JEWEL

2014/05/30(金)22:16

蒼き炎-9-

連載小説:蒼き炎(ほむら)(60)

「ワルツがお上手ですね。」 「まぁ、ありがとう。」 クリスティーネがそう言ってアレクサンドロに微笑むと、彼はすっと彼女から離れて何処かに行ってしまった。 「不思議な方・・」 クリスティーネはそう呟くと、ドレスの裾を摘んでフィリップの方へと向かった。 「フィリップ様、わたくしはこれで失礼致します。」 「そうですか。お気をつけてお帰り下さい、クリスティーネ様。」 クリスティーネはフィリップに頭を下げると、大広間から出て行った。 「なぁアレクサンドロ、あのお嬢様は落とせそうか?」 「さぁな。」 バルコニーでアレクサンドロが友人達とそんな話をしていると、急に外が騒がしくなった。 「何だ?」 「フィリップが旅芸人でも呼んだのか?」 「まさか・・」 「旦那様、大変です!親衛隊が・・」 「何だと!?」 執事の言葉を聞いたフィリップは彼を突き飛ばし、何やら慌てた様子で大広間から出て行った。 「親衛隊だ、そこを動くな!」 フィリップスが書斎の引き出しを漁っていると、突然親衛隊の制服を着た数人の兵士達が書斎に入ってきた。 「何だ、君達は!?誰の許しを得てここに・・」 「我々は、陛下の命令に従っているだけだ。」 「やめろ、離せ!」 屈強な兵士達に両脇を固められ、フィリップはなすすべもなく彼らに身柄を拘束された。 「これから大変なことになりそうだなぁ。」 翌朝、クリスティーネがコーヒーを飲んでいると、ダイニングにアウグストが入ってきた。 「お嬢様、フィリップ様が親衛隊に逮捕されました。」 「逮捕?それは一体どういうことなの?」 「それは、わたくしにもわかりません。噂によれば、フィリップ様は王家への謀反を企んでいたようだとか・・」 「まぁ・・」 「お嬢様、今日のご予定は?」 「11時に、ウェストン子爵夫人のお茶会に出席して、その後はレミンスター競馬場でレースを観戦する事になっているわ。」 「今日行われるレースには、国王陛下もいらっしゃいますから、失礼のないようにしてくださいね?」 「あなたにそんな事を言われなくてもわかっているわ。アウグスト、後でわたしの部屋に来て頂戴。」 「かしこまりました。」 朝食の後、クリスティーネは寝室にアウグストを呼び、彼とともに今日着るドレスを選んだ。 「このドレスはお嬢様のブロンドに映えると思いますよ?」 「そうね、それにするわ。」 真紅のドレスに着替えたクリスティーネが玄関ホールに降りると、そこには親衛隊の制服を着た一人の兵士が立っていた。 「クリスティーネ=ファウジア様でいらっしゃいますね?」 「ええ。あなたは?」 「わたくしはリカルドと申します。クリスティーネ様、陛下がお呼びです。」 「まぁ、陛下が?」 にほんブログ村

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