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JEWEL

2015.05.06
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昨夜歳三が栗田を連れて屯所に帰宅したことは、瞬く間に隊士達の間で広がった。

「これからどうするのかねぇ、副長は?」
「切腹させるに決まっているだろう。あいつがもし良いところのお坊ちゃんでも、例外はねぇ。」
「気の毒なこった。」
隊士達が朝稽古の後に井戸で身体を洗いながらそんな事を言い合っているのを聞いていた千は、副長室へと向かった。
「副長、お茶が入りました。」
「入れ。」
「失礼いたします。」
千が副長室に入ると、その部屋の主は眉間に皺を寄せながら文机の前に座っていた。
「栗田の事を、聞いているな?」
「はい。彼をどうなさるおつもりなのですか?」
「何故、そのような事を聞く? あいつの命乞いでもするつもりなのか?」
「いいえ。ただ気になっただけです。」
「他人の心配をするよりも、自分の心配をしていろ。お前はあいつよりも賢いが、いつ何時厄介事に巻き込まれるのかわからねぇからな。」
「はい、肝に銘じます。」
千が厨房で朝餉の用意をしていると、そこへ千尋が入って来た。
「どうやらあの者、数日後に切腹させられるそうですよ。」
「そうですか。」
「淡白な反応ですね。彼とは知り合いだったのではないのですか?」
「ええ。彼とは知り合いですが、余り親しくありませんでした。むしろ、彼は僕に対して悪感情を抱いていました。」
「そうですか。」
千尋は自分と同じ顔をした少年を見ると、厨房から出て行った。
「千、栗田の事を聞いたか?」
「はい。さっき荻野さんから、栗田さんが切腹させられるそうだと聞きました。」
「あいつが七日もの間、何処に隠れていたのか誰も知らなかったが、噂によるとどうやら祇園のいちいっていう置屋に匿われていたらしいぜ。」
「その置屋さんは、有名なのですか?」
「千はまだ京に来て日が浅いもんな。」
原田はそう言って白い歯を覗かせて笑うと、千を見た。
「あそこの置屋に居る鈴江って芸妓は、舞妓時代から今や飛ぶ鳥を落とす勢いの売れっ子よ。踊りや鳴り物はもちろんの事、香道や茶道、華道も嗜んでいるって噂だぜ。」
「綺麗な方なのでしょうね、一度お会いしてみたいです。」
「鈴江に会いたきゃぁ、それなりの金子が必要だ。お前ぇみてぇなガキには無理だな。」
原田と藤堂からそうからかわれ、千は少しムッとした。
朝餉を食べた後、千が薙刀の道場へと向かうと、門の前には『暫く休みます』という貼り紙が貼られてあった。

(千代さんに何かあったのかなぁ?)

千がそう思いながら道場から立ち去ろうとしたとき、道場の門が開いて中から一人の女性が出てきた。

「あら、あなたは確か門下生の荻野さんでいらっしゃいましたよね?」
「はい、そうですが・・あなた様は?」
「申し遅れました、わたくし鈴江と申します。以後お見知りおきを。」
「鈴江さんとおっしゃると・・あの鈴江さん?」

千の言葉を聞いた鈴江はにっこりと千に微笑んだ後、彼の手を握った。

「ここでお会いできたのも何かのご縁ですし、一緒にお茶でも如何ですか?」
「はい、喜んで。」


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最終更新日  2015.05.06 08:46:12
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