JEWEL

2015/03/13(金)14:43

琥珀の血脈 第105話

完結済小説:琥珀の血脈(137)

「警察の方が、わたしに何のご用ですかな?」 「事前に連絡などせずに突然伺ってしまって申し訳ございません、公爵閣下。」 リチャードはそう言うと、カイゼル公爵に頭を下げた。 「実は、こちらに今は亡きマリア皇女様の孫君様がいらっしゃるとか・・」 「ただのつまらん噂話に踊らされるほど、警察は暇なのかね?」 「いいえ。わたしはただ、閣下が何かご存知なのではないのかと思いまして・・」 「わたしに聞くよりも、直接孫に聞いた方がいいだろう。トーマス、リンの所にこの方を案内しなさい。」 「わかりました。」 トムがカイゼル家の馬場で馬術の稽古を受けていると、トーマスと共にブロンドの青年が馬場にやって来るのが見えた。 「リン坊ちゃま、警察の方が坊ちゃまにお話をお聞きになりたいそうです。」 「そう。初めまして、リンです。」 「わたしはこういう者です。」 リチャードがトムに名刺を渡すと、彼は少し怪訝そうな顔をしてそれをポケットにしまった。 「警察の方が、どうしてうちに?」 「実は、社交界である噂が飛び交っておりましてね。何でも、マリア皇女様の孫君が、あなた様だとか?」 「それは、初耳です。」 トムはそう言うと、リチャードを見た。 「マリア皇女様が生前愛用していたスターサファイアのブローチ、あなたが今身に着けている物と同じ物だそうです。」 「そうですか。このブローチは、長い間行方不明になっていた物なんです。」 「その話、詳しくお聞かせ願いませんか?」 「ええ。」 トムの口元に、怪しげな笑みが閃いた。 「リン、大変だ!」 「どうしたんですかフレッドさん、そんなに慌てて・・」 「警察が、お前の事を探している!」 「警察が、一体どうして僕の事を探しているんですか?」 「お前が持っていたブローチが盗まれた物で、お前がブローチを盗んだ犯人だって話を、誰かが話したって新聞に書いてあるんだ!」 「そんな・・あのブローチはもともと僕の物なのに、一体誰がそんな酷い嘘を・・」 凛の脳裏に、アンジュの誕生日パーティーで自分を睨みつけていたトムの姿が浮かんだ。 「ちょっと出かけて来る。」 「何処へ行くんだ?」 「すぐに戻るから、大丈夫。」 凛はコートを着て、カイゼル公爵家へと向かった。 (トムと会って話さないと!) だが、彼がカイゼル公爵家の前に行くと、門の前には警察官が立っていた。 「すいません、アンジュ様とお話がしたいんです!」 「ここはお前のような者が来るところじゃない、さっさと帰れ!」 「僕はただトムと話がしたいだけなんです、お願いします!」 警察官に邪険に追い払われ、凛は裏口へと向かった。 その時、庭の方から賑やかな笑い声が聞こえてきた。 「お父様、どうぞ。」 凛が柵の向こうから庭を見ると、そこではトムが父と呼んでいる男の頭にシロツメクサの冠を載せているところだった。 素材提供:素材屋 flower&clover様 にほんブログ村

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