「ユウリ、しっかりしろー!」
ルシフェルはそう言って床に崩れ落ちて動かない悠里の体を何度も揺さぶった。
「何故だ、何故ユウリを撃った?」
ルシフェルはガブリエルを睨んだ。
「あんたのためだ。俺が撃たなければあんたは死んでいた。」
「だからユウリを撃ってもいいっていうのか!?」
「何をいまさら・・こいつを殺せと命令したのは、あんたじゃないか!」
ガブリエルはそう言って悠里を指した。
「あの事件がおきてから、あんたは俺達にこいつの抹殺命令を下した!忘れたのか!?」
「ああ、確かに命令を下した。だが・・」
「だが、今はこいつがお前の子を産んで、殺したくなくなったから命令を取り消すと!?あんたはなんて身勝手な奴なんだ!」
ガブリエルはそう言ってルシフェルに銃口を向けた。
「俺はまだユウリのことを愛しているんだ・・だから、ユウリを・・」
ルシフェルは悠里を抱きしめた。
悠里が徐々に冷たくなっていくのがわかる。
助からないかもしれない。
悠里のことを愛していた。
だが真実を知り、狂ってしまった悠里を止めるのは、自分だけだと思い、悠里を殺そうと決意した。
悠里が出産し、自分との間にできた愛の結晶を見たとき、ルシフェルはまだ自分が悠里のことを愛していると知った。
だから、悠里を助けたかった。
「・・すまん、ガブリエル。俺はまだユウリを愛している。」
ルシフェルはそう言って悠里を抱えて階段を下りた。
「あんたの身勝手にはうんざりだ!どれだけ俺達を振り回せば気が済むんだ!あんたとの友情はこれまでだ!」
ガブリエルの罵倒を背に浴びながら、ルシフェルは邸を出て病院へと向かった。
悠里のことでいままでガブリエルと言い合いになったことは何度かある。
だがその都度自分がガブリエルをなだめていた。
今夜はそれとは違う。
悠里の命を助けたことで、ガブリエルとの間に深い溝ができる。
そんなことは、悠里と結婚したときからルシフェルにはわかっていた。
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