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テーマ:私の図書(49)
カテゴリ:本
若き日本の肖像 寺島実郎 2000年
ー1900年、欧州への旅ー 一世紀前、植民地主義と戦争が猛威を振るうことになる20世紀を志士たちがどのように迎えたのか、欧州との関係で紐解とき、21世紀、新世紀を迎える日本の心構えを説いたもの。100年以上前の志士たちの気迫、緊張、気負い、迷い等の息吹を教えてくれ、妙に力が湧いてきます。 秋山真之、益田孝、渋沢栄一、夏目漱石、西園寺公望、川上音二郎、南方熊楠、青山光子、明石元二郎、広瀬武夫、小村寿太郎、森鴎外等の輝かしい功績の裏にあった彼らの気迫、気概、苦悩、思考を覗き見させてもらった気がする。 その相手である欧州については、パリ、ロンドン、ウィーン、ローマ、マドリード、ハーグ、サンクト・ペテルブルグ、ベルリンを舞台に、ピカソ、マルクス、ニコライ二世、ケインズ、ムッソリーニ、ヒトラー、フランコ、フロイド、ドラッカー等を通じて、帝政、共和制、資本主義、共産主義、ファシズム、社会主義、軍国主義、利己主義、人種差別、カトリックがなんたるかを解き明かしてくれる。 そして、我々の迎えた新世紀について、欧州の社民主義、ステークホルダー資本主義と、米国の株主資本主義を対比し、それらの未来とも対峙する日本の心構えを説いている。 数々のエピソードが紹介されまして、眠っていた気持ちが鼓舞されました。また、漱石がロンドン留学中、苦悩の内に冷静に暗澹たる面持で、日本の開花と世界の未来をみていたことがよくわかりました。 1900年 鏡子への手紙 パリの繁華と堕落は驚くべきものなり 1902年 本邦電 夏目狂せり 1902年 義父中根重一宛 カールマルクスの所論の如きは、 単に純粋の理屈としても欠点有えべくとは存候へども、 今日の世界にこの説の出づるは当然の事と存候。 ただ己のみを考ふる数多の人間に萬金を与へ候とも、 ただ財産の不均衡より国歩の艱難を生ずる虞あるのみと存候。 欧州今日文明の失敗は明かに貧富の懸隔甚しきに基因致候。 後年 曰く 不愉快の二年なり。哀れなる生活を営みたり。 1911年 「現代日本の開化」講演 西洋の開化は内発的であって、日本の現代開化は外発的である。 皮相上滑りの開化である。 戦勝後、上滑りの開花に対する問題意識を見失い、 「虚ろな自己過信」に陥っていく日本への危機感が 表されているそうです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Nov 18, 2014 11:18:42 PM
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