白薔薇の系譜[ハプスブルク帝国皇后・ミズキ編] (8)離婚成立
「別れるって・・一体どういうこと!?」アウロラ皇女は、そう言うとアンジェリカを睨んだが、彼は冷静な口調で話を続けた。「もう君と暮らすのは限界だ。」「何よそれ!まるでわたしがすべて悪いみたいという言い方じゃないの!」「じゃぁ今回母上がストレスで倒れたのは、君がくだらない嘘を吐いた所為だとは思わないのか?」あくまでシラを切りとおそうとしているアウロラ皇女を前にして、アンジェリカは徐々に彼女に対する怒りが湧いてきた。「くだらない嘘って何よ?あなたは自分の妹を庇いたいんでしょうけど、彼女には本当に酷い目に遭わせられたんだから!」「もういい、君は自分の都合の悪いことには蓋をして、自分の都合の良いように嘘ばかり吐くんだな!君とは付き合いきれないよ!」「わかったわよ、あんたとはもう終わりにしたいわ!」アウロラ皇女はそう叫ぶと、部屋から出て行った。「母上、先ほどアウロラが離婚に承諾しました。」「そう。アンジェリカ、余り気を落とさないでね。人生色々とあるものなのだから。」「そうですね。親不孝な息子ですいません。」そっとミズキの手を握りながら、アンジェリカは溜息を吐いた。 皇太子夫妻のスピード離婚は、世界中のマスコミに瞬く間に報じられ、アウロラ皇女はスウェーデンへと帰っていった。数ヵ月後、皇帝一家はマヨルカ島の別荘へと向かった。「お兄様、どうぞ。」「ありがとう。」プールサイドで、一泳ぎして疲れてベンチに横たわっているアンジェリカに、キンバリーがジュースを差し出した。「それにしても、大変だったわね。」「ああ。やっぱり結婚するのはまだ早すぎたみたいだ。もうあの悪夢のような結婚生活の日々がトラウマになって一生独身でいたいって気がしてくるよ。」「いいんじゃない。お兄様が結婚しないのなら、わたしがいい方を見つけないと!」そう言うとキンバリーはおもむろに立ち上がり、プールサイドからビーチへと出て行った。「あの子は相変わらず元気ねぇ。」「そうだな。ミズキ、体調の方はどうだ?」「もう大丈夫よ。それよりもいつまでここに居るつもりなの?来月はローゼンシュルツ皇太子夫妻がいらっしゃるんだから、失礼のないように準備をしておかないと。」「そうだな。まぁ、あと二週間くらいはここに居ようか?」「そうね。」 二週間後、スペインから帰国した皇帝一家は、小麦色に日焼けした肌でローゼンシュルツ王国皇太子夫妻を迎えた。「ようこそいらっしゃいました。この度はご成婚、おめでとうございます。」「ありがとうございます。アンジェリカ、紹介するよ。妻のアイコだ。」「初めまして・・」少し恥ずかしそうに挨拶する親友の妻が、アンジェリカは初々しく見えた。「幸せにしろよ、彼女を。」「ああ、そうするよ。」「さてと、久しぶりに会ったんだから、積もる話は明日にしようか?」「そうだな。」アンジェリカとガブリエルが二人仲良く並びながらホーフブルクへと入っていくのを見たガブリエルの妻・アイコは、不安そうな顔をしながら彼らの後をついていった。(終)にほんブログ村