クラウス達は、山荘の裏にある湖で水遊びを楽しんだ。
「それにしても、チヒロちゃんの水着姿は目の保養になるな。」
「先輩、あいつに変な真似をしたら俺が承知しませんよ?」
「トシ、冗談を真に受けないでくれよ。」
クラウスはそう言って笑うと、アイスコーヒーを一口飲んだ。
「君は泳がないのかい?」
「ええ。」
「レイチェルは、どうやら君に気があるようなんだ。だから、あの子のことを少し気にかけてやってくれないかい?」
「俺はあんな子供には興味はありません。」
歳三はそう言うと、椅子から立ち上がって準備体操を始めた。
「泳がないんじゃなかったのかい?」
「気が変わりました。」
湖の方では、レイチェルと千尋が泳いでいた。
「チヒロさん、泳ぎが上手なのですね。」
「まぁ、小さい頃水泳教室に通っていたからね。レイチェルちゃんも、結構泳げるじゃない。」
「チヒロさんと比べたら、まだまだですわ。あそこのブイまで、競争しましょうよ。」
「わかった。」
千尋とレイチェルが湖の中央に浮いているブイに向かって泳いでいると、突然向こうから大型のボートがやって来た。
「二人とも、危ない!」
クラウスがそう叫んだ時、レイチェルと千尋の姿が水中に消えた。
「先輩、二人を助けに行きましょう!」
「ああ!」
歳三とクラウスが事故現場へ向かうと、操縦席には蒼褪めた顔をした少年が座っていた。
「おい、お前ぇの親は何処だ?」
「サム、どうしたんだ?」
歳三が操縦席に座っている少年にそう問いただすと、奥から彼の父親と思しき男がやって来た。
「さっき、あんたの息子が操縦していたボートと、俺の友人二人が衝突した。すぐに無線で救助隊を呼んでくれ。」
「わかった!」
「先輩、ここは宜しく頼みます。俺は二人を探してきます。」
歳三はボートから湖の中へと飛び込み、レイチェルと千尋の姿を探し始めた。
だが、湖の中は視界が悪く、二人が何処に居るのかがわからなかった。
「どうだ、見つかったか?」
「いいえ。もう一度探してみます。」
再度歳三が湖の中に潜ると、底で何かが光ったような気がした。
すると、岩と岩との間に気を失って倒れている千尋とレイチェルの姿があった。
千尋を抱き上げた歳三は、そのまま湖面へと上がった。
「先輩、早く医者を!レイチェルは湖の底に居ます!」
「わかった!」
千尋とレイチェルは近くの病院に搬送され、一命を取り留めた。
「先輩、俺・・」
「大丈夫か?何処か痛いところがあったら言えよ。」
「俺は大丈夫です。レイチェルちゃんは?」
「あの子も大丈夫だ。お前のネックレスのお蔭で、お前達を発見できた。」
歳三はそう言うと、病室のベッドに横たわっている千尋の手を握った。
「先輩、迷惑をかけてごめんなさい・・」
「謝るな。」
歳三は千尋の額にキスをすると、そのまま病室から出て行った。
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