「あ、これ安くねぇ?」
「え、どれ?」
大阪市内のインターネットカフェで、数人の少年達がパソコンの画面を食い入るように見ていた。
そこには、彗が作成した通販会社のオンラインショップの画面が映っていた。
“格安サプリメント”、“スーパーマンになれるお薬、あります”という広告が躍っており、少年達はそのサプリメントの正体が何なのか解らずに、「購入」ボタンをクリックした。
「彗、お前が作ったオンラインショップの売り上げ、順調じゃねぇか?」
「ありがとうございます。」
「これからも宜しく頼むよ。」
「はい!」
「さてと、お前への労いとして、今日は俺が飯、奢ってやるよ。何がいい?」
「焼肉がいいっす!」
「そうか、じゃぁ行こうか。」
枡田とともに事務所を出た彗は、彼が行きつけの焼肉店へと向かう途中、お座敷帰りの真那美とすれ違った。
「あいつが、お前が話していた知り合いか?」
「いいえ。」
「そうか。」
真那美を危険に晒したくなくて、彗は咄嗟に嘘を吐いた。
「なぁ彗よ、お前ぇん所の爺さん、まだ現役か?」
「ええ。それがどうかしましたか?」
「俺の所で働いていいのか?」
「別にいいんですよ、祖父ちゃんもあの人達も、何も言わないし。」
彗はそう言うと、目の前にある網に置かれているカルビを一枚自分の皿に取り、それを口に放り込んだ。
「美味いか?」
「美味いっす!」
そう言って屈託のない笑みを浮かべる彗を見ながら、枡田は彼が家族運に恵まれていないということがすぐに解った。
枡田も、悲惨な家庭環境の中で育ったからだ。
彼の父親は枡田組の組長で、母親は父親の星の数ほど居る愛人の一人だった。
幼い頃から“ヤクザの息子”と呼ばれて苛められたことがあったが、いじめっ子に殴られたら殴り返し、罵倒されたらその分罵声を浴びせた。
中学の時には、凶暴な上級生たちをも震え上がらせるワルへと成長し、毎日喧嘩三昧の日々を送っていた。
父親はそんな枡田を見限りはしなかったが、彼との関係は冷めたものだった。
「なぁ彗よ、お前ぇ親父さんとは仲悪いのか?」
「仲が良い、悪いの前に、親父は俺なんかに関心持ってませんから。親父は、俺の事産まれなきゃ良かったと思ってるんですから。」
「俺でよけりゃぁ、話聞くぜ?」
「実はね・・俺、死んだお袋が不倫して出来た子どもなんすよ。父親は何処の誰なのか知りませんし、興味ありませんね。金には不自由しなかったけど、いつも一人だった。寝る時も、飯食う時も。」
「そうか、寂しかったんだな。これからはよ、俺を実の兄貴と思ってくれよ。」
「はい、宜しくお願いします!」
「可愛い奴だなぁ、お前ぇは。」
枡田はそう言って豪快に笑うと、彗の頭をクシャクシャと撫でた。
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Last updated
2013.09.26 20:40:46
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