JEWEL

2012/03/14(水)15:01

VALENTI 第59話:真夜中の来客

連載小説:VALENTI(151)

「おばあさま? どうしたんですか?」 ステファニーを前にして、ボーッとしているナターシャに、クリストフは声を掛けた。 「あら、ごめんなさい・・あなたと前から会ったような気がして・・」 「そう・・ですか。」 「こんなところではなんだから、場所を変えましょうか。」 ナターシャはそう言ってステファニーの手を取り、書斎を出ていった。 「どうしたんだろう、おばあさま。」 クリストフは首を傾げながら2人の後について書斎を出ていった。 3人は、薔薇が咲き誇るティールームで、冷たいレモンティーとクッキーを味わった。 ステファニーはロンドンでエドガーと出会ったこと、ウィーンでエドガーがさらわれ、ロシアまで来たことなど、これまでの経緯を全てナターシャとクリストフに話した。 「そう、そんなことがあったの。エドガーさんが見つかるまで、ここでゆっくりしていなさいな。ところで、彼のフルネームは、何て言うの?」 「エドガー=フィリップ=ロートリンゲン=フォン=セルフシュタインです。それが何か?」 「セルフシュタイン家といえば名門中の名門ね。あのハプスブルク家から枝分かれしたものだと言われてるほどよ。彼のフルネームが判ったなら、見つけやすいかもね。」 「そうですわね。」 「今日は色々と大変だってでしょうから、部屋でゆっくりと休みなさいな。」 「わかりました。優しいお心遣い、感謝いたします。」 ステファニーはそう言ってナターシャに頭を下げ、ティールームを出ていった。 用意された部屋は、薔薇の壁紙で飾られ、カーテンやベッドの天蓋はレースだった。 ナターシャがティールームに向かう途中、メイドに頼んでステファニーのために急遽部屋を用意させたのだろう、カーテンもベッドの天蓋も新品で、染みひとつなかった。 (最初会ったときは恐いばあさんかと思ったけど、優しいとこあるんだな。ここでしばらくゆっくりしながら、エドガーを探そう。) その夜、ステファニーがベッドでぐっすりと眠っていると、ドアがノックされた。 「なぁに?」 眠い目をこすりながら、ステファニーはベッドから降りて、ドアを開けた。 「申し訳ございません、ステファニー様。ステファニー様にお会いしたいと言って、お客様が・・」 メイドがすまなそうな表情を浮かべながら、ステファニーに言った。 「お引き取りするようにいって。」 「それが、もうお通ししてしまいまして、客間の方でお待ちしております。」 「今から支度するから、少し待っててとお客様に伝えて。」

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