※BGMと共にお楽しみください。
オーロラを見た時、千は何故か胸騒ぎがした。
「うわぁ、綺麗ですね土方さん!」
総司は子供のようにはしゃぐと、上空を指した。
「ったく、あんなものどこが綺麗なんだ?薄気味悪くて仕方ねぇ。」
「土方さんは、綺麗な物を薄気味悪いって言うんですね?何だかそんなの、わたしには解らないなぁ。」
「解らなくていいさ、お前はガキなんだから。」
歳三と総司の会話を聞きながら、千はこの機会を逃すまいと、伊東の企みを歳三に伝えようとした。
「あの、土方さん・・」
「副長、少し宜しいでしょうか?」
「斎藤、どうかしたか?」
歳三に伊東の企みを伝えようとした時、斎藤が切迫した表情を浮かべながら広間に入って来た。
「それが・・」
斎藤で何かを耳元で囁かれた歳三は、眉間に皺を寄せると夕餉の最中だというのに立ち上がった。
「土方さん、どうしたんですか?」
「烏丸通(からすまどおり)で斬り合いがあった。何でも、長州の浪士達が不審な動きをしているところを、会津藩士が咎めて斬り合いになったらしい。悪ぃが、今から行ってくる。」
「じゃぁ、わたしも行きます!」
「駄目だ。お前ぇはここに居ろ。屯所を守るのが、お前ぇの役目だ。」
「はい・・」
「じゃぁ、行ってくる。」
歳三はそう言って総司に微笑むと、彼の唇を塞いだ。
歳三が斎藤と共に屯所から出て行った後、千は総司の部屋へと向かった。
「沖田さん、少しよろしいでしょうか?」
「千君、どうしたんですか?」
「あの、オーロラを見に行きませんか?よく見れるところ、僕知っているんです。」
「何処ですか、そこ?一緒に行きたいです。」
「僕が案内します。」
屯所から出た総司と千の姿を、山崎が見ていた。
一方、烏丸通にやって来た歳三と斎藤は、斬り合いが終わっている事に気づいた。
「斎藤、ここで本当に斬り合いがあったのか?」
「はい。確かに斬り合いがあったと・・」
斎藤の言葉を聞きながら、歳三の中で何かがおかしいと感じた。
これは、何者かが自分をここへおびき出す為の罠なのか―そう思いながら歳三が周囲を見渡していると、山崎が彼らの元へとやって来た。
「副長、斎藤さん、こちらに居られましたか!」
「山崎、どうした?」
「千と沖田さんが、屯所から居なくなりました!」
「何だと、それは確かか!?」
「はい。二人は恐らく、八坂神社へ向かっていると思われます。」
「そうか、行くぞ、斎藤!」
(畜生、嵌められた!)
こんな狡猾な罠を仕掛けて自分を騙す人物は、一人しかいない。
にほんブログ村