「アシュリーさん、ごめんなさいね。」
「いいえ。」
突然バーンズ夫人を紹介されてアレックスを驚いたものの、タンバレイン夫人には平静な表情を浮かべた。
「ねぇ、この後女性だけの集まりがあるんだけれど、あなたもどう?」
「いいえ、遠慮しておきます。」
「そう・・それは残念ね。」
タンバレイン夫人は、そう言ってさっさと部屋から出て行った。
「ウォルフ、待たせたね。」
「大丈夫だ。」
「なぁ、これからお前はどうしたい?」
「どうって・・」
「あれから爺さんとは連絡を取ったのか?」
ウォルフの言葉を聞いたアレックスは、静かに頷いた。
「さぁ、これからのことは考えてみないとわからないな。」
「そうか。爺さんに連絡をしてみたらどうだ?」
「そうする。」
アレックスはスマートフォンを取り出すと、祖父の携帯に掛けた。
『もしもし、アレックスか?』
「お爺ちゃん、ごめんね。今まで連絡が取れなくて・・」
『いいんだ。事情はラリーから聞いてる。あまり無茶するなよ。』
「うん、わかった。おじいちゃんも、まだ本調子じゃないんだから無理しないでね。」
アレックスは暫くマックスと話すと、スマートフォンの電源を切った。
「じゃぁ戻ろうか?」
「ああ。」
「お前ら二人とも何処に行っているのかと思ったら、こんなところにいやがったのか。」
アレックスとウォルフがプールから立ち去ろうとすると、彼らの前にディーンが現れた。
「何の用だ、ディーン?」
「爺さんに気に入られたからって、調子に乗るんじゃねぇぞ。」
ディーンは一歩ウォルフのほうへと近づくと、彼をにらみつけた。
「お前は所詮、愛人の子だ。俺がタンバレイン家の後継者なんだ。そのことを忘れてもらっちゃこまる。」
「ああ、わかったよ。」
ウォルフがそう生返事をすると、ディーンは不服そうな顔をして彼を突き飛ばし、プールから去っていった。
「気にするな。」
「そうだね。」
あまりディーンに関わるとろくなことが起きないので、アレックスは余り彼に近づかないようにしようと思った。
タンバレイン家での生活にも慣れ始めた頃、アレックスはもうすぐクリスマスが近づいていることに気づいた。
「なぁアレックス、クリスマスに何か欲しいものはあるか?」
「そうだなぁ・・NYに居た頃猫が飼いたいって思ってたんだけど、父親が猫アレルギーだから飼えなかったんだ。」
「なんだ、そんなことだったらお安い御用だ。」
ウォルフはそう言うと笑った。
数日後、タンバレイン家のリビングに大きなクリスマスツリーが飾られ、ツリーの下には色とりどりの包装紙に包まれたプレゼントが置かれていた。
「アシュリーの分がないな、一体どうしたんだ?」
「それはクリスマスになってからのお楽しみさ。」
「ふん、それは楽しみだな。」
ヘンドリックスはそう言って上機嫌な様子で笑った。
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