ユリシスが放った銃弾を腹に受けたセシャンは、その場で片膝を地面について吐血した。
(くそ、こんなものただのかすり傷だ。)
そう思いながらセシャンが立ち上がろうとした時、頭上からユリシスの冷たい声がした。
「わたしが君に放った銃弾は、呪いがこめられているんだよ。」
「呪いだと・・」
「君が普通の銃弾を受けて死なないことくらい、わかっているからね。」
「貴様、殺してやる!」
セシャンが怒りに震えながら、ユリシスに突進してゆくと、彼は二発目の銃弾を放った。
「無様なものだね。このままわたしに嬲り殺しにされたいのか?」
「ふん、貴様に殺されるよりも、自ら死を選んだほうがマシだ!」
「敵に命乞いするよりも、誇りを持って死ぬ方を選ぶのか・・どこまでも憎らしい男だね、君は。」
ユリシスはそう言うと、セシャンを睨んだ。
「そんなおもちゃなんざ捨てて、かかって来い臆病者!」
セシャンがユリシスを挑発すると、彼は憎しみを込めて刃先に毒を塗った短剣でユリシスの頸動脈を切り裂いた。
大量の出血とともに、セシャンは地面に倒れた。
「これで、もう動けないね。」
そう言ってユリシスが薄ら笑いを浮かべながらセシャンに止めを刺そうとした時、彼が右手の薬指に嵌めていた紅玉の指輪が突然熱を発した。
「くそ!」
ユリシスは悪態をついて指輪を外すと、傷の手当てをする為にその場から立ち去った。
「ありがとう、感謝する。」
朦朧とした意識の中で、セシャンは自分を助けてくれた“誰か”に向かって感謝の言葉を述べると、そっと目を閉じた。
(これで・・終わりか。)
セシャンはうっすらと目を開けると、天に向かって手を伸ばした。
「エリス、俺の分まで生きろ・・」
セシャンはそう呟くと、安らかにその生涯を終えた。
「セシャン様が・・」
「お前は最期まで、自分の華を咲かせたんだな、命の華を・・」
エリスはそう呟くと、静かに涙を流した。
にほんブログ村