1965年、ベトナム。
ハノイ近郊の村で、ユリウスとルドルフは迫り来る戦火を感じながらも暮らしていた。
「ルドルフ様、お体のお加減はいかがですか?」
「ああ。それよりもお前は大丈夫か?私が思いっきり血を吸ってしまったから・・」
ルドルフはそう言ってユリウスの首筋に巻かれた包帯を見た。
3日前、ルドルフは目覚め、ユリウスの血を大量に吸った。
ユリウスはさきほど昏睡状態から意識を回復したばかりだった。
始祖魔族の血を授かった人間の従者は、始祖魔族の覚醒期による吸血行為により度々命を落とすことがある、とオイゲンのノートには記されてあった。
(私がいつか、ユリウスを殺してしまうかもしれない・・)
人間と同じような食べ物を食べているが、始祖魔族にとっての最大の食料は人間の血と、従者の血だ。
もし自分のせいでユリウスが死んでしまったら・・ルドルフは最近そんな不安で胸がざわつく日が増えた。
「ルドルフ様、お顔の色が悪いですよ?」
「・・なんでもない。」
その頃、村にある教会では、村人達が静かに祈りを捧げていた。
祭壇の近くにある告解室では、ヴァチカンから派遣された司祭が村人達の祈りを見ていた。
しばらくすると、告解室に1人の青年が入ってきた。
「あなたの罪を告白なさい。」
「私は・・1人の人を好きになってしまいました・・彼のことが頭から離れません。輝くようなブロンドの髪、陶磁器のような白い肌、そして何よりも空のような蒼く澄んだ瞳・・」
「祈りなさい。主はあなたを許してくださいます。」
「はい・・」
青年は司祭の目が格子越しから一瞬光ったことに全く気づかなかった。
「・・厄介なことになりましたね。」
司祭はそう言ってため息をついた。
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Last updated
2008.06.04 11:06:25
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