「第102期生、全員整列!」
アルティス帝国首都・リティア郊外にある士官学校には、今年も新入生を迎えた。
「貴殿らはやがて、この国の礎となるだろう!その為に、常に鍛錬を怠らぬようにせよ!」
「Yes,sir!」
士官学校には15歳から17歳までの少年達がこれから始まる新生活に不安と期待に胸を膨らませていた。
その中で一際目立つのは、金髪碧眼の華奢な少年だった。
「なぁ、あいつ誰だ?」
「来るところ間違えたんじゃねぇのか?」
「やけに細い身体してるし・・なぁ土方、あいつのことどう思う?」
「別にどうもしねぇよ。」
「またまたぁ、女たらしのお前なら、すぐにあいつが女だってわかる筈だろう?」
「ふん、そんなの聞かれなくたってわからぁ。」
「まぁ、今年の新入生たちは俺達のしごきにいつまで耐えられるかな?」
「知るかよ、そんなこと。」
窓から入学式の様子を見ていた土方歳三は、そう言うと金髪碧眼の少年を見た。
(今日からここで暮らすのか。)
士官学校に隣接している寄宿舎の部屋に入った金髪碧眼の少年―千尋は、空いているベッドの端に腰を下ろした。
千尋がトランクの蓋を開けようとしたとき、部屋に眼鏡を掛けた少年が入って来た。
「やぁ、君も同じ部屋かい?初めまして、僕はエメリー。」
「千尋だ、宜しく。」
「こちらこそ。」
千尋は眼鏡の少年・エメリーと握手を交わした。
「ねぇ、チヒロって言いにくいからセンって呼んでいい?」
「いいよ。」
「センは、どうして軍人になろうと思ったの?」
「強くなりたいから。エメリーは?」
「僕もセンと同じ理由かなぁ。僕、小さい頃から身体が弱くてよく虐められていたんだ。だから、強くなるためにここに入ろうって試験受けたんだ。」
「そうか。」
「これから5年間、宜しくね。」
「ああ。」
入学式から一夜明け、千尋達新入生は訓練と勉学に明け暮れる日々を送っていた。
「今日の授業はここまで!」
「疲れたね。」
「ああ。」
千尋とエメリーが食堂に入ると、奥のテーブルを陣取っていた上級生のグループと千尋は目が合った。
「あいつら、何でも軍のお偉いさんのお坊ちゃんたちだってさ。」
「へぇ、親の七光りで入ったんだ。」
「ちょっと、聞こえちゃうよ?」
エメリーが慌てて千尋を止めようとしたが、時既に遅く、千尋の言葉を聞いたグループの一人が彼らの前に立ちはだかった。
「おいそこの金髪、何か言ったか?」
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