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2015/06/30(火)14:52

技に賭ける

本(173)

日本インターネット書紀 鈴木幸一 2015年  インターネット技術と同志の技術者に賭けて、日本初、インターネットサービスプロバイダーの起業物語で心震えるものでした。安いISPを享受してばかりで、どうせ巨大資本のなせる技かと思い込んでましたが、技術者たちの挑戦と実戦が繰り広げられたおかげであったとは、とても有難く、頭が下がる思いがしました。技術も志も遅れていないベンチャー気質が日本にも立派にあったことを知りました。  信念の下に一か八かの度胸一発、同志による起業。開業までの苦難、国策のOSIとの競合、不合理な事業届出受理遅滞、説明行脚と資金調達、技術優先経営、営業なしの開業、待ち望んでいた先客の万来、技術の公開、競業社の立ち上げ支援、突貫の全国展開、日本をハブにすべくアジア行脚、NYNASDAQ上場、インターネットの町工場流人材育成、「濡れ雑巾」での技術育成、特許をとらぬ公益観などなど、目まぐるしい展開に息をのみました。  数々の挑戦の後に業態転換し、技術力を散逸させない生き残りは、とても高次元の経営であると感心させられます。「NTTに挑み、NTTに助けられた」との述懐に、技術の価値を社会にとっての価値として正しく理解し、実用化に賭ける見識が日本には限られたところにしかないという現実を表しているようです。  巨万を築きえたのに囲い込むこともなく、インターネットの技術基盤とともに事業者の競争環境をも日本に築き上げた志と情熱はとても尊く、清々しい著作でした。  いわば、ピーター・ティールのゼロ・トゥ・ワンを地でいった話で、加えて、技術に賭けたみごとな志士伝と思います。

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