「彼女に一体何をしたんだい?」
突然鬼神の腕の中で崩れ落ちる美津を見た異人の客がそう言うと、彼は美津の身体を抱き上げた。
「ちょっと鎮静剤を打っただけだ。」
「危険じゃないのか?」
「ああ。」
鬼神はそう言うと、美津を抱き上げたまま庭園から去っていった。
「旦那様・・」
「暫く美津の部屋には誰も入るでないぞ。」
「かしこまりました。」
メイドが慌てて大広間へと戻るのを確認した鬼神は、美津をベッドに寝かせた。
「いつになったら、そなたはわしに心を開いてくれるのであろうな、美津よ?」
鬼神はそう呟くと、美津の頬をキスした。
「ん・・」
美津が目を覚めると、そこはいつもの部屋だった。
「美津様、お目覚めになられましたか?」
「わたしは何時間寝ていたの?」
「そうですね・・かれこれ12時間でしょうか?旦那様が鎮静剤を打たれたので・・」
「あいつを今すぐ呼んで!」
「ですが、旦那様は大広間におりまして・・」
「そう、ならばわたしが行くまでだわ。」
美津はそう言うとベッドから立ち上がり、寝室から出て行った。
一方、大広間で鬼神は客達とともに談笑していた。
「これから日本はどうなりますかな?」
「さぁ、それはわかりかねます。」
「まぁ、我が国の内戦も終わりましたし、その武器が日本国内に流通することは間違いありませんな。」
米国のある大使がそう言って笑うと、彼の傍に立っていた英国大使が相槌を打ちながらこう答えた。
「いやはや、我が国もアロー戦争で上海を占領し、清国の次は日本と考えておりますよ。まぁ、インドや清国と違って複雑な航路があるので貿易をするには多少困難でしょうが。」
「それはそうですな・・」
鬼神が彼らの話に相槌を打ちながらシャンパンを飲んでいると、廊下から騒がしい声が聞こえた。
「いけません、旦那様は今・・」
「うるさいわね、そこを退いて!」
美津の鋭い声が聞こえたかと思うと、彼女が大広間に突如現れた。
「おやおや、眠っていたのでは・・」
「わたしをいつまでここに置いておくつもり!?」
美津はそう叫ぶなり、鬼神の横っ面を張った。
―まぁ、何と野蛮な・・
―あれでもレディなのかしら?
周囲の客が美津の行動に目を丸くしていると、鬼神は打たれた頬をさすりながら美津を見た。
「そなたがわしに心を開いてくれるまでだ。」
「そんな日は来ないわ、永遠に!」
鬼神は美津の言葉を聞くなり、高い声で笑い始めた。
「一体何が可笑しいの?」
「いや・・そなたらしいと思ってな。」
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Last updated
2012.10.11 21:37:26
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