シンが率いる帝国軍は城壁を破ろうとしたが、エリス達敵軍による攻撃の前に幾度も敗走を重ね、その事でシンの苛立ちが増すばかりだった。
「しぶといね、イシュノーの民は。」
「エリスが住民達を言い包めているに違いない。」
シンは少し苛立った様子でイシュノーの地図を見た。
「一体何を考えているんだい?」
「別に何も。」
「そう・・その様子だと、何かよからぬことを考えてるね。」
「まぁね。まだ教えないけどね。」
「秘密主義もいいところだね。」
「それがいい所だと、この前褒めてたじゃない?」
「ああ言えばこう言う・・まったく、いつになったら君は折れてくれるんだろうね?」
「言っとくけど、俺は頑固な性格だから、相手に対して一度も自分の意見を曲げたことがないんだ。」
「厄介な性格だね。それでよく宮廷で暮らせたもんだ。」
「宮廷では本性を隠していたからね。まぁ、貴族達の殆どが頭の中身がスカスカの馬鹿どもばかりだったから、簡単に騙せたけど。」
“清楚で可憐な貴婦人”のイメージから大きくかけ離れた言葉を放ったシンに対して、ユリシスは苦笑するしかなかった。
「エリス様、敵はしぶといですね。」
「ああ。ユリノ様は一度こうと決めたら、梃子でも動かない方だからね。」
「よくあの方をご存知なのですね?」
「ユリノ様は、ごく親しい方にしか本性を見せないお方だから、周囲はコロッと騙されてしまうのよ。まぁ、わたしも今になって思えば、彼女に騙されたのかな・・」
「エリス様・・」
「暫く一人にしてくれないか?今後の事で色々と考えたいことがある。」
「わかりました・・」
兵士が部屋から出て行くのを確認したエリスは、溜息を吐くと近くの椅子に腰を下ろした。
(これからユリノ様は、どんな手を使ってでもこの町を落とそうとするだろう・・こちらも、色々と対策を練らなくては・・)
「エリス様、おられますか!?」
「どうした、何かあったのか?」
「敵に、北の城壁が破られました!」
「何だと、それはいつのことだ!?」
「ほんの数分前の事です。エリス様、どう致しましょうか?」
「住民達を今すぐここへ集めろ!」
「承知!」
敵は、エリスが居る城のすぐ近くにまで迫って来ていた。
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