「セーラ様、どうかお助けを!」
そう言って溪檎の妻・麗華はセーラの姿を見るなり彼女の方へと駆け寄ってきたので、咄嗟に知幸はセーラを守る為に麗華の前にたちはだかった。
「あなた、退きなさい!わたくしはセーラ様に・・」
「申し訳ございませんが、部外者の立ち入りはお断りしておりますので、お引き取り下さい。」
「まぁ、部外者ですって!?わたくしと、わたくしの夫はセーラ様と親しいんですのよ!?」
そう言って知幸を押し退けようとする麗華の腕を、日下部が掴んだ。
「申し訳ありませんが、お引き取り下さい。これ以上手荒な真似はしたくはありません。」
「貴様、わたしを誰だと・・」
「あなたはもう警察の人間ではないのでしょう、鷹城さん?いつまで過去の栄光に縋っているつもりですか?」
「なんだと・・」
怒りを顔を赤く染めた溪檎が日下部を睨みつけた時、騒ぎを聞きつけたセーラが彼らの元へとやって来た。
「一体ここへは何の用ですか、鷹城さん?」
「セーラ様、どうかお金を・・わたくし達にお金を貸してくださいませんか!?今、うちは大変で・・」
「申し訳ありませんが、あなた方のような人間に貸す金はありません。散々人を見下し、蔑み、罵倒してきた癖に、それを忘れて無心に来るなど浅ましいですね。」
リヒャルトはそう言って溪檎達を睨み付けると、彼らは怒りで顔をどす黒く染めながら会場から出て行った。
「全く、嫌な奴らだな。」
「彼らがどうなろうと、こちらの知ったことではありません。さぁ、パーティーの続きをいたしましょうか。」
リヒャルトはセーラと腕を組むと、パーティーへと戻った。
翌日、東京へと戻ったセーラ達は、帰国する為成田空港へと向かった。
「知幸、いつかまた会おうな。」
「ああ。それまでに身体には気をつけろよ?」
「わかってる。もしかしたら、今度は3人で来ることになるかもしれないな。」
「え、それって・・」
知幸がそう言ってセーラを見ると、彼女は悪戯っぽい笑みを浮かべて知幸に手を振りながらタラップを上り、専用機の中へと入っていった。
「トモユキ様を誤解させるような発言はお控えくださいと申し上げた筈でしょう?」
「いいだろう、別に。あいつだって、冗談だと受け取っているだろうさ。」
渋面を浮かべた夫に向かって、セーラは満面の笑みを浮かべた。
やがて二人を乗せた専用機は、成田を離陸し、瞬く間に雲の隙間に隠れて見えなくなった。
「どうした?」
「いえ・・何でもありません。」
「戻るぞ、いつまでもこんな所でのんびりとしていられないからな。」
「わかりました!」
2年後、再び来日したローゼンシュルツ王国皇太子夫妻は専用機の前で取材陣に笑顔を浮かべて彼らに手を振った。
セーラは、生後7ヶ月の息子を抱きながら、幸せに満ち溢れた表情を浮かべて取材陣のカメラの前に立った。
「皆さん、紹介致します。この子はガブリエル、可愛いわたし達の天使です。」
―FIN―
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