気持になるのは私だけではないと思います。


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いつも通り、ネタバレのあらすじからです。

町の郊外にあった動物園が経営難で閉鎖された。引取手のない老象は、小学校の体育館を象舎と改築して、町有財産として飼うことになった。動物園で象の世話をしていた飼育係の老人も象舎の隣に住むことになった。

ある日、象と飼育係の老人が忽然と消えてしまう。脱走したという形跡はなく、まさに消滅したのである。象の足にはめられていた鉄輪は鍵をかけられたまま残されていた。鍵は町が管理し飼育係は鍵を持っていなかった。そして、一つしかない入口は、内側から鍵で閉ざされたままだった。さらに、象舎から出るための、柔らかい砂地の道には、象の足跡らしきものはひとつとして残されていなかった。

東京郊外の住宅地近辺の山だから直ぐに見つかると思われていたが、自衛隊、警察、消防が山狩りをして、ヘリコプターまで出動するが見つからない。一週間もすると新聞や週刊誌の記事も少なくなり、何か月かすると人々は彼らの町がかつて一頭の象を所有していたことなんてすっかり忘れ去ってしまったように見える。

実は、主人公(男性、31歳、独身、サラリーマン)は消滅した象を最後に目撃していた。主人公は事件の前から象が好きで、象をよく観察していた。消滅した夜も象舎の裏山に登り、中の見える通気口から象と飼育係を見ていた。その時、象が明らかに小さく縮んでいるように見えた。そして、老象はいつものように嬉しそうに体を洗ってもらい、その晩はいつもより早めに電気が消された。したがって、それ以降のことは分からない。

この話の中で、主人公は家電品の宣伝部に勤めていて、便宜的という言葉が頻繁に出てくる。便宜的な世界。便宜的な本質。。。僕が便宜的になろうとすればするほど、製品は飛ぶように売れ---などと出てくる。

便宜的を辞書で調べると「ものごとを間に合わせに一時しのぎにするさま」とあります。年老いた象を、年老いた飼育係が心を通じ合いながら面倒を見ることと、対極にある言葉ですね。

年老いた象も年老いた飼育係も、この町には便宜的には不要なわけですから、私は幸せな消滅だったと思うのでした^^)


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Last updated  2016/11/05 09:47:38 PM
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2016/10/28
カテゴリ:読書
お気に入りの話の一つです。文藝春秋に発表(1986年4月)されてから、もう30年も経ちます。「パン屋再襲撃」は1989年に文庫の短編集として発行され、タイトル名を含めた6編の短編が収められました。これらの短編は、その後の長編に繋がるものもあり、どれも面白い内容です。今回は代表作「パン屋再襲撃」の紹介です。

奇抜というか訳のわからない設定で進行する話ですが、読むたびに違った印象と発見のある不思議な作品です。


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パン屋再襲撃新装版 [ 村上春樹 ]
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いつも通りバレバレのあらすじから。

深夜、突如空腹感に襲われた主人公と新婚二カ月の妻。主人公は学生時代、空腹から相棒とパン屋を襲撃したことを思いだして話す。襲撃されたパン屋の主人は、最初は盗まれたら呪ってやるという。その後、へんてこな提案をする。一緒に音楽のLPを聴けば、パンをいくらでも持っていって良いという条件を出す。主人公と相棒はLPを聴きパンを手に入れた。しかし、これは襲撃=強奪にはあたらず、パン屋の提案を受け、本質的には襲撃を果たしていないということなのでしょう。

主人公は今でも突如襲われる空腹感は、自分にかけられた呪いが原因であると考えており、この特殊な飢餓を以下のように説明している。

(1)僕は小さなボートに乗って静かな洋上に浮かんでいる。
(2)下を見下ろすと、水の中に海底火山の頂上が見える。
(3)海面とその頂上のあいだにはそれほどの距離はないように見えるが、しかし正確なところはわからない。
(4)何故なら水が透明すぎて距離感がつかめないからだ。


何か透明感のある綺麗な光景が目に浮かびますが、たぶん海底火山はやり遂げていない襲撃のために、いつ爆発するか分からない飢餓状態を象徴しているのでしょう。

妻は呪いを払拭するためには、またパン屋を襲撃することが必要だと断言する。実際は、夜中に開いているパン屋などないので、深夜のマクドナルドを散弾銃を持ち、目出し帽をかぶって襲撃する。二人はビックマック30個を強奪して、まんまと逃走する。間違いなく妻主導の出来事ですが、なぜ妻が散弾銃や目出し帽を持っていたのかは、これまた奇抜な面白い設定である。

逃走した二人は適当なビルの駐車場で、心ゆくまでビックマックを食べる。主人公に「ほんとにこれが必要だったのか?」と聞かれて、妻は「もちろんよ」と答えた。そして、妻は主人公の肩にもたれて眠ってしまう。

主人公はボートから身を乗り出して、海の底をのぞきこんでみたが、そこにはもう海底火山の姿は見えなかった。

ここで話は終わるので、このあとマクドナルドが通報して二人が捕まってしまうのか、そのまま何事も無かったかのように、この晩の出来事が葬り去られるのかは分かりません。しかし、結果として襲撃を果たしたことで、呪いが失せて海底火山が見えなくなったのでしょうね。と単純な私は思いました。

この話の最初の方で「つまり世の中には正しい結果をもたらす正しくない選択もあるし、正しくない結果をもたらす正しい選択もあるということだ・・・」という台詞が出てくる。これは、正しい結果をもたらす正しくない選択だったのかも^^)

この話はこれで一件落着のように見えますが、また別な海底火山が出現することでしょう。人生なんて、パン屋を襲撃しないまでも、常に一つや二つの海底火山を抱えているような気がします。

(注)青字は原文からの抜粋


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Last updated  2016/10/28 07:42:17 PM
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2016/10/06
カテゴリ:読書
伊坂幸太郎の短編集です。短編集でありながら全体で一つの話という彼一流の構成。私の好きな死神シリーズ(短編集)と同じように、それぞれの話が同じ登場人物で有機的に繋がりながら、全体で一つのテーマやメッセージを伝えています。
もちろん、受取手(読者)によってもメッセージの捉え方は異なるでしょう。

ここでは私の感じたことを、例によってネタバレバレで自分勝手に紹介します。


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終末のフール [ 伊坂幸太郎 ]
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8年後に地球に小惑星が衝突し、世界が滅亡するという設定。本当にそんなことになったらどうなるかは分かりませんが、作品の中では報道直後に世界中がパニックとなり、自殺、略奪、殺人が横行して、警察もまともに機能しなくなった。
本作品は報道から5年が経ち、当初のパニックもどうにかおさまり、一時的にでも平穏を取り戻した世界が舞台です。場所は仙台北部の団地「ヒルズタウン」。登場人物は主にここの住民たちで、それぞれに何処にでもありそうな問題を抱えながらも、小惑星問題が起こるまでは平和に暮らしていた中流の人々です。

この話では、「アルマゲドン」のブルースウィルスのように小惑星の軌道を変える英雄も出てこないし、地球からの脱出といったSF的な計画もありません。三年後の衝突を様々な人々が様々な思いで受容れて生活してゆく姿が8編の短編に淡々と描かれています。

やはり、何といっても設定が面白いです。残された時間が限られているだけに、普段なら漫然と後送りにしてしまうことを決断するような、前向きな感じのする話ばかりです。

いくつか気に入った話を紹介します。伊坂幸太郎独特のセリフが楽しめます。
青字の部分は作品からの抜粋です。

【終末のフール】
これは表題になっている作品で、プロローグ的に状況説明の役割もしています。主人公はどこかにいそうな成績至上主義の父親。妻や子供たちに何かにつけて「馬鹿」というのが口癖。兄妹の長女は勉強ができるが長男は勉強が苦手で父親から「失敗作」と言われる。長女は「お父さんは兄貴のすごさがわからない馬鹿だ」と言って家を飛び出す。長男はそのあと自殺。。。

その長女が10年ぶりに帰ってきた。翌朝長女は帰り掛けに、「お父さん、お母さんに謝ったほうがいいよ」「今までずっと馬鹿にしてたんだから」「三年後、世界が終わっちゃう時、お父さんの隣にいてくれるのはほぼ間違いなく、お母さんだよ」「お父さん、せいぜい頑張って」「まだ三年もあるんだし」
父親には「三年間も」という言葉は、心強かった。


残り三年という状況が、家族の絆を修復したのですね。


【太陽のシール】
ずっと子供が出来なかったのに、今頃になって妻が妊娠した。あと三年で世界が滅亡するのに産むべきなのかと二人は悩む。
主人公である夫は自他ともに認める決断力のなさ。彼の母は「優柔不断の決定戦があったら、あんた、絶対一番だね。わが子ながら呆れるよ」とよく言っていた。
そんな主人公が決断した。
「小惑星は落ちてこないかもしれない。そうだろう?大丈夫だよ」「もし仮に、三年しか一緒にいられなくても、生まれてくる子は幸せだ」

この話には、主人公のサッカー仲間が出てくる。彼には先天性の病気を持つ息子がいる。そして彼の言った言葉も重いのです。
「生きている間は、どんなことがあっても、面倒を見る覚悟はできてるんだ。でもな、死んじまったら、難しいだろ」「たださ」「小惑星が降ってきて、あと三年で終わるんだ。みんな一緒だ。そうだろ?そりゃ、怖いぜ。でも、俺達の不安は消えた。俺たちはたぶん、リキと一緒に死ぬだろ。っつうかさ、みんな一緒だろ。そう思ったら、すげえ楽になったんだ」

生きているうちは精一杯生きる。死ぬときゃ一緒だ。どちらの話も、子を思う自然な親心ですね。


【鋼鉄のウール】
まじめでストイックなキックボクシングのチャンピオン苗場と、饒舌さが売りの派手な映画俳優との対談の場面。
「苗場君ってさ、明日死ぬって言われたらどうする?」と俳優が質問すると、
「変わりませんよ」と苗場はそっけなく答える。
さらに苗場は続けて「明日死ぬとしたら、生き方が変わるんですか?」「あなたの今の生き方は、どれくらい生きるつもりの生き方なんですか?」

なんともクールで格好いいですね。思わず自分の生き方を考えてしまいました!


【深海のボール】
この作品のエピローグです。主人公は殆どの話に絡んでいるビデオショップの店長。妻と小さな娘のほかに、小惑星事件がもとで同居することになった父親の4人暮らし。
この父親は団地の屋上に櫓を作って三年後の終末を見届けようと考えている。父親はお前たちの席も準備しようかと提案するが、いつも「遠慮しとくよ」と断る。
ある時、家族皆で屋上に出て櫓に登ってみる。主人公は父親の提案に同意して「そうしてもらおうかな」と答える。父親は嬉しそうに「腕が鳴る」という。

この話はエピローグにふさわしく、三年後にほぼ決定的に終末を迎えるにも関わらず、強く生きる。何が何でも生き続けるとのメッセージが様々な場面で出てきます。

「生きられる限り、みっともなくてもいいから生き続けるのが、我が家の方針だ」「死に物狂いで生きるのは、権利じゃなくて、義務だ」
 ---前出のサッカー仲間。

「出てくるな、こっちは大丈夫だ」「頑張って、とにかく、生きろ」
 ---暴漢に襲われて死亡した元警官の父親が、最後に息子(ビデオショップの客)に掛けた言葉。

「生き残るっていうのはさ、あんな風に理路整然とさ、『選ぶ』とか、『選ばれる条件』とか、そういうんじゃなくて、もっと必死なもののような気がするんだ」「じたばたして、足掻いて、もがいて。生き残るのってそういうのだよ、きっとさ」
 ---選ばれし者を乗せる「箱舟」集会に出た主人公の妻が、胡散臭い集会を否定していった言葉。

ただ単に作品を楽しめたというより、何となくの日常を送っている私は、はたと困ってしまいました。『生きるって何だろう』^^)?


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Last updated  2016/10/06 07:15:39 PM
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2016/08/18
カテゴリ:読書
伊坂幸太郎の短編集で、表題作の「フィッシュストーリー」のほか「動物園のエンジン」「サクリファイス」「ポテチ」の全4作が入っています。
短編だけに、いつも以上に軽快なテンポで話が進行し、いつも通り最後に見事に収束する結末が待っています。伊坂ファンなら、何人かのお馴染の登場人物と出会うでしょう。もちろん、登場人物を予め知っていても、いなくても同じようにストーリーを楽しめます^^)


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フィッシュストーリー [ 伊坂幸太郎 ]
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個人的には、表題作の「フィッシュストーリー」と「ポテチ」が面白かったですね。
ここからは、いつもながらのネタバレです!!
これから読もうと思う方はここまでで。。。

4作の中では「フィッシュストーリー」の展開が凝っていて、途中まで全く見当もつきません。何しろ時代も登場人物も異なるストーリーが最後になって繋がる、伊坂幸太郎独壇場の展開ですから。
解散した売れないロックバンドの最後のCDが発端となり、世界を救うという話。このCDには曲の途中に1分間の無音部分があり、この無音部分が鍵となり話が進みます。久しぶりに、忘れかけていた正義感が呼び起こされた清々しい作品です。出来過ぎといえば出来すぎなお話ですが好きですね。この話。

「ポテチ」は普通にいい作品です。優しい空き巣の主人公は成人してから、自分は病院で取り違えられた子供であることを突き止める。「母ちゃん、本当だったら、もっと優秀な息子を持てたのかもしれないのに」と気遣うところが泣けますね。最後にプロ野球の観戦に行って、決定機で代打で登場した選手がホームランを打つ。彼こそが取り違えの...
読者の多くがピンときたように、「重力ピエロ」の主題と重なるものを感じました。親子の絆は血の繋がりだけでは語れないことを。


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Last updated  2016/08/18 02:12:48 PM
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2016/07/28
カテゴリ:読書
米原万里さん没後、今年で10年が経ちます。
ロシア語通訳の第一人者であり、エッセイスト、ノンフィクション作家であった米原万里さんは、本当にスケールの大きな真の国際人でした。
「嘘つきアーニャの真っ赤な真実」は私の一番好きな米原さんの作品です。

米原さんの父親は日本共産党の幹部であり、1960年から1964年まで国際共産主義運動に関する雑誌の編集委員として、チェコのプラハに家族と共に赴任しました。この間、米原さんがプラハのソビエト学校で過ごしたのは日本の学年で小学校4年生から中学校2年生までの多感な時期で、そこには50ヶ国以上の共産党関係者の子供たちが通っていました。

この本はノンフィクションであり、プラハのソビエト学校時代に仲の良かった3人の個性的な友人に、30年の時を隔てて会いに行くというドラマチックな3話で構成されています。

それは、平和な時代の平和な国での同窓会的再会とは大きく意味合いの違うものでした。米原さん帰国後の30年間には、プラハの春と呼ばれるチェコ動乱、ソビエト連邦の崩壊、コソボ紛争など旧ユーゴスラビアの内戦などがあり、3人の友人たちのいる東欧諸国は大きな変革とともにダメージを負った時期でした。





3人の友人の話は以下の3つの表題になっています。
・リッツァの夢見た青空
・嘘つきアーニャの真っ赤な真実
・白い都のヤスミンカ

題名に出てくる青、赤、白はロシア国旗の色をもじったのでしょう。この本のタイトルはインパクトのある「嘘つきアーニャの真っ赤な真実」となっていますが、個人的には「リッツァ」「ヤスミンカ」「アーニャ」の順に感動し、面白いと思いました。

リッツァは感性が豊かなギリシャ人で、父親はパルチザン出身の亡命者。まだ見たことがない祖国ギリシャの真っ青な空を誇らしげに語るリッツァ。勉強が嫌いでおませなリッツァの意外な30年後の姿。当然ギリシャに帰っていると思っていたリッツァとドイツで再開した米原さん。リッツァのような友人は生涯の宝物でしょうね。本当の強さと優しさを教えられたような気がします。

呼吸をするようにいつも他愛のない嘘をつくが、優しく誰からも愛されるルーマニア人のアーニャ。父親がチャウシェスク政権の幹部であり、共産主義と祖国への思い入れが特に強かった。しかし、実際の生活はルーマニア民衆の貧しい生活とはかけ離れた豪華な生活をしており、その矛盾に気が付く素振りさえないアーニャ。30年後に再会したアーニャは、父親の特権でイギリス留学、そしてイギリス人と結婚していた。簡単に祖国を捨てたアーニャはおぼつかなくなったロシア語の替わりに、流暢な英語でイギリス社会のアッパー・ミドルの生活を楽しんでいた。彼女の生涯の中に内在する矛盾。最後までどこまでが本心なのかを推し量れない心の持ち主でした。

アーニャとは対極にあるのがユーゴスラビア人のヤスミンカ。成績優秀で芸術的感性にも優れ、非のうちどころがない孤高の少女。ソビエト学校時代に米原さんが一度訪ねたヤスミンカの家族は、皆人がよく温かい家族でした。しかし、その後の30年はユーゴスラビアは内戦の真っ只中。読みながら本当に会えるのだろうか?それ以前に無事なのだろうか?とハラハラする展開でした。

平和な日本でこれまで過ごしたお陰で、あまり真剣に考えたことのない国家という意識。国家を意識しないですむ世の中を平和と呼ぶのか、国家を意識しない人を平和ボケと呼ぶのかは分かりませんが、本書の中で対極にある以下の言葉が心に残りました。

ヤスミンカ:
「国家としてではなくて、たくさんの友人、知人、隣人がいるでしょう。その人たちと一緒に築いている日常があるでしょう。国を捨てようと思うたびに、それを捨てられないと思うの」

アーニャ:
「ルーマニアの人々の惨状に心が痛まないの?」と聞く米原さん。アーニャは「それは、痛むに決まっているじゃないの。アフリカにもアジアにも南米にももっとひどいところはたくさんあるわ」と答える。
さらに米原さんが「でも、ルーマニアはあなたが育った国でしょう」と言うと「そういう狭い民族主義が、世界を不幸にするもとなのよ」と誠実そのものという風情で言ってのけた。


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Last updated  2016/07/28 06:39:08 PM
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2016/06/13
カテゴリ:読書
この本の紹介で、「ロシアとロシア人は退屈しない」と断言する米原万里さんのエッセイだけに、ちょっと読み進めるとこれまで画一的な認識しか持たなかったロシアとロシア人に親近感さえわいてきました。

米原万里さんは、著名なロシア語の同時通訳者であり、ゴルバチョフ、エリツィンなど旧ソ連・ロシアの大物政治家たちが訪日した時の通訳を務め、彼女にアテンドされた政治家たちは皆彼女を信頼し、気に入って最高の賛辞を残しました。

米原さんは残念ながら56歳の若さで亡くなられましたので、この本の背景は彼女が通訳として活躍されていた1980年後半の旧ソビエト連邦の話が主体で、現在のプーチン登場以前の話です。


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ベルリンの壁崩壊と時を同じくして旧ソ連邦が崩壊し、ロシアと統治下であった周辺の民族共和国に分裂しました。民営化になったロシア国営企業の国際競争力は全くなく、ロシア経済は暗黒の時代に入ります。

前置きが長くなりましたが、こうした時代背景を踏まえると、度々照会されるロシア人のシニカルなジョークや小話が一層輝きます。国が違うとこれ程までにメンタリティーが違うものかと驚く半面、ロシア人に愛着を覚えました。

それにしてもロシア人のウォッカ好き(正式にはウォトカと発音するらしい)にまつわる話には事欠かず、思わず大笑いです。

例えば、中性子爆弾の説明が分かり易く以下の小話の中に紹介されています。

【本書から抜粋】
二人の飲み仲間の会話・・・
「おまえ、最近世間を騒がせてる中性子爆弾てのを知ってるかい? 原子爆弾とどう違うのかね」 
「ああ、早い話、原子爆弾ってのは、ここにたとえば落ちてきたとすると、オレもおまえもウォトカもお陀仏ってことだな。ところが、中性子爆弾が、ここに落ちたとすると、オレとおまえはお陀仏だけど、ウォトカの方は無傷のまま残るってことだ」   
「そうかあ。するってえと、おまえとオレがこうして無事なのに、ここにウォトカがないってことは、どんな爆弾を落とされたのかねえ」 


こんな話が山ほど出てきます。きっと楽しめると思います。
但し、現在のロシアはこの本の背景と比べるとずっと進んでいると思います。しかし、この本で愛すべきロシア人の気質を垣間見たような気がします。


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Last updated  2016/06/26 04:36:57 PM
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2016/01/10
カテゴリ:読書
伊坂幸太郎のデビュー作。なるほど、ここから伊坂幸太郎の世界が始まったのだなと思える作品です。最後にきて全てが明らかになり、悪人はきれいさっぱり始末される。最近の作品に比べると、勧善懲悪的な要素が特に明瞭な気がします。

ファンタジックなミステリーというか、ミステリックなファンタジーです。頁数の割には、さらっと読み進められるハッピーエンドなストーリーです。


オーデュボンの祈り [ 伊坂幸太郎 ]

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《ネタバレ》
主人公の伊藤は28歳のコンピューターエンジニアだった。いたって、常識的で性格も良く、恋人もいた青年である。しかし、仕事で目に疲労がたまり、毎日ディスプレイを見ることにも飽きて辞職する。ところが、さしたる理由もなくコンビニ強盗を働き、気がつくと150年以上も外界と交流のない、荻島という島にいる。

ノックの音で目を覚ました主人公は、8畳ほどのワンルームに居て、扉を開けると日比野という同世代の若者が島を案内するという。わけも分からずに、案内されて島を歩き、島の人々を紹介される。島はのどかな自然と田園地帯が続き、点在する家と何軒かの店がある。電気はあるが電柱もなく、一切広告や看板もない。そして、この島には「大切なものが最初から欠けている」という言い伝えがある。

紹介される人々は皆個性的で、ここの常識も今までいた世界とは少々違っている。船で下界とのつながりを持つ轟という男。主人公は轟に助けられて、連れてこられた。そのほか、嘘しか言わない画家。島で唯一殺人を認められているクールな男など。
そして、未来を予見できる案山子の優午。人と会話ができるが、未来は語らない。この話は優午のファンタジーといってもよいでしょう。

主人公が島に来た翌日、案山子の優午はバラバラにされ頭が持ち去られる。この真相を巡って話が展開される。

一方、主人公のいた元の世界(とは言っても船で行き来ができ、この島が孤立しているだけなのだが)では、主人公に逃げられた警察官が後を追っている。この警官は主人公の同級生で、人を苦しめることが趣味であり、主人公の元恋人に危害を加えようとする。とにかく、最悪なタイプの男である。

未来を予見できる案山子が、なぜ自分の殺害阻止をできなかったか。悪徳警官と元恋人の運命は。この島に欠けている大切なものとは。

実に面白い結末が待っています。


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Last updated  2016/06/28 07:42:28 PM
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2016/01/03
カテゴリ:読書
誰でも騙されるストーリー!!!
現在と2年前の話が交互に出てくる構成。だんだんに2つの話がつながって最後の結末を迎える。読みやすく分かりやすい展開なのに、最後にきて唖然としながら、全ての疑問が解消するという緻密なストーリー。楽しめました。

アヒルと鴨のコインロッカー

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著者:伊坂幸太郎
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《あらすじ---ネタバレ》
現在の話の主人公は、大学へ入学してアパートへ引っ越してきた椎名という学生。引っ越して最初に会ったのは隣に住む河崎。突然「一緒に本屋を襲わないか」と持ち掛けられる。隣の隣に外国人が住んでいて恋人を失って以来、引きこもっているらしい。彼に広辞苑をプレゼントするためだという。椎名は躊躇するものの一緒に本屋を襲うことになる。襲撃は成功したが河崎は「広辞苑」と間違えて「広辞林」を盗んできた。
広辞苑一冊を盗むために本屋を襲うことは、誰が考えてもあり得ない話ですが、やはりそこには特別な目的が。。。しかし、裏口の見張役であった椎名も読者も、中で起こった出来事を知るのはずっと後になる。

2年前の話の主人公は、琴美というペットショップの店員。ドルジというブータン人の恋人と同棲している。2年前、その辺りでは犬猫を残酷は方法で殺すペット殺しが横行していた。二人はペットショップから居なくなった柴犬を探していた時に、偶然男女三人のペット殺しに遭遇。その後、琴美はペット殺しに付け狙われて襲われるが、ドルジの機転で河崎に助けられる。気の強い琴美は、犯人たちが深夜のファミレスにいるのを突き止め、警察に通報する。しかし、琴美は裏口から逃げ出した犯人の車に轢かれて死んでしまう。犯人たちの二人は琴美をはねた後にトラックにぶつかり死亡。犯人の一人が生き残る。

実は河崎はドルジの日本語の教師であり、琴美の元彼であった。したがって、現在と2年前の接点は河崎であり、引きこもりの外国人はドルジであるように思われるのだが。。。

タイトルの「アヒルと鴨のコインロッカー」の意味するものは以下の通り。
ドルジが椎名に「俺に言わせれば、椎名だってブータン人に見える。俺がアヒルなら、椎名は鴨。それくらいしか違いはない」と言う。椎名は「アヒルと鴨はかなり違うと思う」と答える。アヒルと鴨をほとんど同じと考えるか、違うと考えるか。。。日本人は違うと考えるのでしょう。ダイバーシティーの問題も含んでいるのかもしれませんね。
話の中で、ボブ・ディランの歌がある役割を果たします。そして、ディランは神様の象徴。最後の方でドルジは、椎名に「神様を閉じ込めに行かないか?」と言って、ボブ・ディランをかけたままのCDプレーヤーを駅のコインロッカーに入れて鍵を閉める。以前、琴美が「神様を閉じ込めておけば、悪いことをしてもばれない」と冗談半分に言っていた。ここで題名の意味が分かるのです。

《感想》
結末を明かすのは止めておきます。でも最後にきて「エッ~!」と叫ぶのは、僕だけではないと思います。最後の数十頁でいきなり話がひっくり返されたような気がしますが、それまでのストーリーの中に、しっかり幾つかの伏線があります。何故「広辞苑」と「広辞林」を間違えたか。何故、椎名の買ったばかりの教科書がなくなったか。隣の隣はどこか。などなど。

いつもの事ながら話の中で、何人かが死にます。残念ながら良い人も。そんな話の中でも前向きな言葉がありました。ドルジの言う「死んでも、生まれ変わるだけ」。これは意外と前向きな言葉に思えます。それから、麗子というペットショップ店長の言った「助けられるものは助けたい」という言葉、そして実践。他人のことにあまり関心を持たない美人が言うからインパクトがあるのかも。。。人はいちいち全ての人の力にはなれないものの、善意を感じる前向きな言葉だと思いました。


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Last updated  2016/06/28 07:46:18 PM
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2015/02/24
カテゴリ:読書
先日、屋根裏で見つけた筒井康隆の代表作『アフリカの爆弾』に収載されてる短編の一つです。筒井康隆といえば、テンポの良い風刺性の強いドタバタが殆どですが、昔の作品を今読んでも古さを感じません。この作品「ヒストレスヴィラからの脱出」は何故か印象深く題名まではっきり覚えていました。読み直してみると単なる大笑いだけではなく、結構深い意味合いも感じました。

何でも教訓めいて受取るのは歳のせいかも^^);




<あらすじ>
事業に失敗し、恋人に逃げられ、金は落とすわ犬に噛まれるわで、人生に絶望した主人公が一人になりたくて旅に出ることにした。行き先は地球の人間が誰一人行ったことのないような銀河系のはずれの星。

この星のヒストレスヴィラという村から、けもの道を掻き分け小さな川の岸でテントを張り孤独を楽しんでいた。一ヶ月程したある日、村の郵便屋が地球の友人からの手紙を持ってきた。

それによると、預けておいた株券が暴騰して大儲けし、一緒に買った仲間で新しい事業を始めたので代表取締役になって欲しいとのこと。恋人がよりを戻して欲しいと言ってること。落とした金が出てきたことなど、全てが好転しているではありませんか!

少し里心がついたところに朗報を受けて即座に地球に戻ろうとしますが、ここからが真骨頂のドタバタの始まり。荷物を纏めてヒストレスヴィラの駅まで戻って来ますが、宇宙船の出るテンクマ行きの汽車の切符を買おうとしたら切符は三年前に売り切れている。何しろのんびりした星なんです。

切符は印刷屋に頼んであるから取りに行ってくれと言われ、行ってみればデザインが決まっていないとか、輪転機が壊れて修理するには二、三日は掛かるとかで手に入りそうにない。そうかと思えば、来るはずの汽車は運転手が弁当を忘れて引き返したのでいつ来るか分からない。

もう汽車はあきらめて「金はいくらでも出す」と言いながら、印刷屋の裏庭で雨ざらしになっている車の修理をたのむ。ところが夜のうちに訳の分からない虫の大群にタイヤを食われてしまう。予想通り予備のタイヤはない。
他の乗り物はないかと聞くと手作りの飛行機があるという。これも試運転でバラバラになり前半分だけが飛んでいってしまった。

もう絶対帰れないような気がして聞いてみれば、「他の連中も、みんな他所から来た連中だな。たしか、この村にやって来た奴で、出て行った者はひとりもいないよ」との返事。

絶望のあまり、わっと泣き出して泣き続けていると、かすかに汽笛の音が聞こえてくる。駅に駆けつけ、「切符は乗ってから買うよ」と言って飛び乗った。「ああ、そうしてくれ」と駅員はほっとしたようだった。汽車は出発し、駅員がものうげに白い旗を振った。

泣くほどのことはなかったなと、恥ずかしさと安堵と喜びで、げらげら笑い出した。疲労と安堵から窓枠に顔をのせて居眠りをした。どれほど眠ったのかよくわからない。

やがて汽車は徐行を始めた。どこかの駅が近づいてきた。どこかで見たような駅だな・・・俺は愕然とした。あの駅員が、ものうげに白い旗を振っていた。

<感想>
筒井康隆の作品の中で好きな話の一つです。数少ない村人たちは皆のんびりしていて、穏やかで親切な異星人。その一人が主人公にこんなことを言う場面があります。

「どうせ誰だって、いつのまにか不本意ながら自分自身で作ってしまった環境から脱出しようとして、脱出できないままにどうどうめぐりをやっているんだ・・・」

なるほど、私も泣いたり笑ったりしながら、私のヒストレスヴィラから脱出出来ないでいるのかもしれない。


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