JEWEL

2021/10/01(金)09:24

**Scene 3-8**

連載小説:蒼き天使の子守唄(63)

キリシタン達を焼き殺した一件で、歳三達は会津藩本陣が置かれている黒谷金戒光明寺へと呼び出された。 「こたびのこと、どう責を負うつもりか?」 「今回の事、我らといたしましては、芹沢を詮議し・・」 「それでは手ぬるい。聞けばその芹沢とやら、尽忠報国の義士だと名乗っては、軍資金を押し借り紛いに商店から奪っているではないか。その上、今回のようなことがあるとなると、こちらとしては黙ってはいまい。」 「と、致しますと・・」 「芹沢を斬れ。これは殿直々の命である。」 「ははぁっ!」 会津公から芹沢を斬れと命じられた近藤と歳三は、神保修理に対して頭を深く垂れた。 「芹沢を斬れ、か・・どのみちそうなるところだと思っていたが、やっぱりな。」 「なぁ、歳、俺は出来る事なら芹沢さんを斬りたくないんだが・・」 「寝ぼけたこと言ってんじゃねぇよ、勝っちゃん。もう芹沢は手に負えねぇ。俺達の手でやるしかねぇんだよ!」 怒気を孕んだ蒼い瞳で歳三が勇を見ると、彼は無言で副長室から出て行った。 その後、歳三達は綿密な計画を立て、島原で宴を催した。 「珍しいな、近藤殿がこのような席を設けるなど。」 「何をおっしゃいます。壬生浪士組がここまで大きくなったのは芹沢殿のお蔭です。それに会津公から、“新選組”という有り難い名を頂いたのも、芹沢殿のお蔭ではありませんか。」 「ふん、たまにはいい事を言うな。」 芹沢は上機嫌で酒を飲み、千鳥足で八木邸へと帰っていった。 「準備はいいな?」 「ああ。」 雨の中、黒装束に身を包んだ歳三達は、八木邸へと踏み込んだ。 「貴様ら、何奴!」 侵入者に気づいた平間重助が刀に手を伸ばそうとしたが、その前に総司によって袈裟斬りにされ、事切れた。 歳三達は部屋で寝ている平山を斬り、芹沢の部屋へと踏み込んだ。 「おのれ、曲者!」 芹沢は泥酔したとは思えぬほどの素早い動作で刀を手に取り、悲鳴を上げる妾・お梅を押し退け隣の部屋へと逃げ込んだ。 「ひぃぃ!」 「あんた、運が悪かったね。」 総司は恐怖に震えるお梅を冷たく見下ろすと、彼女の頭上に刃を振り翳した。 「土方、貴様・・」 「悪ぃが、あんたには死んで貰うぜ。」 逃げ惑う芹沢を追った歳三は、彼が文机につまづいた隙を突き、彼の背を袈裟斬りにした。 「終わりましたね。」 「ああ・・」 長州藩の仕業だと見せかける為、長州藩の家紋が彫られた笄を投げ捨て、歳三達は八木邸を後にした。 芹沢鴨が“何者かに”暗殺された数日後、近藤達は彼の為に盛大な葬儀を執り行った。 「我らは芹沢殿の遺志を引き継ぎ、この京と上様をお守り致す所存である!」 近藤の演説に、隊士達は歓声を上げた。 芹沢派を一掃したことにより、勇達は徐々に力をつけていった。 「これからだな、勝っちゃん。」 「ああ。」 歳三が勇とともに夜空の月を眺めている頃、鴨川沿いの宿では、密かに維新志士達が集まっていた。 にほんブログ村

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