JEWEL

2013/09/13(金)07:21

金魚花火 第4章:醜聞(9)

完結済小説:金魚花火(170)

彗の家庭教師・西田聡の連絡先を華凛は彗から聞き、事実を確認する為に彼の自宅に電話を掛けた。 『もしもし、西田でございますが・・』 「夜分遅くに申し訳ございません、ご子息の聡さんは、御在宅でいらっしゃいますか?」 『少々お待ち下さい。』 電話に出た西田の母親と思しき女性は、華凛の言葉を聞いて保留ボタンを押して息子を呼びに行ったのか、数分間「森のクマさん」が受話器から流れていた。 『もしもし、お電話代わりました、聡です。どちら様でしょうか?』 「夜分遅くに申し訳ございません、わたくし正英と申します。そちらにお電話をお掛けしたのは、鈴久彗君の事で、お話がありまして・・」 華凛は聡に、彗から聞いた話をそのまま話した。 すると、彼は彗が嘘を吐いていると言いだした。 『あの子はねぇ、少々ひねくれているところがありましてねぇ。愛情不足の所為か、嘘を吐いては人の気をひこうとしている子なんですよ。』 「じゃぁ、あの子の足にある青痣は、一体どう説明なさるおつもりなんですか?あれは、ただ単にぶつけて出来たというものではありませんが?」 『正英さん、あなたは彗君とどのようなご関係ですか?』 「あの子とわたしの姪は同級生でして・・」 『わたしはちゃんと仕事をしているつもりですよ?部外者の癖に、こちらを一方的に悪者扱いするのは止めていただきたいですね!』 一方的に聡から電話を切られ、華凛は溜息を吐いた。 「どうだった?」 「家庭教師の方は否認しています。彗君は人の気をひこうとして嘘を吐く子なんだって言ってました。」 「どちらが本当のことを言っているのか、わからないね。まぁ、密室で起きた事だし・・」 「監視カメラさえあれば、どちらが本当の事を言っているのかがわかるんですけど・・」 居間で槇と華凛がそう話していると、こたつの上に置いてあった華凛のスマホが鳴った。 「もしもし、正英です。」 『華凛さん、高史です。突然で申し訳ないのですが、明日ホテルグランヴィア京都のカフェで会いませんか?』 「はい、わかりました。何時に伺えば宜しいでしょうか?」 『午前中は予定が詰まっておりますので、13時にどうでしょうか?』 「わかりました、明日13時ですね。」 『では、明日。』 事務的な口調で高史はそう華凛に言うと、通話ボタンを押した。 彼はスマホをテーブルの上に置いた後、まだ濡れている髪を乾かしに浴室へと向かった。 ドライヤーで髪を乾かしながら、高史は数時間前に父と交わした会話の内容を思い出していた。 「暫くあいつに会っていないだろうから、会ってやれ。」 「わかったよ。でも、会議で忙しいから・・」 「仕事を口実にして、またあの子に会わないつもりか?お前には親の情というものがないのか!」 「会うって言っているじゃないか、しつこいな!」 翌日、華凛が高史との待ち合わせ場所へと向かうと、ダークスーツを着た彼は一足先にカフェに来ていて、スマホを弄っていた。 「高史さん、お待たせ致しました。」 「華凛さん、久しぶりだね。最後に会って・・7年くらい経つかな?」 「ええ。あの、お話というのは?」 「彗のことだ。あの子、君に家庭教師から暴力を振るわれていると言ったそうだね?」 「ええ。あの子の足には、誰かに抓(つね)られたかのような青痣が幾つも出来ていました。」 「お願いだから華凛さん、うちの問題に首を突っ込まないでくれないか?」 「どういう意味でしょうか?」 「言葉通りだ。」 華凛が思わず高史の顔を見ると、彼は苦虫を噛み潰したかのような顔をしていた。

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