「敵を城の中に入れさせるな!」
「撃て、撃て!」
エリス達は敵の奇襲に対して必死に応戦していたが、圧倒的な敵の兵力の前に、味方の兵士達が次々と倒れていった。
「エリス様、ここは一旦退きましょう!」
「そうだな。」
「エリス、ここは俺に任せろ。」
「セシャン・・」
「そんな顔をするな、またすぐ会えるさ。」
「無事に帰ってきてくれよ、わたしの元に。」
「あぁ、わかってるさ。」
セシャンはそう言うと、エリスの唇を塞いだ。
「行ってくる。」
彼の姿が見えなくなるまで、エリスは彼の背中をいつまでも見つめていた。
それが、最愛の夫と交わした最後の会話だった。
「これじゃぁ、城が落ちるのも時間の問題だな。」
「ではセシャン様、どうすれば?」
「正面から攻める。」
「それは・・」
「危険過ぎると言いたいのか?敵の銃は余り当らないから、気にするな。」
「ですが・・」
「逃げたかったら、お前一人で逃げろ。」
セシャンはそう言って、怖気づく兵士を睨みつけた。
「よし今だ、行くぞ!」
セシャンはそう叫ぶと、敵陣の正面へと突っ込んでいった。
たちまちセシャンに向かって敵が放った銃弾が飛んできたが、彼はそれをものともせずに長剣で薙ぎ払った。
「な、なんなんだあいつは!?」
「化け物だ、化け物に違いない!」
まるで鬼神の如く自分達の元へと迫りつつあるセシャンを見て、敵兵達は恐怖で蒼褪めていた。
「何をしているんだい?」
「あの男、まるで化け物です!」
「銃弾を浴びせても平気な顔をしてこちらへと突っ込んで来るのです!」
「そう・・彼はわたしに任せて、君達はここから退却しなさい。」
「わかりました・・」
ユリシスは退却してゆく兵士達を見送ると、セシャンの前に姿を現した。
「お前は・・」
「本当に、君はわたしの邪魔をするのが好きだねぇ。」
ユリシスはそう言ってセシャンに笑うと、彼に銃口を向け、躊躇いなく引き金を引いた。
「どうかなさいましたか、エリス様?」
「いや、何でもない。」
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