110:魔法少女♪奈里佳 第3話
「にゃ、にゃぁーーーッ!」「きゃーーーッ♪」 勢い良く放り投げられて、それぞれ悲鳴を上げる2人だったが、本当に悲鳴を上げているおにゃんこナースに対して、奈里佳の悲鳴はなんだか楽しそうな悲鳴だ。セリフの最後に『♪』がついてるし。 そしてそれぞれ異なる感情から発せられた悲鳴を上げつつ、しっかりとおにゃんこナースを抱き抱えた状態の奈里佳は、不敵な笑みをその顔に浮かべながら、猫耳ナースッ娘軍団が発射した162,720発ものミサイルの群れとぶつかりあったのだった。次々と爆発するミサイル達。連続して発生する爆発音と炎が2人を包み込む。 次々とミサイルは2人に命中したが、本来のターゲットはフューチャー美夏である。奈里佳とおにゃんこナースへの命中を回避出来るだけの機動が出来たミサイルは、爆発と炎の饗宴の場をすり抜けてフューチャー美夏へと突進する。「ふんッ! たわいもない」 しかし迫り来るミサイルを見ても、フューチャー美夏は回避行動をする気配をまったく見せず、微動だにしない。空中に咲いた炎の花から落ちていく奈里佳とおにゃんこナースを見ているだけだ。 そして瞬く間もなく、残されたミサイルの全てがフューチャー美夏を襲ったのだった。本来ならおにゃんこナースによる最終的な制御を受けてミサイルは各個それぞれが芸術的な機動を見せて、逃げ場が無いように前後左右、そして上下からフューチャー美夏を襲うはずだった。しかしミサイルは統制をまったく欠いた状態でフューチャー美夏のナノマシンスーツ表面を被うフィールドバリアに衝突した。「ふ~む。やっぱり、遠距離魔法攻撃はまったく効果無しか。やっかいよね。自意識を持った機械ってのは」 自分達で放ったミサイルの直撃を受けて地面に落下していく奈里佳とおにゃんこナース。どちらかと言えば本気でパニクっているおにゃんこナースに対して、奈里佳はあくまでも冷静だ。残りのミサイルが見事フューチャー美夏に命中するも爆発することなく消滅していくのを見て、感心したようにつぶやいている。(フューチャー美夏が着ているナノマシンスーツは、魔法の力をキャンセルする力があるものね。でもまあこれくらいのほうが面白いってものよ。それよりもそろそろ良いんじゃない?) 奈里佳2号からは不敵な雰囲気が伝わってくる。身体は無くとも血沸き肉踊るのだろう。「そうね。ここまでしてフューチャー美夏を猫耳ナースッ娘軍団の中心点に誘いこんだんだから、攻撃しなきゃバチが当たるわよ。さあ、おにゃんこナースッ! 猫の手の威力を見せてあげなさいッ!!」 奈里佳2号に同意すると、奈里佳はおにゃんこナースのほっぺたをやや強く叩いて正気を取り戻させると、攻撃開始を命令した。「はッ!? そ、そうにゃ。攻撃にゃ。全員、猫の手にゃ~~ッ!!」 地面に激突する寸前のタイミングで、おにゃんこナースは猫耳ナースッ娘達に命令を下す。それを確認した奈里佳は、もう遠慮はいらないとばかりにやられたふりをするのをやめて落下を制御し、ふわりと地面に着地した。するとそこは猫耳ナースッ娘達が、ほぼ真上に位置するフューチャー美夏をじっと見つめながら妙なポーズを取っていた。「はいにゃ~♪」「猫の手にゃ~」「任せて下さいにゃ~ッ!」 おにゃんこナースが発した命令に対してにゃんにゃんと返事を返しながら、猫耳ナースッ娘達はひざをほんのわずか曲げつつ腰をかがめ、ひじを曲げた右手と左手を少々ずらして身体の前で上げている。「みんなッ! 私の動きに合わせるにゃッ!」 まわりの猫耳ナースッ娘達と同じポーズを取ると、おにゃんこナースは真の攻撃を開始した。(空間歪曲ッ! 局所的な重力異常発生ッ! 緊急離脱するッ!!) 珍しく慌てた様子の声で、ユニ君が叫ぶ。しかし既に時は遅かった。