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(ああ、もうッ! 泣くことないでしょッ!! まったく、それでも男の子なの?)
克哉が涙を流していることを感じた奈里佳は、それに対して文句をつける。 (奈里佳ちゃん。今の克哉君は『女の子』なんですけど♪) 場を明るくしようという意図なのか、必要以上に弾んだ言い方で奈里佳の言葉を訂正するクルル。 (分かってるわよ。ちょっとしたボケじゃない。ほら、克哉ちゃんも笑って、笑って) 本当はそのツッコミを克哉に言ってほしかった奈里佳だったのだが、克哉本人にその気が無いのではしょうがない。 (結晶化しかけているあの看護婦さんをそのままにしておくのはかわいそうだよ……) やはりこのまま自然に魔力が溜まっていくのを待ってから変身するしかないのかなと、克哉は自分でもそう思いながらも、どこかあきらめきれないでいた。変身するのを嫌がっていたはずなのだが、やはり結晶化による世界崩壊のビジョンを見てしまったことが克哉の心の奥底を大きく動かしていたらしい。 (……本来なら十分な魔力をためる為にはあと数日は必要なんだけど、克哉ちゃんがその気なら、あと1日でなんとかできなくもないわよ) 珍しくまじめな口調の奈里佳。 (えッ!?) 驚く克哉。まじめな口調の奈里佳に驚いているのか、それとも奈里佳の言葉の内容に驚いているのか? まあ、両方かもしれない。 (だから、やり方しだいで、1日もあれば十分な魔力をためることができるって言ったのよ。クルルちゃんなら分かるでしょ? なんてったてここには魔力が残存している人達がいっぱいいるんだもん。これを利用しないって手はないわね) 奈里佳はクルルに話を振った。自分で全部説明するのが面倒になってきたのかもしれない。 (う~ん、まあ、不可能ではないですね。他人が持っている魔力を吸収すれば確かにすばやく魔力を充填することができます。でも、自分自身の波長とは違う波長の魔力を吸収することになるわけですから、変身後に魔力のコントロールが乱れちゃうかもしれませんよ) 奈里佳の言いたいことにすぐに気がついたクルルだったが、同時に問題点も指摘する。 (ねえ、いったいどういうことなのか教えてよ。僕にも分かるように) 奈里佳に変身し、その記憶も共有したことがある克哉だが、変身したその状況で知ったことしか記憶に残らないので、克哉には魔法全般に対する深い知識は無いに等しい。というわけで、克哉には自分の頭の中で展開される奈里佳とクルルの会話にはまったくついていけなかった。 (つまりですね、克哉君。たとえばこの学校の中だけでも、先日のお嫁さんへの変身が完全に解けなくて、まだ部分的に変身したままの生徒がいますよね? そういった生徒達には、部分変身を維持しつづける為に必要な魔力が残存しているわけです。その魔力を克哉君が吸収すれば、自然に魔力がたまるのを待つよりもずっと早くに魔力を満たすことができるというわけです) 説明的なセリフをよどみなく口にするクルル。それを聞いた克哉はしばらくその言葉をゆっくりと噛みしめるのだった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Feb 10, 2005 10:05:54 PM
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