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JEWEL

2016.11.28
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周囲に居た客達が、歳三に抱きついている総司の姿を指しながらひそひそと噂話を始めている事に気づいた千は、慌てて総司の肩を叩いて彼に注意を促した。

「沖田さん、土方さんは今仕事中ですから・・」
「ああ、ごめんなさい。お仕事の邪魔をしてしまって・・」
「いいえ、お気になさらず。お部屋の方へご案内いたします。」
歳三はそう言って千と総司を部屋まで案内した。
「さっきは取り乱してしまって、ごめんなさい。お仕事中だったのに邪魔をしてしまいました。」
「いや、気にするな。それよりもどうして、俺がここに居る事が解った?」
「ネットの探し人専門サイトで、土方さんの事を書き込んだら、この旅館で仲居として働いている事を、親切な人が教えてくれたんです。」
「そうか・・お前ぇの時代の情報網は、うちの監察方よりも優秀だな。」
歳三は乾いた笑みを浮かべながらそう言うと、溜息を吐いた。
「土方さん、わたしをレイプした男が自殺したと、千君から聞きました。もしかして・・」
「ああ、俺があいつを殺した。お前ぇの復讐をしてやったのさ。あいつの人生の晴れの舞台に、あいつの本性をばらしてやった。あいつの幸せそうな顔がみるみる蒼褪めていく様子を見るのは、嬉しかったぜ。」
歳三はそう言いながら、一本の煙草を咥えるとそれに火をつけた。
「土方さん、わたしの為に罪人になることはなかったのに、どうして・・」
「あいつがお前の心身を壊しておきながら、のうのうと幸せな結婚をするのが許せなかったし、あいつが何喰わぬ顔をして父親になるのも許しておけなかった。俺は密かにあいつが贔屓にしている店を調べ、そこで素性を偽って“ほすてす”として働いた。あいつが尻尾を出すまで時間がかかった。俺は仲間を募り、あいつを廃工場に拉致してお前と同じ目に遭わせた。」
「それで、土方さんは満足なのですか?だったら何故、わたし達の前から姿を消したのです?」
「警察は、いずれ俺があいつを殺した事に気づくだろう。その前に、お前達に迷惑が掛からねえよう、姿を消すつもりだった・・」
歳三の言葉を聞いた総司は突然立ち上がると、彼の頬を平手で打った。
「どうして貴方はいつも一人で問題を背負い込んでしまうんですか!わたしは貴方と生涯を共にすると誓い合ったんです!貴方が地獄に行くのなら、わたしも一緒に貴方と地獄に落ちます!」
「総司、済まなかった。」
自分の胸に顔を埋めて泣く総司の髪を、歳三は優しく撫でた。
「随分短くなっちまったな・・」
「大丈夫です、時間が経てばまた伸びてきますよ。それよりも土方さん、いつ江戸に戻るつもりなのですか?」
「ここで暫く金を稼いでから、お前達の元に帰るさ。それまで離れ離れになるが、辛抱してくれねぇか?」
「解りました。土方さん、女装が板につくようになりましたね?あの時はあんなに嫌がっていたのに・・」
「馬鹿野郎、仕事だから仕方なくやっているんだ、勘違いするんじゃねぇ!」
総司が歳三の仲居姿を褒めると、彼は顔を真っ赤にしながら怒った。
「土方さんが元気そうで良かった。」
歳三が部屋から出て行った後、総司はそう呟いて饅頭(まんじゅう)の袋を一個手に取ると、それを美味しそうに頬張った。
一方、歳三はロビーでの出来事について同僚達から質問責めに遭っていた。
「ねぇ、貴方に抱きついた人とはどういう関係なの?」
「あの人とは、ただの幼馴染でして・・」
「でも貴方が嵌めている指輪、あの人とお揃いのものじゃないの?本当に、あの人とはただの幼馴染の関係なの?」

(女ってのは、つくづく噂が好きな生き物だな・・)

面倒な事になったとそう思いながら、歳三は宴会の配膳を手伝う為支度部屋から出て宴会場へと向かった。
この日は、東京のある会社が社員旅行でこの旅館に宿泊しており、歳三が宴会場に入ると、酒が入った社員達の何人かが大声で騒いでいた。

「お客様、他のお客様のご迷惑になりますので、少しお静かに願えませんでしょうか?」

歳三がカラオケ機の前でがなり立てるかのように演歌を歌う男にやんわりと注意すると、彼は酒で赤らんだ顔を歳三に向け、突然歳三を自分の方へと抱き寄せた。

「梓ちゃん、久しぶりぃ~!どうしてこんな所で働いているの?」

歳三が自分に抱きついて来た社員の顔を見ると、彼は以前働いていた店によく来ていた客だった。
「あれぇ、課長この人とお知り合いなんですか?」
「知り合いも何も、この子は俺が行きつけのクラブで働いていた梓ちゃんだよ!こんな所で梓ちゃんにまた会えるなんて、奇跡だなぁ~!ねぇ、何か一緒に歌おうよ。」
「ええ、喜んで。」
自分を知っている社員を無碍にするわけにもいかず、歳三は仕方なく彼とカラオケでデュエットを歌った。
宴会場の掃除を歳三がしていると、そこへ同僚の仲居がやって来た。
「貴方、歌が上手いのねぇ。」
「ええ、まぁ・・前に働いていたお店で、良くお客様とカラオケをしていましたから・・」
「ふぅ~ん、そうなの。何だかミステリアスな人ねぇ、貴方って。でも、それが魅力的だからお客様からモテるのねぇ。」

(うるせぇババア、俺に構うんじゃねぇ!)

何かと自分に絡んでくる同僚に対してそう心の中で毒づきながら、歳三は彼女に愛想笑いを浮かべた。

「あ~、疲れた。」

誰も居ない男性用の露天風呂に浸かりながら歳三がそう呟くと、誰かが大浴場に入ってくる気配がした。

(誰だ、こんな夜遅くに・・)

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最終更新日  2016.11.30 15:58:47
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