一方、藤原家では瑠璃が宣孝と対峙していた。
「兄様、あなた歳三さんを追い出そうと、ジャカルタ支店への異動話を持ち出したわね?」
「ああ、そうだ。あの女は藤原家にとって疫病神だ。お前だってそう思っているんだろう?」
「いいえ。もしかして兄様、あなたは歳三さんに嫉妬しているの?」
「嫉妬?馬鹿を言うな。」
宣孝の眦が上がった。
「歳三さんは有能な方よ。彼女の仕事ぶりを調査したけれど、トラブルが起きても咄嗟にそれを解決できる術を持っているし、些細な問題にも真剣に取り組んでるわ。部下からも上司からも人望が厚い彼女を、東京本社から追い出して何を企んでいるの?」
「お前には関係ないだろう、瑠璃。それよりもあいつとの事は決着がついたのか?」
「それはあなたには全く関係がありませんわ。では失礼。」
瑠璃はそう言ってソファから立ち上がると、リビングから出て行った。
(全く、可愛げのない女だ。)
宣孝は舌打ちしながらそう思った時、携帯が鳴った。
「もしもし、樹理か?」
『ごめんなさい、あの女への説得は失敗したわ。』
「そうか。じゃぁ次の手を考えるしかないな。」
『どうするつもりなの?犯罪の片棒を担ぐのは御免だからね。』
「大丈夫だ、お前を面倒な事には巻き込ませないさ。おやすみ。」
『おやすみなさい、あなた。』
樹理の明るい声を聞き、宣孝は彼女の為にも歳三を何としてでも東京本社から追い出してやると、次の手を考えていた。
「昨夜はお世話になりました。また、遊びに行きますね。」
「ええ、楽しみに待っているわ。」
鴾和家で香達に礼を言った歳三と総司は、誠を連れて鴾和邸を後にした。
「総司、行って来る。」
「行ってらっしゃい。土方さん、宣孝さんに負けないでくださいね。」
新しい年が明けて仕事始めの日、歳三は総司に見送られて出勤した。
(あいつには絶対に負けねぇ!藤原だろうが誰だろうが、俺は負けねぇ!)
芹沢にはもう話はしてあったし、後は今日行われる会議で宣孝と対決するだけだった。
「おはようございます、先輩。」
「おはよう。」
ロビーに歳三が入ると、玉置がそう言って声を掛けた。
「大丈夫ですか、先輩?相手は手強いですよ?」
「勝ってやるよ。必ず勝ってみせる。」
そう言った歳三の瞳には、宣孝への闘志がみなぎっていた。
「あなた、これから頑張ってね。」
「ああ、行ってくるよ。」
「純、あなたもお父様に何か一言・・」
清隆家では、純が樹理の傍に居る宣孝をじろりと睨むと、学校へと向かった。
「全く、可愛げのない子ね。あの女にそっくりだわ。」
「そう言うな。じゃぁ、また夜に。」
宣孝は家を出て、リムジンへと乗り込んだ。
(そろそろ会議の時間だなぁ・・)
総司は大学で講義を受けながら、歳三の身を案じていた。
歳三と宣孝、どちらが勝つかは、今日の会議で決まる。
「どうしたの、総司?」
「ううん、何でもない・・」
(ボーっとしてちゃ駄目だ、僕だって頑張らないと!)
歳三が会議室へと入ると、そこには一足先に自分の席に座っている宣孝と目が合った。
「随分と遅めの到着だね。」
「申し訳ありません、少々調べものをしていたものでして。」
歳三はそう言って、会議に出席している役員達に資料を配り始めた。
「今回はお忙しい中ご出席していただき、ありがとうございます。では、会議を始めさせていただきます。先ずはお手元の資料の3ページをご覧ください。」
壇上に上がった歳三は、キッと宣孝を睨み付けてプレゼンテーションを始めた。
「今回、重大な問題が我が社に発生いたしましたことを、この場でお詫び申し上げます。」
彼女の言葉に、役員達が一斉にどよめいた。
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Last updated
2012.04.11 23:02:11
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