ジャージレッドの秘密基地・楽天出張所

2006/12/12(火)22:29

03 魔法少女♪奈里佳・番外編

(他人事だと思ってないで何とかしてよ)  克哉はぷんすかと抗議をする。怒ってほっぺたを膨らませた克哉の顔のイメージが克哉の部屋の中でくつろいでいるクルルの頭の中に伝わっていくが、だからといってどうなるものでもない。 (いや、まあ他人事ですし)  それに対して明るく言い切るクルル。結晶化現象が絡んでいない時のクルルの態度は、おおむねこのようなものだったりする。やはり部屋の中にいることが多いと退屈するのか、こういった克哉の面白い状況はむしろバッチコイなのだろう。 (もう! 役に立たないんだから!!)  変身(心)していなくてもやはり同一人物。克哉はどこか奈里佳な雰囲気を醸し出しながらクルルをなじる。  そうこうしてるうちに電車も動き出したのだが、電車の揺れに合わせて乗客たちも揺すられたせいだろう、先ほどまでぎゅうぎゅう詰めで身動きひとつできない状態だったのが、身体の向きを若干変えられる程度には余裕が出てきた。 (その程度の混み具合ならまだ良いほうですよ。でも良かったじゃないですか。若いお姉さんたちに囲まれて)  どこまで状況を把握しているのか、気軽な調子のクルル。しかし下手に若干とはいえスペースに余裕ができてしまったことにより、今の克哉の状況は更に悪化していたのだった。  身動きができない状況で背中に胸が押し付けられていようが、顔が密着しそうになっていようが、右腕が隣のお姉さんの柔らかな身体に接触していようが、そして自分の股間が目の前のお姉さんのお尻に触れていようが、ぶっちゃけ不可効力だと言い訳できる。……かもしれない。だって他にどうしようもないからだ。  しかしこれが多少は身動きが取れるようになってくるとなると話は違う。 (あうううっ!)  事実、克哉は頭の中で悲鳴を上げていた。とりあえずさすがに股間を前にいるお姉さんのお尻に当て続けておくのはまずいだろうと、ほんの1~2cmだが身体を後方に移動させることにしたのだが、これは後ろにいるお姉さんの胸に背中をより押し付ける結果になったのだ。  背中をお姉さんの胸に押し付けるぐらい何でもないことと言うのはラッシュに慣れた人間の言うことである。克哉にしてみたら背中に伝わる尖っているのに柔らかいその感触は、心拍数を上げて、特に身体の一部分の血流を増大させるには十分だったのだ。純情すぎるのも時として罪である。  ますます前にいるお姉さんのお尻から身を離さなければいけない状況になった克哉は、前には行けず後ろにも行けず、さりとて右側にいるお姉さんたちのほうにすり寄っても状況を更に悪化させるだけとあって、やむにやまれず左側にいるサラリーマンのほうへと身を寄せたのだった。  しかし本人は自覚していないが、最近の克哉は中学2年の男子が持てるだろう限界を超えた萌え色っぽさを身につけつつあった。その手の嗜好の持ち主ならずとも克哉に身体を押し付けられた男性の半数以上は、色々な意味でグラっとくることは間違いない。  しかもご都合主義なことにそのサラリーマンは、その手の嗜好にも多大なる理解を示す人だったのだ。まったく都合の良い偶然というものもたまにはあるものである。  というわけで克哉に身体を押し付けられたそのサラリーマンは押されて退くようなことはしなかった。より克哉に密着したいという想いを実現すべく、逆に身体を押し付けてきたのだった。なにせよほどのことをしない限り男同士では痴漢行為もセクハラも成立しないのだ。  しかしほんのわずかなことでも男女間においてなら痴漢行為は成立する。克哉に股間を当てられている形になっている女性にしてみればまさに今がその状況であった。  後ろに立っているのが黒詰めの学生服を着た男子中学生だということは分かっていた。そしてその中学生の股間が自分のお尻に当たっているのも分かっていたが、その体勢を取るよりほかにどうにも動きようが無い状況でもあったので、まあそれもしょうがないかなと思っていた。  しかし先ほどから後ろの男子中学生の様子が変わってきた。お尻から股間を離して離してくれたかと思えば、またくっつけてくる。それを何回か繰り返したかと思うと、やがてお尻に伝わる感触から判断するに、後ろの男子中学生は股間を密着させつつ腰をくねらせているようなのだ。  これはもしかすると痴漢行為なのかもしれないと、その女性は背筋に寒気を感じ始めていた。  ではこの時の克哉の状況は更にどう悪化していたかというと、一言で説明するなら、感じ始めていたのである。もちろんサラリーマンの身体が克哉に密着してきたからというわけではない。サラリーマンに身体を押し付けられるということは、克哉の身体がさらにその後ろや脇のお姉さんたちの柔らかな身体に押し付けられるということであり、柔らかな胸やお尻やその他の部分に接触し、その感触が伝わってくるということであった。しかも電車が作り出す微妙な揺れは、まるで甘美なマッサージ機のようだったのだ。  これで感じてしまわない男子中学生がいたら、お目にかかりたいものである。なおかつここしばらく奈里佳に変身したり、アソコだけ部分的に女性化したりしていた関係なのか、克哉の皮膚は前よりも敏感になってきていたりする。 (勃っちゃダメ! 勃っちゃダメ!)  克哉は心の中で焦りの声を上げるが、昔から男のアソコは別人格なので克哉の想いを聞き入れてくれることは無かった。既に半勃ちから本勃ち状態へと移行していたアソコは克哉の意思とは無関係に、前にいるお姉さんのお尻をぐいぐいと押していたのだった。 (ピンチですね)  セリフとはまったくマッチしない、のほほんとしたクルルの声が克哉の頭の中に響く。 (分かってるなら何とかしてよ!)  克哉は声に出さずに怒声を上げる。しかし怒りで気が削がされたのか、アソコのパワーがややダウンしたような感じがした。そこでやや喜んだ克哉だったのだが、気の緩みは危機を招く。手にしていた茶封筒が揺られた人の動きに押されて、手から離れそうになった。 (あ、まずい!)  慌てて手から離れかけた茶封筒を引き寄せようとした克哉だったが、その手の動きは、前にいるお姉さんのお尻かをまるで撫で回すかのようなタッチをすることになったのだった。 「もう、止めてください!」  とうとう我慢できなくなったその女性は鋭く声を上げると、茶封筒を持った克哉の手を掴んだ。そして呆然とした克哉は、次の駅で降ろされたのだった。警察に突き出される為に。  克哉、大ピンチ。……かもしれない。

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