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「まあまあ、私たちだって限度を見ながらやってますから、そんなに心配することはないですよ。それはそうと加賀詩衣那さん、いつもお世話になっています」
さすがに何度か顔を会わせたことがある大島さんである。酔ってはいても私のことを、ちゃんと分かっているらしい。酔ってほがらかになっているのとあいまって、大島さんの営業スマイルも輝いている。私も大島さんに対して軽く頭を下げて挨拶をした。 「こちらこそ。それはそうと、見たところ既にこの娘は限界じゃないですか?」 私は疑問を口にした。だいたい全員が酔っぱらっているんだから、『限度を見ながらやってます』という言葉も、あまりあてにならないし。 「らいりょうぶ、らいりょうぶ♪ みきちゃんげんき~」 にっこりと微笑む美姫さん。うう、可愛い……。抱きしめたいという衝動を抑える私だったが、これはちょっと酔い過ぎです。 「まあ、そういうことにしておきましょうか。でも美姫さんにはもう飲ませないほうが良いと思いますよ。美姫さんに飲ませるくらいなら……」 そして私は、にしたグラスのワインを空けた。うん、なかなか飲みやすくて良いワインだ。 「美姫さんに飲ませるくらいなら、私が飲みますって言うんですか? いやあ、お姉さんもけっこういけますね~。あ、僕の名前は山本夏樹です。以後お見知りおきを」 さっそく、空のグラスに新しいワインを注ぐ夏樹さん。まあ、下手に『美姫さんにもうお酒を飲ますな』と言うよりも、私が飲んで彼らの相手をするほうが早いかもね。 「ま、人並み以上に飲めるほうだと思っているわよ。というか、美姫さんって妖精にしてはお酒が弱すぎるんじゃないかしら。こんなにも酔っぱらっちゃう妖精って初めて見るわ。それともこれだけ酔っちゃうほど大量に飲んじゃったのかしら?」 空のワインボトルを抱えて何やらクスクスと笑っている美姫さんを見ながら私は首をかしげた。 「さあ、そんなことはないと思いますよ。だって最初に一口飲んだ瞬間からこうですから。ほら、このお酒ですけど、普通のカクテルでしょ?」 夏樹君は、美姫さんが最初に飲んだというお酒を持って来てくれた。 「あ、そのお酒、私も好きなんですよね。飲みやすくて」 大島さんもお酒を取りに行く。もちろん自分で飲むためらしい。その途中で固まっていた佐々山さんの肩を叩いて蘇生させると何やら話している。どうやら一緒に飲もうと誘っているらしい。 「ふうむ、普通のお酒ね。……もしかして美姫さんって極端にお酒に酔い易い体質なのかしら?」 夏樹君が運んできてくれたそのカクテルをくいっ空けると、私はとりあえずそう結論することにした。 「あ~、みきちゃんも~」 グラスを欲しがる美姫さんだったが、私はお酒の代わりにオレンジジュースを手に取ると美姫さんに渡した。 「こっちもおいしいわよ」 ニコリと微笑みながらそう言いきる私。酔った美姫さんの頭に暗示効果があれば良いんだけど。 「うん♪」 美姫さんが素直で良かった。美姫さんはオレンジジュースを飲んでいる。これなら安心かな。というか既に何を飲んでもわけが分からない状態? 「……加賀詩衣那って、あの加賀重工の? だったら、あんたに会ったら一度言いたいことが有ったんだ」 一段落ついたと見たのか、コウモリ羽を出したまま黙々とお酒を飲んでいた滝沢海斗が、手にしたグラスを一気に飲み干すと、私の顔をにらみつけてきた。 「聞いたところによると、【妖精狂いの季節】の時に同性同士で【巣籠もり】しようだなんてことを考えて始めたのはあんたらしいな。まったくよけいなことをする……」 何故か低い声で私に因縁を付けるように話す滝沢君。もしかしてこいつもしこたま酔っているっていうの? まったくもうッ! お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Jun 6, 2005 10:13:49 PM
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