※画像は
写真素材:足成様からお借りしました。
「それはどういう意味だい、拓人君?」
「言葉通りの意味です。ネット上で噂されているものや、あの週刊誌に書かれていることは全て事実です。」
拓人はそう言うと、リュックの中からUSBメモリを取り出した。
「これは?」
「僕が密かに父と姉の関係を裏付ける証拠として集めたものを、ここに保存しています。」
拓人からUSBメモリを受け取った浅田は自分のノートパソコンにそれを挿し込んで中に入っているデーターを見た。
そこには、吉田が千尋を乱暴している動画や写真のファイルがあった。
「何てことだ・・」
「浅田さん、これを世間に公表してください。お願いします。」
「わかった・・」
数日後、浅田は拓人から預かったUSBメモリを持って吉田が滞在しているホテルへと向かった。
「あの週刊誌を発行している出版社に訴訟を起こす準備は進んでいるかね?」
「いえ・・先生、わたしは今回の依頼を断りに参りました。」
「何だと!?」
吉田はそう言ってソファから立ち上がると、浅田の胸倉を掴んだ。
「浅田君、この前君は確かにわたしの力になってくれると言った筈だろう?なのにその約束を急に反故にするとは、一体どういうつもりだ!?」
「一昨日、あなたのご子息・・拓人さんにお会いしました。」
浅田は鞄の中からUSBメモリを取り出すと、それを吉田に見せた。
「それは?」
「あなたが千尋さんと関係しているという証拠の動画や写真のファイルがここに保存されています。数日前、拓人さんから託されました。」
「馬鹿な事を!」
吉田は怒りで赤く染まった顔で浅田を睨みつけながら、彼からUSBメモリを奪い取ると、それを革靴で踏み潰した。
「これで、証拠はなくなったな。」
「そのUSBメモリはコピーです。原本は既にしかるべき所に送っております。」
「しかるべき所、だと?」
「ええ。先生、あなたはもう終わりです。どうかご自分が犯した罪を生きて償ってください。」
浅田は呆然と絨毯の上に座り込む吉田に向かって一礼すると、部屋から出て行った。
『吉田議員が今朝10時ごろ、殺人教唆と殺人未遂、そして実の娘への性的虐待容疑で逮捕されました!』
近藤と歳三が昼食をいきつけのラーメン店で食べていると、テレビの画面に吉田の顔写真が映った。
「天網恢恢(てんもうかいかい)疎にして漏らさずとは、こういうことを言うんだな。」
「ああ。お天道様は全てお見通しなのさ。」
歳三はそう言うと、どんぶりを両手で持って残りのスープを勢いよく飲み干した。
「拓人君、これで良かったのかい?」
「ええ。もう僕は、苦しみから解放されました。浅田さん、ありがとうございました。」
「これから、どうするつもりだい?」
「僕は、弱者を救う為に弁護士になります。それが中学生の時からの夢でした。22歳で弁護士を目指すのは遅いでしょうか?」
「そんな事はないよ。弁護士を目指すのには年齢なんて関係ない。わたしでよければ、君の力になるよ。」
「ありがとうございます・・」
(姉さん、全て終わったよ。姉さんを脅かす悪魔は、もう居なくなったんだ。だから僕の元に帰って来てよ、姉さん・・)
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