元スッチード現在無職!のお部屋へようこそ

さてさて、眠れないホテルでの一夜を過ごしました。 どうしても、どうしてもこのホテルでは眠る事ができません。 別に部屋に問題があるとかどうとかでは無いのに．．． ベッドの横のテーブルにはCDプレーヤーと、催眠効果のあるCDが置いてあるので試しに聞いてみたのですが、波の音やら自然の音が入っていて、たまに男性の声で『力を全身から抜いてみましょう』等のインストラクションが入ります。 この声が妙に気味悪く、余計眠れなくなりそうだったのでCD自体を止めて寝返りをうちながらうとうとしはじめたところで起床。

集合は午前５時。 ４時半にはロビーに降りて車を待ち、別の街から合流したコックピットの２人と３人で空港へ。 パーサーはＳさん。 ごく普通のパーサー。

フライトは片道４時間程で、この行き先はお金持ちが行く旅行先。 普段相手にしているチープな人達とは全く違う客層です。 （ま、１週間全て込みのパッケージで５万円と比べてこの行き先は同じ１週間でもその４倍するし．．．）

離陸後のサービスも快調にすすむし、お客様もマナーがしっかりしているのでこちらも気を引き締めて丁寧なサービスができます。 何でもしてあげよう、という気持ちにさせてくれるお客様で、食事のサービスでもトレーを返してもらう時にも、トレーを出した状態で返していただけるのにはびっくり。 なんてお行儀が良いのでしょう。 もう私は感動の嵐に浸っていました。

『ねぇねぇＳさん、このフライトっていつもこうなの?』と聞いてみたら、『そうねぇ、この行き先ってお金持ちしか行けないでしょ、物価も高いし、ホテルも高いし。 だからお客様もしっかりした人達ばかりかも。 いつもそうよ。 だから私このフライトしかしてないもの。』だって。 到着して機内を見回しても、ゴミが落ちてない! 新聞もちゃんとたたんで座席の上に置いてあるし、シートベルトもぐちゃぐちゃになってない! 凄い! 毛布もたたんである。 恐れ入りました。

１時間半の休憩の間に私は機体の外で日光浴。 結構日差しが強いかも、と思いつつも降りてくる飛行機を間近で見ながらお食事。 しばし日光の下でウトウトしてしまい、搭乗開始までゆっくりさせてもらいました。 Ｓさんが『搭乗の時にはタラップで搭乗したら太陽に当たることができるよ』とおしえてくれたので私も搭乗をタラップで。 ３０分位かかったけども全員搭乗終了。 で機内で気がついたらちょっと腕がかゆくなっていた．．．日焼け。 時計の跡もしっかりとついてたし。 やっぱり日差しはきつかったかも。

搭乗が終わってから１人の男性客が『仕事があるので降りたい』と言ってきた。 何だか怪しい雰囲気の人。 連れの奥さんは帰る、という。 この場合、男の人の荷物もそうだけど、奥さんがいくら乗っていくといってもその奥さんの荷物も降ろすことになるので時間がかかります。 機長の判断で降ろすことにしたのは良いけれども、それに時間がかかりすぎて結局私達の便の空港・滑走路利用枠を逃してしまったのでディレイ発生。 地上で１時間半も待たせられました。 でそのお客さん、結局降りるのをあきらめて乗っていきました。 でもほんと、怪しい人達だったので近くにバカンスのために乗っていた私のベースの副操縦士さんにこのお客さん達をモニターするようにお願いして出発。

帰りのフライトには大勢のお子様客も乗ってきて、機体前方はまるで幼稚園。 親はかなり豪勢な方達。 で、免税品販売の時間に。 私は子供客を呼び寄せる。
私『ねぇ、この熊のぬいぐるみかわいいでしょう? ここにはチョコレートもあるし、キャンディもあるんだよぉ。 どう? えっ? 欲しいの? これは幾ら、これは幾ら、こっちは幾らだから、ほら、お母さんのところへ行ってお願いしてごらん』。
子供達『ちょっと待っててね。 すぐ戻ってくるから。』

セールトークは私の得意とするところ。 で、お子様達は私の免税カートの前に列をつくり順番待ち。 お買い上げありがとうございましたぁ!

次はお母様方。
私『こちらのネックレス、とても良くお似合いになりますょ。 いかがでしょう?』
母『そうかしらぁ、ねぇ、あなた、どう?』
私『奇麗ですけどねぇ、だんなさま。』
父『あぁ、そうだねぇ。 ま、買ってあげよう。』
私『はい、かしこまりました。 お買い求め頂きまして有り難うございます。』

次はお父様方。
私『こちらのスコッチは大変お買い得なんですよ。 空港の免税店では$○ですが、当便の機内ではなんと$●! いかがでしょうか。』
父『ほぉ、じゃ、買おうかな。』
私『ありがとうございます。 バカンスの後、ご自宅でごゆっくりとおたのしみいただけるかと思います。 有り難うございます。』

私『（お客様が何か購入した後で）あいにく手元にお釣りがありませんので、後程お持ちいたします。』
父『あ、そうかぁ（ちょっと残念そうに）』
私『もしあれでしたら、こちらのウオッカもご一緒に購入されますと丁度の金額になりますが、いかがでしょう?』
父『おぉ、ウオッカがこの値段なのか! じゃ、買おう。 お釣りもないことだし。』
私『有り難うございます。 では丁度、頂戴いたします。 お買い求めいただきましてありがとうございます。 何かお飲み物はいかがですか? あ、はい、ただ今おもちいたします。』

てな感じで免税品売り上げはいつものようにグングンと伸びていきました。 これが大西洋路線ともなるとかなりの売り上げになります。 人気商品は売り切れてしまう事もありますが、この日帰りパターンの場合にはそういったこともなく、良い感じで売れます。 お客様がゴージャスなこのフライトの場合には特に、とＳさんも言っていたとおり、目標金額を大きく越えて達成。

その後のサービスも全て順調にすすみ、無事到着。 ちょっとディレイがあっただけで、問題なく到着。 ただし、搭乗の時に降りる、と言い出したお客さんが怪しげだったので、機長が前もって空港に連絡。 降りた時にも私達が税関の人達に連絡して、その怪しげなカップルは別室に呼ばれていきました。 ここ本社ベースの税関の人達には私の会社の本社ベースの人達の友達も大勢働いているのでそういった連絡は密にとることができるのでちょっと助かります。 ただ、別ベース（私のように）の人が税関を通る時はほとんどの場合チェックされます。 私は過去10回中8回はチェックを受けました。 よって今日もチェックされると思っていたけども何も無く通過。 ってお買い物に行けるわけでもないし、空港についたとしてもターミナルでお買い物したりする時間もないから何もでてきやしないんだけど。 一度、機内で出る乗務員用のカップヌードルでひっかかったことがあるけど（Ｘ線検査機の上に荷物を乗せろと言われて私自身が乗っかってしまった時）、それくらい。

外で待っていたセダンに乗り、機長とともに地元ベースへ2時間。 機長は空港近くのホテルに泊まり、私は自宅へ行くので、運転手さんが機長を送ってから私の自宅まで乗せてくれて帰宅。 予定よりも早く帰宅できたので、さっさとシャワーを浴びて、自宅のよく眠れるベッドの入り即就寝、という一日でした。

来週でこのフライトは終わりなのですが、いつもこんなマナーのある素晴らしいお客様達が搭乗してくることを願っています．．． ふぅ。 【終】