Happy Valley Blog

2015/08/20(木)21:57

夢うつつ

本(173)

ブラック オア ホワイト 浅田次郎 2015年  ピケティーは、21世紀の資本で、20世紀半ばの資本主義社会が、格差の減少、不平等の減少、底辺・中間層の所得の増大、繁栄の共有をしたのは、特異なことであって、資本主義はもともと不平等であると言っているらしい。  経済学者の考える市場では資本の利益率が下がり、賃金が上昇するはずが、現実は、その逆であるらしい。収奪した富は増殖、継承され、富の増加は、生産資本の増加を伴わないのが、資本主義の正体らしい。  スティグリッツは、1980年以降、アメリカは金融セクターの規制を解きつづけ、富裕層向けの減税を進め、不平等は拡大し、教育、医療、セーフティーネット、インフラへは投資は過小で、状況は悪化したと言う。もはや、アメリカは似非資本主義の、機会不均等の国になっていて、これは市場経済がつくりだした問題ではなく、政治が市場を歪めてつくりだした問題であり、税制で手を打たない民主主義の問題であると言う。  終戦後、生まれた日本人は、"特異な"資本主義の成長期に育ち、1980年代には、経済力で世界の頂点を極めたかの思いをした。その後、転げ落ちるように四半世紀近く停滞しつづけ、繁栄の共有は消え去り、景気浮沈のたびに資産格差の巾を拡大し続けている。  こんな冷徹な経済社会の中で、景気の浮沈に応じて富を増殖・継承しつづける者、企業競争の先端を担ってきた者は、いかに夢を見ようが、利己的で功利的な行動をとれる人間であるから勤まったのだ、これが戦後世代の性根だと著者は言っているような気がしてきた。  うつつを生きているのはこういう事と言い当てているようで、なんとも気が滅入る。

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