「忍、どうしてお前はここに来たんだ?」
「それは、先生にお情けを頂く為です。」
そう言うと歳三の前世の恋人・忍こと真珠は、着ていたセーラー服の胸元のリボンを解き始めた。
「おい待て、性急すぎないか?」
「わたしはもう、100年以上も待ちました。お願いです、抱いてください土方さん!」
真珠はそう叫ぶと、歳三の上に馬乗りになった。
「忍、やめろ!」
真珠の手がズボンのベルトに伸びようとした時、チャイムの音が鳴った。
「服を着ろ。」
「わかりました。」
真珠は舌打ちすると、解いていたリボンを結び直した。
歳三がインターフォンの画面を覗き込むと、一人の女性が画面に映っていた。
その女性の顔を見た歳三は、驚愕の表情を浮かべた。
(総司!)
その女性は、かつて歳三が愛した恋人・総司と瓜二つの顔をしていた。
「お姉ちゃん・・」
「忍、知り合いか?」
「知り合いも何も、この女性はわたしの姉の、千華(ちか)です。」
「お前の姉ちゃんが、俺に何か用なのか?」
「さぁ、知りません。」
そう言った真珠は唇を尖らせ、何処か拗ねたような顔をした。
「すいません、こちらに妹が来ていませんか?」
歳三が部屋のドアを開けると、総司と瓜二つの顔をした真珠の姉・千華がそう言って彼を見た。
「お姉ちゃん、土方先生に何か用なの?」
「用って、貴方がいつまで経っても帰って来ないから心配したんじゃないの!そしたらここのマンションの管理人さんから貴方が来ているって聞いたから来たのよ!」
「そんな事を言って、噂の土方先生に会いたかったんじゃないの、お姉ちゃん?今は人妻でも、土方先生とは前世で恋人同士だった仲だものね?」
「黙りなさい!」
顔を怒りで赤く染めた千華は、そう叫ぶと彼女の手を掴んで無理矢理立ち上がらせた。
「ほら、家に帰るわよ!」
「嫌よ、わたしは帰らないわ。わたしは一晩土方先生の部屋に泊めて貰うの。」
真珠は姉の手を振り解くと、そう言って歳三にしなだれかかった。
「駄目よ、家に帰るの!お父さんだって心配しているわよ!」
「あの人が心配しているのは自分の世間体だけでしょう?もうすぐ町長選挙が近いし、嫁入り前の娘が独身の教師の家に押しかけた何て噂が広まればあの人の政治家生命が危ういものね?」
「真珠、いい加減にしなさい!」
千華が妹に手を上げようと左腕を振り上げた時、歳三は反射的にその腕を掴んでいた。
「妹さんには俺がよく言って聞かせますから、今日はお帰りになってください。」
「すいません・・先生、それじゃぁ妹の事を宜しくお願いしますね。」
千華は歳三に頭を下げると、部屋から出て行った。
「これで邪魔者は居なくなりましたね。」
「いいのか、家に帰らなくても?親父さんが心配しているんじゃないのか?」
「言ったでしょう、あの人が心配しているのは世間体だけだって。」
自分の父親の事なのに、真珠は何処か冷めたような口調で言った後歳三の胸に顔を埋めた。
「こんなことをしても、俺はお前ぇを抱かねぇぞ?」
「わかっていますよ、そんな事。暫くこうしておいてくださいよ。」
「ったく、しょうがねぇな・・」
真珠が歳三の胸に再度顔を埋めると、彼の鼓動の音が心地よく耳朶に響いた。
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