JEWEL

2016/09/29(木)15:13

レースに恋して 第26話

完結済小説:紅き月の標(221)

『まぁ、素敵なドレスね!トシ、本当に有難う!』 『少し時間がかかってしまいました。』 『いいのよ、あなたも色々と忙しかったんでしょう?』 『ええ、まぁ・・』 『トシ、あなた何処で洋裁を学んだの?』 『知り合いの方から少し教えて貰いました。後は独学です。』 『あなた、本格的に洋裁を勉強した方がいいんじゃない?あなたの腕なら、きっと一流のデザイナーになれると思うわ!』 『そんな・・』 マクレーン家のリビングで利尋とジェーンがそんな話をしていると、そこへジェーンの娘・ステファニーがやって来た。 『ママ、ドレスは出来たの?』 『ええ、出来たわよ。』 ジェーンがドレスを見せると、ステファニーは嬉しそうに瞳を輝かせた。 『素敵!トシ、有難う!』 『気に入ってくれてよかった。』 『ねぇママ、これ来年のハロウィンに着てもいい?』 『いいわよ。トシ、これはわたしからのお礼として受け取って。』 ジェーンはそう言ってソファから立ち上がると、利尋に封筒を手渡した。 『いえ、そんな・・受け取れません。』 『無理をして作って貰ったのだから、ちゃんとお代は払わなきゃ。お願い、受け取って。』 『ありがとうございます。ではわたしはこれで失礼致します、奥様。』 『また来てね!』 数日後、ステファニーが通う幼稚園で発表会が行われ、彼女が着ている白雪姫のドレスが、保護者達の注目を集めた。 『可愛いドレスだわ、誰が作ったのかしら?』 『ステファニーの可愛さが引き立っているわね。』 発表会の後、ジェーンはジョーンズ家を訪れた。 『トシのドレス、みんなから好評だったわ。あの子、独学で洋裁を学んだんですって。』 『そうなの?てっきり学校に通っているものだと思っていたわ。』 『わたし、あの子に本格的に洋裁を勉強したらどうかって言ったのよ。でもあの子、何かを迷っているみたい。きっと色々と事情があるんでしょうね。』 『そうみたいね・・』 帰宅した利尋は、裁縫室で発表会のドレスのデザイン画を眺めていた。 もっと洋裁を学びたい―そんな事を彼が思っていると、信子が裁縫室に入ってきた。 「トシちゃん、今いいかしら?」 「はい・・」 「ねぇトシちゃん、あなた洋裁学校に行って、本格的に洋裁を勉強したらどうかしら?」 「信子さん・・」 「あなたは、洋裁を本格的に学びたいのでしょう?」 信子はそう言うと、利尋にある物を渡した。 それは、神戸にある洋裁学校の入学案内書だった。 「一度これに目を通してみて。」 「でも、僕・・」 「あなたの才能は、これから伸びるものだとわたしは思っているの。一度興味を持った事を、とことん究めたらどうかしら?」 信子は利尋の肩を叩くと、裁縫室から出て行った。 彼女が出て行った後、利尋は洋裁学校の入学案内書に目を通した。 その学校では、デザイナーとなる為の専門的な知識や技術を教えており、授業内容も充実していた。 「お父様、お母様、お話があります。」 「何だ、そんな真剣な顔をして?」 「僕、神戸の洋裁学校に入学して、本格的に洋裁を勉強したいんです。」 その日の夜、ダイニングで利尋はそう両親に話を切りだすと、彼らに洋裁学校の入学案内書を見せた。 にほんブログ村

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