元スッチード現在無職!のお部屋へようこそ

2006/05/13(土)13:37

わがままなお客さん。

空の上の出来事(34)

今日は午後遅く出発して途中の小さな街を経由してお客さんをひろい、そこから大きな滝の近くの巨大都市まで行く、という日程。 そこから私は1人で他社便に乗り地元ベースへ帰るスケジュール。 午後2時出発というのは良いのか悪いのか、なんとなく中途半端な出発時間。 空港で時間をつぶすことにして機体へ。 しばらくして搭乗開始したいなぁと思っていたら機長から電話。 『ちょっとコックピットまで来てちょうだいね。』 あぁー何か嫌な予感... って思っていたら確かに嫌な予感があたり、機体に異常があるからメンテさんが修理するまで飛べない、とのこと。 ま、直してもらわなきゃしょうがないし、私が焦ったところで修理が簡単になるわけでもない。 クルーを全員集めて連絡。 『機体に異常があるので出発が遅れるので、準備が終わったら休憩!』 私もそそくさと書類を書き始めながら休憩。 20分位してからメンテさんが、『多分ここがこうなって、ここもこうなって、この仕組みがその影響でそこのシステムをおかしくしてる』等と説明してくれて搭乗開始。 グランドさんが寄ってきて、『遅れた理由説明するの忘れた...』 えぇーっ、そしたらそのしわ寄せ全部こっちにくるじゃん! とにかくお客さんを乗せて出発。 出発して30分のところにある小さな街までのフライトは雲の中を通っていくのでかなり揺れました... 一応『乗務員の安全の為にサービスを中止して、次のフライトの離陸の後で始めます。』とアナウンス。 後方はかなり揺れてる、って後ろの女の子達が言ってました。 経由地の到着してからはすぐに搭乗開始。 何とお客さんの平均年齢が75歳程。 まぁごゆっくりと搭乗が進み、わずか100名の搭乗に45分もかかりました。 なんとも。 そそくさと離陸し、ヘッドフォンと入国書類を配って飲み物サービスに入るか、という頃に客席からのコールが。 ギャレーを担当してたベテランSちゃんがそのお客さんの所に言ったら、『チーフスチュワーデスを呼べ!』とその女性客が言ったらしい。 しかも英語でそのまま、チーフスチュワーデス、だって! Sちゃんと顔を合わせて笑ってしまった。 で、もし何かあった場合に備えて、中間で働いているFちゃんにシチュエーションを影で見ててもらうことにして、私がそそくさと出て行くと、『あんた、こんなくだらない入国書類やヘッドフォンを配るよりも何で飲み物のサービス位しないの?!』といきなり食い掛かってきた。 しかも嫌ーな口調、つーんとして、いかにも〔私はVIPですのよっ!〕みたいな言い方。 私: 私は会社の決めたサービスの手順に従ってサービスを進めているんです。 客: こんなくだらない入国書類が飲み物よりも大切だって言うのね? 私: 入国書類にくだらない事は全くありません。 政府が客1人1人に対して義務付けているんです。 客: そんなの後からでも良いじゃないの! 飲み物のサービスの方が大切でしょ! さっきのフライトの間も飲み物すらださなかったくせに! 私: 先ほどのフライトは揺れてましたから、安全の為に着席することになってます。 安全を無視してでも飲み物のサービスをしないのが悪いサービスでしょうか? (ちょっと声を大きくして他の人にも聞こえるように) 客: ちょっとくらい揺れてたってサービスできるトレーニング受けてるでしょ! 私: そのような訓練は受けていません。 当社では安全を第一に考慮してます。 もし飲み物のサービスの最中で乱気流に入ってエアポケットに入って機体が数百メートル落下して乗務員が怪我をしてでも飲み物のサービスをしろ、とおっしゃるんですね、えっ?! (もうほとんど喧嘩を売ってる状態の私。周りのお客も沈黙。) 客: だからぁ、こんなくだらない入国書類を配るよりもさっさとファーストクラスのお客にだけでも飲み物のサービスをしてほしいのよっ! 私: 今準備している最中です。 呼び出されたから余計に時間がかかっているんですよ。 ちなみに当社にはファーストクラスはございません。 ここはちょっと上級のエコノミークラスです。 ここをファーストクラスと呼ばないで下さい。 プレミアムエコノミークラスです。 もし文句があるのならカスタマーサービスに連絡してください。 但し私の言い分はレポートに記入しますから。 私がチーフスチュワーデスですから。 と、そこまで言ってから私は立ち去った。 超むかつくー! そういう言い分の客は悪い事が降りかかるに決まってる、とSちゃんは話しながらそそくさと飲み物のサービスを開始。 ここまで腹の立つお客さんって今まで居なかったかも。 幸いにもそいつは私の担当セクションじゃなかったからその後顔を合わせることもなかったけど、フライトの途中から耳が痛いと言い出していたらしく、やっぱりわがままな人、自分勝手な人には不幸が訪れるのよね、とSちゃん。 スッチーの呪い、恐ろしや... 確かに接客業という立場から見れば私の対応は最低かもしれない。 けれども、機体の中、ましてや乱気流に入っている時なんかは安全を第一に考慮しなければならないのはアナウンスでも繰り返している。 私の責任はサービスなんか2の次。 まずは安全。 機内にいる人達全員の安全が守られてこそサービスができる。 ちょっと飲み物がほしければ歩いて5歩のところにあるギャレーまで言いにくればいいし、私達だってそういう人に対して冷たくしたりしない。 エコノミークラスには大勢のしっかりした丁寧なマナーの人が多くいるんだし、この女性客は最低のマナーの単なるスノッブでしかない、と私達は見下した。 ファーストクラスに乗りたければ、女王陛下国の最大手の航空会社も楓航空も、別の会社も色々あるんだし、うちの10倍の料金を払ってファーストクラスに乗ってください、って感じ。 『お客様は神様』の神話は当社にはなし。 この前、会社のオーナーと飲みに行った時にも、『お客は選ぶ権利があるし、別にうちの会社を利用してくれなくても構わない。 大勢の親切で丁寧な常識のあるお客様はたくさん居る。 そういう人達に利用してくれてこそ俺がこの会社を始めた甲斐があるんよ!』と豪語してたっけ。 本当に良識のある人はどんな状況でもこの女性客がとったような行動はとらない、と私は思う。 とりあえず、目撃者になってもらったFちゃんにも一筆書いてもらって、Sちゃんも書き加えて、フライトレポートを書きました。 でもなーんか嫌な気分にさせられたフライトでした。 せっかく素敵なクルーと楽しいフライトを送っていたのに、1人の人間のせいで気分を台無しにさせられたような感じで、ちょっと残念。 そのフライトは通常のマニュアル通りにサービスするように言われていたので、そのように従ったらもの凄いサービスの数。 休憩する時間もほんのわずかで通路に常にいる状態。 7時間半のフライトがあっという間に終わりました。 でも皆協力してくれて、文句も言わず、やっぱりこの仕事にはチームワークが必要不可欠、と実感。 感謝感激でした。 ま、とにかく嫌な出来事はあったけど、無事到着。 遅れたのはわずか10分でした。 でも到着後、私は他社便で自分のベースに帰る予定が、地上の職員さん、そしてメンテさんとお話しをしていてチェックインをしたのは便出発の15分前でした... 申し訳ない... てな感じで帰宅。 しばらくは自宅待機の身です。 【終】

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