1904276 ランダム
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JEWEL

☆1☆

「みんな~、来てくれてありがとう!」
夢の舞台・武道館のライブで、あるアイドル・グループがそう叫ぶと、ファン達は一斉にサイリウムを振った。
「それでは聴いて下さい、“心に誠を!”」
(うぉぉ~、トシさ~ん!)
ステージの最前列、花道の近くに、あの少年は居た。
茶色の髪をポニーテールにし、一心不乱にサイリウムを振りながら彼が翡翠の瞳で見つめているのは、アイドル・グループSSGのセンター・土方歳三だった。
 彼は、とても美しく賢い歌手で、アイドル活動のかたわら、俳優や作家としても活躍している。
土方歳三は、ライブで最後の曲を歌い終わった後、ファン達に向かって深々と頭を下げると、このライブを最後にSSGから“卒業”する事を告げた。
「嫌だぁ~!」
「トシちゃん!」
「皆さんの事も、SSGの事も愛しています。でもわたしは、“普通の人”として生きていたいのです!どうか皆さん、SSGの事を嫌いにならないで下さい!」
「うぉぉ~!」
こうして、SSGの伝説のライブは幕を閉じた。
(なぁにが、“普通の人として生きていきたい”だよ。若気の至りってスゲェな。)
あのライブから15年―かつてトップアイドルとして輝いていた歳三は、今はファミレスでアルバイトをしている。
「あ、土方さん、今日から新人さんの指導、お願いね。」
「は、はい・・」
「初めまして、今日からこちらで働く事になった・・」
(KBTのMUZANが、何でこんな所にぃ!)
「よろしくお願いします。」
「ど、どうも・・」
何故、和製キング・オブ・ポップがファミレスに―歳三がそんな事を思いながら本を読んでいると、いつの間にかKBTこと鬼舞辻無惨が歳三を見つめていた。
「何故、わたしがここに居るのか知りたいようだな?」
「別に・・」
「老後の資金が足りぬのだ。」
「あんた、俺よりも稼いでたんじゃ・・」
「事務所を足抜けした際、金は全て社長から取り上げられた。」
「は、足抜け?」
「詳しいことは後で話そう。」
「え・・」
拍子抜けした歳三を残し、無惨は更衣室から出て行った。
バイトが終わり、無惨は歳三をカラオケボックスの個室へと連れて行った。
「わたしが、半年前に事務所から足抜けしたのは・・」


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