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JEWEL

2016.09.24
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「見てみぃ、噂通りの美しさや。」
「そうやな。百年に一度の名妓になりそうな子や。」
千尋が歩いていると、通行人が自分の事を噂していることに気づいた。
「千尋ちゃん、えらい人気やなぁ。」
「おおきに、華千代姐さん。」
「これからが気張り時や。」
「へぇ。」
自分の隣を歩く姉芸妓・華千代の言葉に励まされ、千尋は花街の住人として生きていく覚悟を決めた。
一方、『いちい』の近くにある待合茶屋の一室では、鈴江が気怠そうな様子で煙管を咥えながら窓の外を眺めていた。
「どうした、そんな浮かない顔をして?」
「今日はあいつの店だしの日さ。全く女将は、何だって男のあいつを店だしさせたんだか。」
「お前が言うな。」
信が呆れた顔をして鈴江の方を見てそう言うと、彼は苦笑した。
「でもあいつは長くこの町には居ないよ。狼は懐かないからね。」
鈴江が吐き出した煙は、秋の空の中へと消えた。
「千尋、朝からご苦労やったなぁ。」
「おおきに、おかあさん。」
「秋祭りにはまだ時間があるさかい、昼餉食べてきよし。」
「へぇ。おかあさん、鈴江姐さんは?」
「あの子の事やさかい、いつもの待合茶屋で信としけ込んでいるのやろ。あの子は芸妓の癖に、男衆と懇ろになって・・あんたはあの子みたいにならんときや。」
「へぇ。鈴江姐さんは、加賀の出やそうですけれど、いつから京に?」
「あの子もあんたと同じ武家の出やったけれど、お家騒動に巻き込まれてこっちへ流れてきたて言うてたな。」
「そうどすか。」
鈴江の事を調べるにはまだ時間がある―そう思った千尋は、これ以上菊枝に鈴江の事を聞かないことにした。

(うわ、凄い人!)

巫女装束に着替えた千が、巫女舞が行われている本宮の方を見ると、そこには黒山の人だかりが出来ていた。
「千君、ここに居ましたね。」
「沖田さん。」
背後で優しい声がして千が振り向くと、そこには総司が立っていた。
「なかなか似合っていますね、巫女装束。巫女舞、頑張ってくださいね。」
「あの、副長は?」
「土方さんなら、さっき舞妓達に捕まっていましたよ。昔から何故か女の人にモテるんですよねぇ、あの人。」
総司はそう言って溜息を吐くと、華やかな着物と簪で着飾った舞妓達に囲まれている歳三の方に目をやった。
千はその時の彼の横顔が少し寂しそうに見えた。
「沖田先生、いらしていたのですか。」
二人の背後から凛とした声が聞こえてきたかと思うと、巫女装束を纏った千尋が二人の前に現れた。
「荻野君も似合うね、巫女装束。」
「お褒め頂き、有難うございます。千、行きますよ。」
「は、はい!」

千は総司に向かって頭を下げ、慌てて千尋の後を追った。

本宮に二人が上がると、観客から歓声が上がった。

「稽古通りにおやりなさい。」
「はい・・」

千尋と千が巫女舞を舞い始めると、周囲が水を打ったように静まり返った。

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最終更新日  2016.10.27 16:18:31
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