JEWEL

2013/10/22(火)13:39

VALENTI 第140話:アメリカへ(2)

連載小説:VALENTI(151)

「ここが古代ローマ時代の娯楽場であったコロッセオですよ。ここでは奴隷たちが剣闘士として猛獣と戦っていて、皇帝をはじめとする古代ローマ人達は、彼らが猛獣に生きたまま食われる様子を見て歓声を上げていたそうですよ。」 「まぁ、何て悪趣味な・・」 古代ローマ時代の遺跡のひとつであるコロッセオを見ながら、ステファニーはエドガーの話を聞いて思わず顔を顰めた。 「すいません、あなたを不快にさせてしまいました。」 「いいえ・・それよりもエドガー様、これからどうなさいますか?もうローマの観光名所は殆ど回ってしまったし・・」 「もう一泊してロンドンに戻ることにしましょうか?早くあなたのご家族にお土産を渡したいですし。」 「そうですね・・」 ローマのホテルに二泊した後、エドガーとステファニーは汽車と船を乗り継いで、ロンドンへと戻った。 「何だか、変わったような気がしますね・・」 「数ヶ月振りにロンドンに戻って来たのですから、いつもの街並みが少し違って見えるのでしょうね。」 家族への土産を携えながらステファニーとエドガーが船から降りると、そこへステファニーの兄・スティーブと弟のレオナルドがやって来た。 「ステファニー、お帰り!」 「お姉様、お帰りなさい!」 「ただいまお兄様、ご心配をお掛けして申し訳ありませんでした。」 「いや、いいんだ。それよりも、イタリア土産は買ってきたか?」 「ええ。お父様とお母様にはヴェネツィアングラスを買ってきたわ。勿論、お兄様とレオナルドの分もあるわよ。」 「そうか。」 「お父様とお母様はどちらにいらっしゃるの?」 「二人はニューヨークに旅行に行く友人を見送りに行っているよ。向こうに居ると思う。」 「ありがとう、お兄様。」 ステファニーがエドガーと共に両親の元へと向かうと、彼らはニューヨークへと旅立つ友人夫妻の見送りをしていた。 「気をつけてね。」 「ええ。帰ったら沢山土産話をしてあげるわ。」 「まぁ、それは楽しみね。」 「お父様、お母様、只今帰りました。」 「あらステファニー、お帰りなさい。エドガーさん、娘がご迷惑をお掛けしてすいませんでした。」 「いいえ、楽しい旅でした。ステファニーさんとヨーロッパ各国を巡って、彼女との絆が深まったような気がいたします。」 「そう・・ステファニー、あなたに渡したいものがあるのよ。」 ステファニーの母・マルガリッテはステファニーに笑顔を浮かべてそう言うと、バッグからある物を取り出した。 「お母様、これって・・」 「この船の一等船室の切符ですよ。エドガー様とあなたの結婚は完全に認めた訳ではないけれど、新婚旅行だと思ってニューヨークまでの船旅をエドガー様と楽しんでいらっしゃい。」 「お母様、ありがとう・・」 「無事に帰ってくるのよ、いいわね?」 「はい・・」 両親に見送られながら、ステファニーはエドガーとともに“アトランティス号”に乗り込んだ。 一等船室の天井は、壮麗なフレスコ画でキリストの生涯が描かれていた。 「楽しい船旅になりそうですね。」 「ええ。」 だが二人は、この先自分達を待ちうける苦難の道をまだ知らずにいた。 ―イタリア編・完―

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