「ここは・・どこ?」
「横浜だ。そなたはここで、わしと暮らすのだ。」
「何ですって、冗談でしょう!?」
「冗談ではない。」
鬼神はそう言うと美津をベッドの上に押し倒した。
「やめて、何するの!」
「男と女がすることといえば、ひとつだけだ。」
鬼神は美津の身体を覆っていたシーツを乱暴に剥ぎ取ると、彼女の白い肌に舌を這わせた。
生ぬるい感触が気持ち悪くて、美津は吐いてしまいそうだった。
「いやぁ・・」
「いやだと思うのははじめのうちよ。段々慣れてくればよくなる。」
美津の言葉を聞いた鬼神はせせら笑いながら、美津の下半身へと手を伸ばした。
「いやぁ~!」
(四郎、助けて!)
美津は涙を流しながら目を閉じると、何故か四郎の顔ばかりが浮かんできた。
彼とだったら、こんな行為をされることも許せるし、嫌ではなかった。
だが今自分に跨って腰を振っているのは四郎ではない。
この耐え難い責め苦を与えるのは、彼ではない。
「ふふ、良い締りじゃ。」
鬼神はそう言って舌なめずりした。
まるで、美津の苦痛にゆがんだ顔を楽しむかのように。
「あなた・・どうしてわたしに執着するの?父上が、わたしの命を救う代わりに、わたしを嫁に差し出すと約束したから?」
「それもあるが、もっと違う理由でわしはそなたに執着しておるのじゃ。」
「別の・・理由?」
「まぁそれは後で話そう。」
鬼神はそう言うと、美津の髪をそっと優しく梳いた。
「やめて、触らないで!」
邪険に鬼神の手を振り払うと、彼は低い声で笑った。
「相変わらず可愛げのない。まぁ、そういうところがわしをひきつけるのだ。」
「やめて・・」
わたしに触れないで。
そう言った美津の言葉は、闇へと消えていった。
悪夢のような夜はすぐに終わったが、美津は長い時間だと思っていた。
「また来るぞ。」
「二度と来ないで、あなたの顔も見たくない!」
美津はそう言うと、枕で鬼神の顔を叩いた。
彼はそんな美津の態度に笑顔を浮かべると、寝室から出て行った。
「四郎・・」
漸く一人になれた美津は、枕を抱き締めて従者の名を呼んだ。
「四郎、会いたいわ・・」
どうして自分はこんなところに居るのだろう。
早く、四郎のところに戻らなければ―美津は床に散らばった夜着を拾ってそれを羽織り、寝室から出て行こうとした。
だがその時、寝室に一人のメイドが入ってきた。
「美津様、どちらへ?」
「それはあなたには関係のないことでしょう。そこを退いて。」
美津はそう言ってメイドを睨み付けたが、彼女は美津に道を開けなかった。
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Last updated
2012.10.11 13:51:41
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