000000 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

JEWEL

2016.05.24
XML

レナードがガブリエルの部屋からスイス宮へと向かう途中、アレクサンドラの部屋の前に人だかりが出来ている事に気づいた。

「アレクサンドラ様のお部屋の鍵が誰かに壊されていたのですって・・」
「まぁ、物騒ね。犯人は一体誰なのかしら?」
「まさかこの宮殿内に居るのではなくて?」

女官達の噂話を聞きながら、レナードはそのままスイス宮へと向かった。

「ルドルフ様、今宜しいでしょうか?」
「ああ、入れ。」
「失礼いたします。」
レナードがルドルフの執務室に入ると、彼は執務机の前に座って書類の決裁をしていた。
「お話したいこととは、何でしょうか?」
「単刀直入に言う。レナード、お前はガブリエル達の父親が誰なのか、薄々と気づいているんじゃないか?」
「何をおっしゃっているのですか?」
「とぼけても無駄だ、レナード。アレクサンドラの部屋の鍵を壊し、新入しようとしたのはお前だろう?」
そう言って自分を見つめるルドルフの瞳が怒りに滾っている事に、レナードは気づいた。
「いいえ、わたしではありません。アレクサンドラ様の部屋の事は、先程知りました。」
「そうか。」
ルドルフはゆっくりと椅子から立ち上がると、レナードの前に立った。
「お前を疑ってしまって済まなかった。」
「いいえ、わたしは気にしていません。それよりもルドルフ様、用件をお話しし下さい。」
「実は、今朝こんな物がわたし宛に届いた。」
ルドルフは執務机の隅に置いてあった封筒をレナードに手渡した。
封筒には差出人の名前と住所が記されていなかった。
「中身は確認したのですか?」
「ああ。メモリーカードが一枚入っていた。」
ルドルフはメモリーカードを執務机に置かれていたノートパソコンに挿し込むと、画面に複数枚の写真が表示された。
その写真には、ユリウスに授乳しているアレクサンドラの姿や、ルドルフとアレクサンドラが仲良くベッドで寝ている姿などが写っていた。
「一体誰がこのような物をルドルフ様に送りつけたのですか?」
「今は判らないが、郵便局の消印を見ると中央郵便局から送られて来た事が判った。このメモリーカードの件といい、アレクサンドラの部屋の鍵の件といい、薄気味悪い事ばかりが続く。」
「ルドルフ様やアレクサンドラ様の事を憎んでいる相手が、嫌がらせをしたのでしょうか?」
「わたしならともかく、アレクサンドラを憎んでいる相手など見当がつかない。あいつは女官達の人気者で、ちょっとした旅行や外出の際には彼女達に土産物の菓子を自ら配っていたし、女官達もあいつの事を慕っていた。」
「そうですか。わたしはまだこちらに来て日が浅いので、アレクサンドラ様付の女官達がどのような者達なのかは全く解りません。ですが女同士の付き合いというものは、些細な事が原因でトラブルが起こり易いものです。アレクサンドラ様が気づいていなくても、彼女から馬鹿にされたと感じた者が居るのではないでしょうか?」
「お前の言う事も一理あるな。その点も含めて調べてみよう。」
ルドルフはそう言うとノートパソコンからメモリーカードを抜き取り、それを鍵付きの引き出しの中にしまった。
「レナード、お前にこの事を話しておいて良かった。今回の事は、犯人が判るまで誰にも口外しないでくれ。」
「解りました。」
レナードがそう言ってルドルフを見ると、彼は溜息を吐いて椅子に座った。
「最初の話に戻ろう。お前は、ガブリエル達の父親が誰なのかを知っているのだろう?」
「いいえ、誰なのかは全く存じ上げません。」
「そうか。ここだけの話だが、あの子達の父親は、このわたしだ。」
ルドルフから衝撃的な告白をされ、レナードは驚きのあまり絶句した。
「では、ルドルフ様はアレクサンドラ様と男女の関係にあると・・」
「ああ。この事はわたしとアレクサンドラの母親、そして亡くなった母上しか知らない。だから、わたしにあのメモリーカードを送り付けて来た犯人が、何故ガブリエル達の出生の秘密を知ったのかが解らないんだ。」
「誰かが、ルドルフ様を陥れる為に仕組んだ陰謀なのかもしれません。」
「だとすれば、犯人を絞っていけば誰なのかが判るな。レナード、仕事の引き継ぎで忙しい時にわざわざ来てくれて済まなかった。」
「わたしの方こそ、ご多忙なルドルフ様がわたしの為にお時間を取ってくださって感謝しております。早く犯人が判るといいですね。」
「お前とは久しぶりに食事をしながらゆっくりと話をしたいな。今度の水曜日に、家族でティナのフェンシングの試合を観に行くことになっているんだ、お前も一緒に行かないか?」
「喜んでご一緒させて頂きます。」

レナードがルドルフの部屋から出ると、誰かの視線を感じて彼は背後を振り向いたが、そこには誰も居なかった。

(気のせいかな・・)

レナードがそう思いながら廊下を歩いていると、向こうからアレクサンドラの長女であるクリスティーナ皇女が歩いてくるのが見えたので、レナードは廊下の隅に寄って皇女に会釈した。

「クリスティーナ様、こんにちは。」
「レナード、姉がいつも世話になっている。挨拶が遅れて済まない。」
五歳とは思えぬほどに礼儀正しい口調で話す皇女の姿に驚いたレナードは思わず彼女の顔を見つめてしまった。
「どうした、わたしの顔に何かついているのか?」
「いいえ。クリスティーナ様のお姿を拝見していると、昔のルドルフ様のお姿と似ていらっしゃるなと思いまして・・」
「そうか。確かレナードは、皇太子様の幼馴染だったな。その話を今度聞かせて貰えないか?」
「解りました。ではわたしはこれで失礼致します。」

幼いながらも威厳がある皇女の背中が見えなくなるまで、レナードは彼女に向かって頭を下げた。

にほんブログ村 小説ブログ 恋愛小説(純愛)へ
にほんブログ村






Last updated  2016.05.25 12:18:53
コメント(0) | コメントを書く
[連載小説:皇女、その名はアレクサンドラ] カテゴリの最新記事


PR

X

Calendar

Profile


千菊丸2151

Recent Posts

Favorite Blog

チャリ散歩 三鳥のラ… New! アジアの星一番Ver4さん

NHK連続テレビ小説『… New! くう☆☆さん

2021年夏ドラマ New! みつき2733さん

麻薬カルテルの娘を… New! hoshiochiさん

「六つ子物語 (8) 才… New! 神風スズキさん

Keyword Search

▼キーワード検索

Archives

Comments

千菊丸2151@ Re[1]:クルエラ(06/12) クレオパトラ22世さんへ この映画のクル…
クレオパトラ22世@ Re:クルエラ(06/12) 小さいとき「101匹わんちゃん大行進」とい…
千菊丸2151@ Re[1]:竜胆と桜 第8話(06/07) マトリックスAさんへ 大変ご無沙汰してお…
マトリックスA@ Re:竜胆と桜 第8話(06/07) こんばんは。 暑くなってきましたが、淡…

Free Space

ランキングに参加しております、気が向いたらバナーをクリックしてくださいませ。

PVアクセスランキング にほんブログ村

Freepage List

◆LINK◆


◆素材サイト様◆


◆お気に入りのサイト様◆


オリジナル小説


Ti Amo


月光花


VALENTI


白銀之華


金魚花火


蒼き炎(ほむら)


玻璃の中で


紅き月の標


双つの鏡


螺旋の果て


華ハ艶ヤカニ


黒衣の貴婦人


わたしの彼は・・


茨~Rose~姫


孤高の皇子と歌姫


麗しき狼たちの夜


蒼き天使の子守唄


蒼の騎士 紫紺の姫君


宿命の皇子 暁の紋章


紅蓮の涙~鬼姫物語~


炎の月~LOVE STORY~


蒼―lovers―玉(サファイア)


・・・lunatic tears・・・


儚き世界の調べ~妖狐の末裔~


皇女、その名はアレクサンドラ


翠の光~ある新選組隊士の物語~


狼たちの歌 淡き蝶の夢~新選組異譚~


二人の皇太子~アメジストとエメラルド~


二次創作部屋


火宵の月


薄桜鬼 双子パラレル小説「鬼嫁物語」


薄桜鬼 薔薇王パラレル小説「I beg you」


薔薇王転生パラレル小説「巡る星の果て」


薔薇王クロスオーバー中世風パラレル「薔薇と駒鳥」


薔薇王韓流時代劇パラレル「白い華、紅い月」


火宵の月オメガバースパラレル「その花の名は。」


火宵の月幕末パラレル小説「想いを繋ぐ紅玉」


火宵の月 韓流時代劇風パラレル小説「華夜」


PEACEMEKER鐵 平安パラレル「綺羅星の祈り」


進撃の巨人 腐向け幕末パラレル小説「一輪花(いちりんはな)」


薔薇王 花街パラレル小説「美しき華たちへ~花街哀歌~」


薄桜鬼 昼ドラオメガバースパラレル二次小説「羅刹の檻」


薄桜鬼 ハーレクイン風昼ドラパラレル二次小説「紫の瞳の人魚姫」


PEACEMEKER鐵 中世ヨーロッパ風ファンタジーパラレル「勿忘草が咲く丘で」


刀剣乱舞×薄桜鬼 腐向けクロスオーバー二次小説 輪廻の砂時計


PEACEMEKER鐵 二次小説 オメガバースパラレル「愛しい人へ、ありがとう」


Category

ドラマ・映画

(112)

日記

(172)

グルメ

(416)

読書記録

(1940)

大人の発達障害

(11)

薄桜鬼 夢小説:融雪

(1)

連載小説:Ti Amo

(115)

連載小説:VALENTI

(151)

連載BL小説:天の華

(9)

連載小説:茨の家

(43)

連載小説:翠の光

(34)

連載小説:双つの鏡

(219)

完結済小説:桜人

(70)

完結済小説:白昼夢

(57)

完結済小説:炎の月

(160)

完結済小説:月光花

(401)

風光る二次小説:泥中に咲く

(1)

薄桜鬼 夢小説:蒼穹の華(完)

(6)

薄桜鬼 二次創作小説:侍の娘

(2)

小説のこと(短編小説etc)

(203)

完結済小説:鬼と胡蝶

(26)

完結済小説:暁の鳳凰

(84)

完結済小説:金襴の蝶

(68)

完結済小説:金魚花火

(170)

完結済小説:狼と少年

(46)

完結済小説:翡翠の君

(56)

完結済小説:胡蝶の唄

(40)

完結済小説:琥珀の血脈

(137)

完結済小説:螺旋の果て

(246)

完結済小説:紅き月の標

(221)

連載小説:茨~Rose~姫

(85)

完結済小説:黒衣の貴婦人

(103)

完結済小説:lunatic tears

(290)

完結済小説:わたしの彼は・・

(73)

連載小説:蒼き炎(ほむら)

(60)

連載小説:蒼き天使の子守唄

(61)

連載小説:麗しき狼たちの夜

(221)

完結済小説:金の狼 紅の天使

(91)

完結済小説:孤高の皇子と歌姫

(154)

完結済小説:愛の欠片を探して

(140)

完結済小説:最後のひとしずく

(46)

連載小説:蒼の騎士 紫紺の姫君

(54)

完結済小説:金の鐘を鳴らして

(35)

連載小説:紅蓮の涙~鬼姫物語~

(151)

連載小説:狼たちの歌 淡き蝶の夢

(13)

完結済小説:宿命の皇子 暁の紋章

(262)

連載小説「女王達の輪舞曲<ロンド>」

(3)

完結済小説:玻璃(はり)の中で

(95)

完結済小説:美しい二人~修羅の枷~

(64)

完結済小説:碧き炎(ほむら)を抱いて

(125)

連載小説:皇女、その名はアレクサンドラ

(63)

完結済小説:蒼―lovers―玉(サファイア)

(300)

完結済小説:白銀之華(しのがねのはな)

(202)

完結済小説:薔薇と十字架~2人の天使~

(135)

完結済小説:儚き世界の調べ~幼狐の末裔~

(172)

薄桜鬼 腐向け二次創作小説:鬼嫁物語

(8)

薄桜鬼 腐向け二次創作小説:団地妻トシ

(1)

薄桜鬼 刑事パラレル二次創作小説:埋み火

(2)

薄桜鬼 花街パラレル 二次創作小説:竜胆と桜(完)

(10)

薄桜鬼 平安パラレル二次創作小説:鬼の寵妃(完)

(10)

天上の愛 地上の恋 二次創作小説:時の螺旋

(7)

天上の愛 地上の恋  二次創作小説:蒼き翼

(11)

連載小説:二人の皇太子~アメジストとエメラルド~

(6)

進撃の巨人 腐向け二次創作小説:一輪花 (完)

(70)

薄桜鬼 朝ドラ風パラレル二次創作小説:桜流し(完)

(2)

薔薇王韓流時代劇パラレル 二次創作小説:白い華、紅い月

(10)

火宵の月幕末パラレル 二次創作小説:想いを繋ぐ紅玉

(14)

薔薇王転生パラレル小説 巡る星の果て 第一部:太陽と月

(10)

薔薇王転生パラレル小説 巡る星の果て 第二部:黒い華

(8)

薔薇王転生パラレル小説 巡る星の果て 第三部:君の神様になりたい

(0)

進撃の巨人 二次創作小説:腐向け短編(エルヴィン×リヴァイ)

(5)

黒執事×薔薇王中世パラレル 二次創作小説:薔薇と駒鳥(完)

(27)

薄桜鬼×刀剣乱舞 腐向けクロスオーバー二次創作小説:輪廻の砂時計

(9)

薄桜鬼 昼ドラオメガバースパラレル二次創作小説:羅刹の檻

(10)

薄桜鬼 バットエンド二次創作小説:出会わなければよかった

(2)

薄桜鬼 ハーレクイン風昼ドラパラレル 二次小説:紫の瞳の人魚姫

(20)

薄桜鬼 人魚パラレル 二次創作小説:零れ落ちた愛の滴

(2)

薄桜鬼 現代パラレル二次創作小説:戦うメイドと鬼社長

(3)

黒執事 腐向け転生パラレル二次創作小説:あなたに出会わなければ

(1)

薄桜鬼 ヴィクトリア風パラレル 二次創作小説:トシ~倫敦の恋人たち~

(2)

PEACEMAKER鐵 腐向け二次創作小説:愛しい人へ、ありがとう

(3)

火宵の月オメガバースパラレル 二次創作小説:その花の名は

(3)

薄桜鬼 魔法学校パラレル 二次創作小説:その愛は、魔法にも似て

(2)

薄桜鬼 フィギュアスケートパラレル二次創作小説:銀盤で紡ぐ愛(完)

(2)

PEACEMAKER鐵 平安パラレル二次創作小説:綺羅星の祈り

(2)

薄桜鬼ハーレクイン風アラビアンナイトパラレル二次創作小説:炎のように囁いて

(4)

薄桜鬼 ヴィクトリア朝風オメガバースパラレル二次創作小説:闇の柩に眠る白雪姫

(2)

火宵の月 韓流時代劇ファンタジーパラレル 二次創作小説:華夜(完)

(18)

薄桜鬼腐向け西洋風ファンタジーパラレル二次創作小説:瓦礫の聖母

(6)

薄桜鬼腐向け転生刑事パラレル二次創作小説 :警視庁の姫!!~螺旋の輪廻~

(6)

© Rakuten Group, Inc.