第4章 X・day <2>&あとがき縦穴を飛び出した輸送ヘリは、上空で編隊を組んでいたヘリ部隊に合流した。「こちらストライクチーム。レジスタンスの救出を完了」 輸送ヘリのパイロットが通信機に言った。 しばらく雑音が響き、応答がきた。 『こちら<ガードランス>。了解した。作戦の第1段階の成功を確認。第2段階、開始!』 「了解。ストライクチーム、帰艦します」 ヘリ部隊は編隊を組み、クリティロ沖へ向かい始めた。 「うわお………」 ドイルが静かに驚いた。 クリティロ沖には数隻の艦船や空母が展開していたのだ。 おびただしい数の小型の上陸船や武装ヘリがクリティロの海岸へ向かっている。 クリティロへ上陸をしかけようとしているのだ。 次々に上陸船が浜辺につき、エイブラムス戦車や兵士達が飛び出してきた。 同時にフィアが海岸の森から迎撃する。 たちまち浜辺は血みどろの戦場と化した。 戦車が主砲から砲弾を放ち、フィアを吹き飛ばす。 ヴェノムが木々を薙ぎ倒しながら現れたが、歩兵のロケット・ランチャーと戦車の主砲を浴び、たちまちの内に爆発、炎上した。 アメリカ軍が体勢を整え、たくさんの戦車や兵士がクリティロに向けて進撃していく。 フィア達が必死に逃げていくのが見えた。 武装ヘリが周囲を警戒するように飛んでいる。 『艦砲射撃!味方を援護しろ!』 通信機から声が轟いた瞬間、戦艦から砲撃が始まった。 砲弾<シェル>がアーチを描き、次々にクリティロに炸裂する。 火の手が上がった。 戦艦からの砲撃が民家を吹き飛ばし、逃げ惑うフィアを一気に焼き尽くす。 だが、クロウは気づいた。 レジスタンスのアジトを襲っていたフィアの大軍がクリティロに転進し、アメリカ軍陸上部隊の脇腹を突く位置に移動している事に。 だが、心配するに到らなかった。 <ガードランス>から素早く指示が飛び、戦艦がそちらに砲撃を開始したのだ。 ヴェノムが強力な砲撃を受け、一瞬の内に大破する。 戦車や兵士が市街に突入するのが見えた。 「よっしゃ!勝てるぞ!」 スコットが叫んだ。 「どうだろ」 リードがつぶやいた。 「なにか嫌な感じがする」 まもなく、クリティロに突入したアメリカ軍から敵殲滅の通信が入った。 <ガードランス>からさらなる指示が入る。 『地上部隊は引き続き警戒態勢を。ストライクチームは空母にて燃料を補給し、アメリカへと帰還せよ』 「こちらストライクチーム。了解しま―――」 パイロットの言葉は突然の悲鳴に遮られた。 『敵航空戦闘機、接近!』 『な、なに!?航空戦闘機だと!?ネザル准将からいただいたデータに無いぞ!?』 『敵機、沖合いからこちらに接近中!数………と、特定できません!』 『ええい!上陸戦配備を撤回!対戦闘機戦闘配置!』 『来ます!』 次の瞬間、沖から猛スピードで接近してきた大量のフィアの戦闘機が戦艦を襲った。 クロウが喘いだ。 「あれはTIEファイターじゃないか!?」 「TIEファイター?」 ローグが首をかしげた。 「なんです?それ」 「STARWARSっていう映画に出てくる戦闘機だ!それにそっくりなんだよ!」 無数のTIEファイターは数隻の戦艦に次々にレーザーを浴びせた。 戦艦の対空砲火が激しく火を噴く。 レーザーに撃たれたセクションから火の手があがっていた。 陸上部隊も激しい攻撃を受けている。 「おい、パイロット!」 クロウは怒鳴った。 「アメリカだ!アメリカ本土へ逃げろ!」 「なんだって!?仲間を見捨てろと………」 「あれに勝てると思ってんのか!?」 クロウは戦艦相手に猛攻をしかけているフィアの戦闘機を指さした。 対空砲が凄まじい抵抗を繰り広げているが、戦艦達は明らかに押されていた。 「…………わかった」 パイロットは苦渋の決断をした。 「よし、アメリカ方面へ逃げるぞ。燃料は………ギリギリってところだな。ストライクチーム、全機続け!」 ヘリ部隊は集合し、アメリカへ向けて逃避行を開始した。 その背後で、戦艦が轟音をあげて爆発し、撃沈した。 「おいおいおい、嘘だろ………?」 ドイルが呆然とつぶやいた。 ストライクチームは長い飛行を続け、パナマ陸峡に到達していた。 そして、彼らは眼下の光景に絶句していた。 地をうめつくすようなグールやフィアが、パナマの国境封鎖線を大挙して攻撃している。 少数のパナマ軍が叩き潰されているのが見えた。 戦車がヴェノムの攻撃を受けて炎上している。 「そんな………」 ローグが喘いだ。 「始まったんだ…………」 クロウは静かにつぶやいた。 「人類とフィアの戦いがな………」 クリティロ――― 空に煙がいく筋もたなびいていた。 アメリカ軍は全滅したのだ。 あるフィアの一匹が、すっかり荒廃したレジスタンスのアジトを歩いていた。 辺りにはグールやフィア、そして人間の死体が大量に転がっている。 フィアはあちこちに目を配っていたが、やがて、破壊されたヴェノムの側に倒れている人間の若者に気がついた。 息がある。 フィアは手にした銃に素早くエネルギーを充填すると、人間の若者に歩み寄った。 ひどく息が弱く、死にかけのようだ。 フィアは銃口を若者に向け、トリガーに手を当てた。 その瞬間、指示が飛んだ。 『やめろ!』 フィアが振り返ると、そこには黒光る立派な装甲服をまとったフィアがいた。 明らかに階級が高い。 若者に銃を向けていたフィアは、サッと下がった。 『その人間はまだ生きているのか?』 階級が高いフィアが歩み寄りながら言った。 『そのようです、サー』 『ふむ………』 階級の高いフィアは若者の髪を掴むと持ち上げ、無理やり顔を覗き込んだ。 『あの実験に使えそうだな』 フィアはそう言うと髪を掴んでいた手を離した。 ゴトッと頭が落ちる。 『連れていけ』 階級の高いフィアはひらひらと手を振った。 フィアが若者の襟首を掴み、引きずっていく。 階級の高いフィアは、最後にもう一度若者を一瞥した。 若者の軍服の肩には名前が書かれていた。 『レイ・ジェーバック……』 階級の高いフィアは、引きずられていく若者を満足げに見送った。 『それが奴の名か』 太陽が地平線に堕ちようとしていた。 あとがき あーーーーーー。 キャラ紹介に書かれていたエピソードをまるで書けなかった。 オレだめじゃん。 マニュフェスト違反じゃん。 謝罪~。 はい。 物語りもどんどん佳境に入ってきました。 次が最後の3部めです。 できれば心待ちにしててくださいな。 ジャンル別一覧
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