JEWEL

2012/12/25(火)14:38

麗しき狼たちの夜 第216話:思いがけぬ再会

連載小説:麗しき狼たちの夜(221)

週末のスーパーは、特売品目当てで来ている主婦達や家族連れで混んでいた。 (今日は精がつくものを作ろうかなぁ。ステーキとか。) 精肉コーナーの前でステーキ肉を物色しながら悠が良さそうなものを2パックカゴに入れてそこから立ち去ろうとしたとき、彼は誰かにぶつかった。 「あ、ごめんなさい。」 「大丈夫ですか?」 「ええ・・」 そう言って俯いた顔を上げた悠は、そこに陳が立っていることに初めて気づいた。 「奥様、お久しぶりです。ここの近くに住んでいらっしゃるのですか?」 「あなたは?」 「ああ、わたしはこの近くに叔父が住んでいるものですから、仕事のついでに遊びに来ました。」 「そうですか。じゃぁ俺はこれで。」 悠はそそくさと、逃げるようにその場から立ち去った。 スーパーから脇目も振らずに走り続け、肩で息をするほど体力を消耗させながら悠はアパートのエレベーターに乗り込んだ。 7階へと降りると、悠はバッグから鍵を取り出して部屋の中へと入った。 購入したステーキ肉を冷凍室に入れると、悠は野菜室からレタスとトマトを取り出し、サラダを作った。 フライパンの上にオリーヴオイルを掛け、ステーキ肉を焼こうとしたとき、玄関のチャイムが鳴った。 このアパートにはインターフォン画面がないので、悠は調理の手を止めて玄関へと向かった。 「どちら様ですか?」 「すいません、宅配です。」 「宅配?」 「ええ。ジェファー=マクドナス様宛のものですが・・」 「そうですか。」 ドアにチェーンロックを掛けると、悠は宅配業者から荷物を受け取った。 (ジェファー宛に荷物って、何だろう?) 荷物は有名パソコンメーカーのロゴマークが入っており、荷物の送り主の名はマイケル=ファガーソンとなっていた。 「ただいま。」 「お帰り。今日、荷物が届いてたよ。」 「そうか。今日の夕食は?」 「ステーキだよ。あと、サラダも作っておいた。」 「よかった、丁度肉が食いたかったところだ。」 ジェファーはそう言うと笑った。 夕食後、悠がキッチンで食器を洗っていると、ジェファーがノートパソコンで何かをしているところだった。 「何してるの?」 「これ、お前が通っていた学校に置いてきたまんまだったんだ。マイケルが送ってきてくれたんだろうさ。」 「そう。突然荷物が来たって言われてびっくりしちゃった。爆発物でも入っているのかと思ったよ。」 「そんなことはないだろう。まぁ、万が一のことを考えておかないとな。」 ジェファーはノートパソコンの電源を落とすと、それを自分の部屋へと持っていった。 その夜、悠が自分の部屋で寝ていると、突然リビングの方から物音が聞こえた。 「誰?そこに誰が居るの?」 泥棒対策として念の為にスポーツ用具店で購入した金属バッドを構えながら、悠はゆっくりとリビングのドアノブを掴んでそれを回した。 何かが動いた気配がして、悠は金属バッドを大きく振りかざした。

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